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さばさば

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第五章

「お願いしてきたんだよ、しかしこの季節な」
「毎年こんな話出るわね」
「トレードとかフリーエージェントとか」
「メジャーとかね」
「阪神のトレードなんかな」
 寿はここで自分の愛するチームの話をした。
「それこそな」
「とんでもないのが多かったのよね」
「ああ」
 その通りだとだ、兄は妹に答えた。
「主力選手が急にだよ」
「放出ね」
「小山さん、江夏さん、田淵さんってな」
「お家騒動よね」
「そんなのがあったからな」
 だからだというのだ。
「不安になるな、もうここ数十年ないけれどな」
「それでもなのね」
「阪神ファンならな」
 それこそというのだ。
「伝説になってるからな」
「阪神って変な伝説多いわね」
「事実に基づいているからな」
 そうした伝説はというのだ。
「残念ながらな」
「それでシーズンオフになったら」
「不安になるんだよ」
「兄貴さんや新井さんあげたでしょ」
 千佳は兄に冷めた目で告げた。
「よかったじゃない」
「その時はな、けれどな」
「それでもなの」
「不安になるんだよ、けれどそれはな」
「こっちもよ」
 カープもだとだ、千佳は答えた。
「それもこうしたフリーエージェントの話は」
「不安になるか」
「いつもだったから」
「残留した人いなかったからか」
「これまでね」
 千佳は寿に眉を曇らせて話した。
「そうだったら実は今回もね」
「丸さんが残ってくれるか、か」
「それが気掛かりで仕方ないのよ」
「やっぱりそうか、けれど厳島でお願いしてきたんだろ」
「それでお兄ちゃんも西宮に行ってくれたから」
「後はな」
「丸さん次第ね」
「ああ」 
 そうなるというのだ。
「だからもう巨人には行かないでくれ」
「こう思うだけね」
「今はそれしかないだろ」
「そうね、ただ阪神から巨人に行く選手はいないわね」
 千佳はここでこのことに気付いた。
「そういえば」
「向こうも獲ろうとしないし阪神を出る選手もな」
「いないわね」
「メジャーに行く人はいてもな」
「そこは阪神のいいところね」
「全くだよ、じゃあそろそろ晩御飯だたからな」
「晩御飯食べて」
 千佳も応えた。
「そうして」
「お風呂入らないとな」
「それで寝ないとね」
「ああ、僕もちゃんと寝る様にしているんだ」
 寿は睡眠時間には気を使っている、それが部活のスキーにも勉強にも何よりも阪神の応援にいいと考えているからだ。
「だったらな」
「よく寝て」
「そして応援するんだよ」
「それがいいのね」
「八時間は寝ろよ」
 兄は妹に寝る時間のことも話した。
「それだけ寝ないとな」
「駄目なの」
「千佳位の年齢だとな」
 千佳はまだ小学生だ、子供はよく寝るべきだというのだ。
「僕だって七時間寝ているんだぞ」
「最低でもよね」
「そこまで寝ないと駄目なんだよ」
「だからよく寝て」
「また明日な」
「明日丸さん残留のニュースがあることを祈ってるわ」
「それじゃあ祈ってな」
 そうしてというのだ。
「ちゃんと寝ろよ」
「そうするわ」
 千佳も頷いてだ、そうして自分の部屋に入った。そうして夜は丸の残留を祈りながら寝た。その眠りは深いものだった。


さばさば   完


                 2018・11・21 
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