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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第61話:完熟野菜

 
前書き
安定のブイテイルの喧嘩。

しかし今回は被害が凄い。

ガブモンが漢。

私はブイモンとガブモンが好きなのです。 

 
青い空。

白い雲。

温かく素晴らしい天気に恵まれ全員がのほほんとしていた時であった。

「あああああ!!?」

お台場小学校のパソコン室でテイルモンの叫び声が上がる。

「んあ?」

全員が振り返るのと同時にテイルモンの叫び声の理由に納得した。

ブイモンが食べているのはテイルモンの大好物のチーズ入り蒲鉾だったのだから。

「何であんたが私のチーカマ食べてんのよ!?」

「はあ?お前馬鹿か?京は好きな物を食えって言っただけでチーカマがお前のだなんて一言も言ってないぜ?やれやれ、もうボケが始まったか?」

「うぐぐぐ…だったら私はあ!!」

テイルモンはブイモンが楽しみに取って置いた駄菓子屋のジャンボチョコどら焼きを頬張った。

「んああああ!?お前俺が楽しみにしといたジャンボチョコどら焼きをおおおお!?」

好物のチョコ菓子を食われては流石のブイモンもブチギレしたが、テイルモンも負けていない。

「先に食べたのあんたでしょうがあ!!」

「ああ!?だからって人が楽しみに取って置いた奴食うか普通!?」

「食べ物の恨みは…特に好物を食べられた恨みは恐ろしいのよ馬鹿!!」

「この野郎!!頭来たぞ!今日こそお前との決着をつけてやるぞ!!」

「上等よ!私が勝ったら今年1年あんたをパシリにしてやるんだから!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて下さ…」

「「邪魔だああああ!!」」

「げぶう!?」

止めようとしたポロモンだが逆にぶちのめされてボールのように吹き飛んだ。

「ポロモン!!大丈夫!?生きてる!?」

「み、京さん…私は京さんに会え…て…幸せでし…た…ガク…」

「ポロモーン!!」

「いえ京さん。ポロモンは気絶してるだけですから。それにしても今日は凄いですね」

「今までも食べ物のことで喧嘩があったけど流石に好物を食われたのは我慢出来なかったか」

気絶したポロモンを抱き締めながら叫ぶ京に少し呆れながらブイモンとテイルモンの今までにない規模の喧嘩に少し伊織は引いていた。

大輔とヒカリもブイモンとテイルモンの喧嘩を止めたいのは山々だが本気の殴り合いを止めることは流石に難しいらしい。

「おい、みんな…うおおおお!?」

「うわあああ!?」

パソコン室の椅子がかなりの勢いで入ってきたヤマトとタケルの顔前を通り過ぎた。

後僅かでも前に出ていたら直撃コースだった。

「あ、ヤマトさん。タケル君も…危なかったですね」

机の下と言う安全地帯に避難していたヒカリ達がヤマト達に気付いた。

突如、命の危機に直面したヤマトとタケルは冷や汗を流しながらも何とか安全地帯に移動した。

「おい、何があった?」

「ブイモンがテイルモンの好物のチーズ入り蒲鉾を食べて、仕返しにテイルモンがブイモンのお菓子を食べたんですよ」

「それでブイモンが怒ってこんな大喧嘩になったんですよ」

大輔とヒカリの説明にヤマトとタケルは納得したようだが、同時に呆れた。

「食い物でか?それにしてはやり過ぎだろう。下手すれば俺達に椅子が直撃してたぞ」

「それは仕方ないですよ。デジモンからすれば食事は数少ない娯楽だし、デジタルワールドの冒険もあいつらからすれば普段と何も変わらないし」

「あー、確かに言われてみれば…」

確かに自分達にとってはハチャメチャかつ浪漫に溢れたアドベンチャーだったのかもしれないが、デジモン達からすればただ単に移動距離が増した程度でしかなかったのかもしれない。

