デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第84話:変態仮面の暗躍
大輔達が外国に現れたデジモン達をデジタルワールドに帰すために奮闘している時、日本では伊織くらいの1人の少女が佇んでいた。
その少女の隣に…デジモンカイザーとしての姿ではなく、一乗寺治としての姿で並び立つ。
「やあ、浮かない顔してるけど、どうしたんだい?」
優しい声色と表情で語りかける治。
しかし内側ではどす黒いことを考えながら、しかし少女は治の内側のことに気付かず、ただ愚痴るように言う。
「帰りたくないの。家に帰ればお父さんもお母さんも勉強しろってうるさいし。」
「そうか、それは大変だね。」
「少しでも成績が下がったら怒るし…もう帰りたくないんだ……」
「なら、帰らなければいいよ」
「え?」
少女が振り返ると、治は冷酷な笑みを浮かべて言葉を紡いでいく。
「僕が君を助けてあげよう。君も馬鹿な親、馬鹿な教師、馬鹿な社会…うんざりしてるだろう?」
「……うん…」
治の言葉に少女の目はどんどん虚ろになっていく。
まるで催眠をかけられたように。
「だから君にこれをあげよう」
「……?」
「暗黒の種と言ってね。これを使えば頭が良くなり、運動神経も良くなる。つまり天才になれるんだ。そこらの凡人では手が届かない程の存在に」
少女は黒い暗黒球に引き寄せられるかのように見つめ、ゆっくりとそれに手を伸ばした。
まるで神の恵かのように。
しかし実際それは、神の恵ではなく悪魔の災いなのだが、それに気付かない少女はそれに触れてしまい、それが体内に吸収され、倒れてしまった。
「ふふふ……良い子だ。僕の慈悲を素直に受け入れるなんてね…あははは…っ」
治は邪悪な笑みを浮かべながらその場を去っていく。
倒れた少女が発見され、通報された救急車で病院に搬送された。大輔達の知らぬ所で着々と治は準備をしていた。
本人も気付かぬ邪悪な存在の意志も。
「ふう……ようやく帰って来れたか」
「ゲートを探すのは大変だったぞ」
大輔やヤマトがボヤく。
パソコンかゲートポイントを発見するのに苦労した面子もいたらしく下手すれば戦闘よりそちらの方が苦労したと言う者もいたと言う。
「空さん、ボルシチとピロシキ美味しかったですね」
「ええ、やっぱり本場は違ったわ」
【おい】
京と空の会話に全員がツッコミを入れた。
自分達だけ美味しい思いをしてきたのか。
「いいじゃない別に!!私達滅茶苦茶寒い思いしたんだから!!」
「そうよ!!私達は下手したらあまりの寒さに凍え死ぬ所だったのよ!!」
京と空の言い分に全員が深い溜め息を吐いた。
「まあいいや、ヒカリちゃん。ケーキ食おう。太一さんと芽心さんも」
「お!?何だご馳走してくれんのか!?」
「新作のケーキだそうですよ」
「新作?食べる食べる!!」
「と言うか気合い入れて作りすぎて俺とブイモンだけじゃ食べきれないんです」
「いいぜ別に。タダより安い物は無いしな!!」
「苦労したからどんなクリスマスケーキより美味しいに決まってる…!!」
ヒカリの目付きが鋭いものになった。
それはまるで…。
「あれは捕食者の目だがん」
「おう、ヒカリが獲物を狙う獣の目つきになってる」
「ヒカリは食いしん坊になったねー」
「否定出来ないのが辛いわ…」
メイクーモン、ブイモン、アグモン、テイルモンが生暖かい目でヒカリを見つめる。
「ヒカリちゃん、そこまで気合い入れなくても…」
「タケル君には分からないわ。油断していたらブイモンの胃袋に取り込まれてしまうんだから」
タケルには分からない。
気を抜いた途端ブイモンの胃袋に全てが収まっていたと言う絶望など。
「ヒカリ、お前に俺の光速さについて来れるか?」
「負けないよブイモン」
「ヒカリちゃん、ブイモン。喧嘩すんなよ…それじゃあ行くか。」
ケーキを求めていざ前進。
残された面子も何かの癒しを求めてこの場を後にした。
おまけ
太一と芽心は早速ケーキを頂いていた訳だが、ヒカリとブイモンの戦いに生暖かい目で見つめていた。
「音速(おそ)い、音速いぞヒカリ!!その程度の速度では俺の光速さにはついて来れまい!!」
「くっ、ケーキは光速さだけじゃないわ!!如何に効率良く美味しい部分を食べるかが重要なのよ!!」
「抜かすか…ヒカリめ…!!」
「普通に食えよお前ら」
「仲良いですね本当に」
大輔が淹れてくれた珈琲を啜りながらブイモンとヒカリの激闘を見守るのであった。
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