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永遠の謎

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412部分:第二十六話 このうえもない信頼その五


第二十六話 このうえもない信頼その五

「私があの国にいれば」
「バイエルン王国にですか」
「あの方の国に」
「私があの方を御護りしていた」
 そうしていたというのだ。王への気持ち故に。
「あの方はドイツの宝だ。そして聖なる方なのだ」
「聖なる方とは」
「そこまでの方なのですか」
「バイエルン王は」
「そうだ。そこまでの方だ」
 まさにだ。そうだというのだ。
「あの方はこの世に現れた奇跡と言ってもいい方なのだ」
「だからこそあの方をですか」
「御護りしたい」
「そうされますか」
「そうだ。バイエルンにおいてあの方を理解している者はいない」
 いるとしてもだった。その彼は。
「ワーグナー氏以外には」
「ですがそのワーグナー氏がです」
「今回はです」
「だからこそ。厄介なのだ」
「そのワーグナー氏があの方を傷つけるからこそ」
「そのせいで」
「この世で最も難しいものはだ」
 それが何かもだ。ビスマルクは深い叡智から話した。
「人なのだ」
「その、人ですか」
「人こそがですか」
「人は複雑なものだ」
 今度はこのことを話すのである。
「愛する相手を裏切ることもあるのだ」
「己の為に」
「あえてですね」
「ワーグナー氏は強かだ」
 その強かさはだ。人として顔を顰めさせるものでもあるというのだ。
 その彼に対してだ。王はというと。
「だが。あの方はだ」
「繊細ですね」
「非常に」
「それが問題なのだ。あの方は繊細に過ぎる」
 そしてその繊細さは。どういったものかというと。
「乙女だ」
「乙女ですか」
「乙女の繊細さですか」
「それだ。あの方は乙女なのだ」
 王の本質をだ。この日も話した。
「清らかな乙女なのだ」
「清らかなですか」
「そうした御心でもあられますか」
「あれだけ清らかな方はおられない」
 こうまで言うのだった。
「この世にはだ」
「そこまで純粋な方だからこそ」
「それでなのですか」
「今回のことにはですか」
「人一倍なのですね」
「傷つかれる」
 ビスマルクの言葉は心から心配し気にかけている、そうしたものだった。
 その気にかける顔でだ。彼は言うのだった。
「本当に思う。あの方は救われるべきなのだ」
「しかしその救いはなのですね」
「バイエルンにおいてはですか」
「それは」
「少なくとも今は無理だ」
 時を限定した。今現在はだというのだ。
「そしてこれからも」
「これからは」
「どうなるのでしょうか」
「やはり難しい」
 それは何故かとも彼は話していく。
 
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