「…ところでヤマトさん。何か用があってお台場小学校に来たんじゃないんですか?」

伊織がヤマトに尋ねると、ヤマトはブイモンとテイルモンの喧嘩によってここに来た理由を忘れていたようでハッとなる。

「そうだガブモンだ!!ガブモンからSOSが来たんだ…でもこれじゃあ難しいか?」

「ああ~!!パソコン室がグチャグチャに!!」

パソコン部の部長である京が滅茶苦茶となっていくパソコン室に悲鳴を上げる。

「待っていたわ…この時を!!」

「俺もだ…覚悟しろ!!」

「「でやあああああ!!」」

互いに全身全霊の一撃を叩き込もうとした瞬間。

「いい加減にしろこの馬鹿コンビがああああ!!」

「「ぶっ!?」」

タケルから帽子を拝借し、ブイモンとテイルモンに猛烈な勢いで叩き付けて撃破した大輔。

「流石ね大輔君!!」

「いやヒカリちゃん、大輔君が色々可笑しいことにツッコもうよ。僕の帽子は喧嘩を止めたり、気絶させるための道具じゃないんだけどな…」

帽子を回収しながら呟くタケルであった。

そしてデジタルワールドに向かうことになったが、京は残るようだ。

「私は残ってるわ。D-3無いし、ポロモンがこんな状態だし」

京の視線にはボロボロのポロモンが気絶していた。

「ポロモンの奴、酷い怪我だな。一体誰にやられた?」

「くっ、私ですら気付かない程に気配を消すのが上手い奴が潜んでいると言うの?」

「あんたらポロモンをぶっ飛ばしといてよくもぬけぬけと…おまけにパソコン室も滅茶苦茶だし…」

光子郎にD-3のメンテナンスを頼んでいた京は留守番することに。

全員がいなくなって京は改めて周囲を見渡す。

ブイモンとテイルモンの喧嘩で滅茶苦茶になったパソコン室を。

「これ…私が掃除するの…?」

京の空しい呟きが滅茶苦茶になったパソコン室に響き渡った。

デジタルワールドに着いた子供達。

「「……ふん!!」」

デジタルワールドに着いてもブイモンとテイルモンは頬を膨らませてそっぽを向いた。

「おい、喧嘩するなよこんな時に」

「でもそれさ、昔は太一さんと良く喧嘩したお兄ちゃんが言えることじゃないよね?」

「ぐっ!?痛いとこ突くようになったなタケル…」

ヤマトが宥めようとするがタケルの鋭いツッコミに思わず呻くが、ガブモンを発見し、ヤマトが駆け寄る。

「ガブモン!!」

「あ、ああ…ヤマト来てくれたんだ…全然来ないから交通事故に遭ったのかと…」

「い、色々あってな…」

ガブモンの言葉に明後日の方角を見遣るヤマト。

遅くなった元凶はまだ睨み合っていた。

「と、とにかく何があった?」

「えっと実は変な格好をしたデジモンカイザーがいきなりやってきて…」

やはりガブモンから見ても変な格好だったらしい。

と言うかまだあんなコスプレしてたのか良い歳して。

とにかくガブモンから事情を聞いてサンタゲリアの街のデジモン達を助けることになったのだが。

「「う~…!!」」

まだ睨み合いを続けるブイモンとテイルモン。

ガブモンは頭を掻きながら何があったのだろうとヤマトを見遣る。

「何時もの喧嘩だ。ただ今回はかなり凄かったけどな」

下手したら怪我人が出る規模だった今回は…。

「ディグモンに頼んで地面の下から移動するか?」

「それだと時間が掛かり過ぎるんじゃ…」

「万が一気付かれたりしたら厄介だし…」

もう色々諦めた大輔達は何とかして侵入方法を考えるのであった。

「じゃあ偽装でもするかい?」

【偽装?】

「あの輪に似せた物を首に巻かせて僕達を捕まえたことを演じさせるんだ。」

「それ良い考えです!!」

大輔達が頭を悩ませるが、賢の案に伊織が賛同するとその作戦で行くことに。

「「これでくたばれ!!」」

いつの間にか殴り合いの喧嘩に発展していたブイモンとテイルモンだが、大輔は2体の頭を掴んで川に放り投げた。

「頭冷やしてこい!!」

「「ぎゃふーーーんっ!!?」」

ボチャンと言う音が響いた。

そして任務開始、ベジーモン達を騙すことに成功し、デジモン達の救出に成功した。

しかし他のベジーモン達が騒いでいるのを聞きつけ、これからどうするかで頭を悩ませるが…。

「「うぎぎぎ…」」

互いに頬を引っ張りあっているブイモンとテイルモンを見て、大輔は全てを悟った仏のような顔になった。

「よし、この馬鹿2匹をベジーモン達の群れに特攻させて俺達は逃げよう」

「いや、駄目だろうそれは!!?」

「いや、もう良いじゃないですか。俺はもう疲れましたよ。もう寝たいです。寝ても良いですよね?許されて良いですよね?」

