万歳
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第四章
「そのことは」
「言葉選んだな、じゃあ今から上陸してか」
「ラーメン食ってきます」
「札幌だからか」
「それでジンギスカン鍋も」
「女の子のお店も行くか」
所謂風俗である。
「ススキノ行くか」
「そこはまだ」
「そうか、けれどこれからか」
「遊んできます」
「羽根伸ばしてこいよ」
「そうさせてもらいます」
このやり取りは普通だった、そうして中西はサッポロで実際にラーメンやジンギスカン鍋を楽しんだ。だが女の子の店は行かなかった。
この出港の後で七月になってだ、中西は横須賀から次の実習先である厚木に行くことになったのだが。
その時にだ、三浦に最後の挨拶の時に自分から言った。
「この艦でこれからも阪神の活躍御覧になって下さい」
「活躍してねえだろ」
最後の時も即答の三浦だった。
「全然」
「そうですかね」
「そうなってるだろ」
実際にというのだ。
「阪神は」
「これまでは伏龍だったんですよ」
「それはドラゴンズだろ」
中日ドラゴンズだというのだ。
「チーム違うぞ」
「猛牛みたいに突進しますから」
「そりゃ近鉄だろ」
もう今はないチームである。
「また違うぞ」
「鯉みたいに滝を昇って強くなるんですよ」
「カープだぞ、どれも全然違うじゃねえか」
「まあそうかも知れないですが」
「実際にそうだろ、とにかくな」
「阪神はここから大活躍してです」
「優勝するっていうんだな」
中西の言いたいことはもうわかっていた、それでこう返した。
「そうなんだな」
「はい、絶対に」
「絶対に最下位だよ」
今のチーム状況を見ればというのだ。
「全く、懲りない奴だな」
「阪神が好きですから」
「だからそう言うんだな」
「そうです」
まさにというのだ。
「私は」
「じゃあそう言ってろ、ずっとな」
「死ぬまで言わせてもらいますんで」
「どう見ても当分優勝はしないけれどな」
三浦は笑って言った、そして彼が退艦の時の見送りで六甲おろしを右手を振って歌う仕草をして送った。だが。
中西と親しかった海士長が阪神のことを言うと笑って怒った。
「中西みたいなこと言ってんじゃねえ!」
「その中西君の言葉なんですよ」
「あいつ本当に何時までも言ってるな」
このことに思わず笑う、そして三年後の優勝の時彼も驚いた。まさか優勝する筈がないと思っていただけに。
万歳 完
2018・11・23
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