「(め、目が死んでる…!!)早まるな大輔!!」

もう自棄になった大輔にヤマトが説得する羽目に。

「プチファイアー!!」

「「熱ーっ!?」」

喧嘩の仲裁役である大輔の代わりにガブモンがブイモンとテイルモンの喧嘩を止めることになった。

勿論必殺技で。

「とにかく、上に行こう!あの黒い塔のある丘に行けば…」

「ああ、うん。賛成…ほら、喧嘩しないで早く行こうよ」

「「ふん!!」」

真っ黒になった2体もついて行く。

丘の頂上まで着くと、高い崖が目に留まる。

「ここを降りるの?」

「高すぎる…無理だわ」

「ロープか何かあると良いんだが…」

「俺、戻って探してくる!!」

ガブモンが振り返ると、周りにいたガジモン達がガブモンに駆け寄った。

「待ってくれ!みんな開放してくれたお礼に俺達が行くよ」

「ありがとう、じゃあ、一緒に行こう」

その時、レッドベジーモンが現れた。

「はは、そうはいかねえぞ!!」

「ちっ、こうなったらライドラモンで蹴散らすぞブイモ…」

「だーかーら、何時までも何時までもネチネチ言うなこの根暗ネズミ!!」

「はあ!?あんたが馬鹿だからでしょ腹黒蛙!!」

「何だとこの野郎、もう我慢の限界だ!!」

「それはこっちの台詞よ馬鹿!!」

「おい、お前ら!!お前ら俺様を舐めて…」

「「黙れ!!」」

周りのベジーモンは2体の殺気にビクついた。

「レッドベジーモンの前に…」

「あんたを先にぶちのめしてやるわ!!」

2体が拳を振り上げた瞬間。

「俺様を無視するなー!!」

レッドベジーモンが無視された怒りで攻撃を繰り出すが、それは自分の運命を決定づけた。

「おい、お前」

「私達は今、取り込み中なのよ?何邪魔してくれてんのかしら…」

「まあいい…」

「「お前(あんた)から先に消してやる」」

顔に血管が浮き出る程に激怒した2体がレッドベジーモンに迫る。

「ネコラッシュ!!」

テイルモンの連続攻撃がレッドベジーモンに叩き込まれるが、それはブイモンに背中を見せることになり、そしてブイモンは…。

「一緒にくたばれ」

テイルモンごとレッドベジーモンを蹴り倒そうとするが、テイルモンはそれを寸前で回避する。

「チッ、容赦はしないぜ!!」

舌打ちしながらレッドベジーモンに連続攻撃を叩き込むブイモン。

顔面に拳を叩き付けて仰け反ったレッドベジーモンをテイルモンが上空に殴り飛ばすとブイモンと睨み合う。

「ブイモン、あんたの最期よ…!!」

「テイルモン、お前がだ!!」

「「消え失せろおおおお!!」」

不運なことに上空に上げられていたレッドベジーモンは2体の拳が激突する瞬間に間に落ちてしまい、結果的に2体に殴られてしまう羽目に。

「ぼげええええ!!?」

大輔達とベジーモン達は思わず唖然とした。

凄い、色んな意味で凄い。

互いに対する攻撃が何故か連携になっている。

レッドベジーモンを邪魔だと判断したのか思い切り蹴飛ばし、ダークタワーに激突させて仕切り直し。

レッドベジーモンが激突したことでタワーに無数の罅が入る。

そしてそれにより、ダークタワーの効力が消失し、進化したガルルモンによってベジーモン達は一掃されるのであった。

後にダークタワーの効果に気付き、子供達はダークタワーの破壊に力を注ぐことになるのであった。

「俺様は…何てことを…」

しばらくして気絶から復活し、正気に戻ったレッドベジーモンが落ち込んでいる。

ブイモンとテイルモンの殴り合いを見ながら、レッドベジーモンに何と声をかけるかで頭を悩ませた時。

「気にしないで」

ガブモンがレッドベジーモンの肩を優しく叩く。

「確かに君は街のデジモン達に酷いことをしてしまったけど、あれは君の意思じゃなかった。君もまたデジモンカイザーの哀れな被害者に過ぎないんだ。」

「ガブモン…でも…でもよお…」

「もし君が罪を償いたいなら。君の力をこの街のために使うんだ。生きてくれ、君を慕う舎弟達のために」

「ガ、ガブモン…」

ガブモンの暖かい言葉にレッドベジーモンの涙腺が決壊した。

「…これにて一見落着だね」

清々しい笑顔を浮かべ、夕陽の光を浴びながら街を去って行くガブモンの後ろ姿は最高に格好良かった…。

しかし、最高に格好良かったのだが、ガブモンの奴、最後の最後で美味しいとこ全部かっさらっていきやがった…。 
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