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永遠の謎

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374部分:第二十四話 私の誠意その十二


第二十四話 私の誠意その十二

「自分達と違う存在は全て消されるのだ」
「それが共産党であり社会主義ですか」
「そういうことだ。それがドイツを覆えば」
「その時は」
「ドイツは地獄となる」
 王の言葉は強張っていた。どうしてもそうなってしまうのだった。
「ビスマルク卿もそれがわかっておられるのだ」
「その地獄が訪れることをですか」
「だからあの方はそうしておられるのだ」
「政治としてカトリックも社会主義者も抑えておられるのですか」
「だが第一は社会主義者だ」
 何につけてもだ。彼等なのだった。
「社会主義の下では芸術もまやかしになる」
「まやかし」
「それに」
「そうだ。まやかしになるのだ」
「芸術は芸術ではないのですね」
「それは国民に政治的に見せるだけのショーになる」 
 啓蒙やそうした適当な理由をつけただ。それになるというのだ。
「そんなものは芸術ではないのだ」
「全てが政治にありショーになる」
「それが社会主義だ。そして彼等は」
「この国においてもですね」
「知識人は何もわかっていないのだ」
 今度は知識人、ドイツが誇る筈の彼等を否定もした。
「ただ。新しいものを無批判に受け入れているだけだ」
「それだけですか」
「所詮はそうなのですか」
「そうだ。それだけなのだ」
 また言う王だった。
「多くの者はビスマルク卿がされていることを理解していない」
「ドイツの為にされているということを」
「不思議だな」
 ここまで話してだ。王は微かな笑いを浮かべてだ。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「私はあの方と何もかも対極の位置にいるのにだ」
「それでもだというのですか」
「それでも。あの方のことは理解できる」
 王はだ。それができるというのだ。
 そしてだ。さらにこうしたことも言葉として出した。
「そのうえでだ。好意を感じる」
「御好意もまた」
「あの方もまた私を理解してくれていて好意を抱いてくれている」
「御互いになのですね」
「そのことはとても嬉しい。私を理解してくれる人は少ない」
 王はよくわかっていた。自分を理解してくれる存在は少ないということがだ。王は孤独だった。だがその孤独さえも理解している者がいるのだ。
 それでだ。王はそのことに感謝を感じ。ホルニヒにこう話した。
「私は。やはり」
「やはり?」
「ローエングリンと共にいたい」
「ローエングリンですか」
「あの騎士は私を最も理解してくれる」
「だからなのですね」
「そうだ。共にいたい」
 そこにはいない筈のローエングリンを見て。そのうえでの言葉だった。
「永遠にな」
「陛下は既にローエングリンですから」 
 ホルニヒが今こう言った根拠は王がゾフィー、婚約している彼女をエルザと呼んでいることからだ。妻となる女性をエルザと呼ぶ、それはローエングリンに他ならないからだ。
 だが王は自分である筈のローエングリン、青い湖から小舟に乗り姿を現す白銀の騎士を見つつだ。幻想の中に浸りながらだった。
 この言葉をだ。出すのだった。
「彼と共にいられたら」
「共に?」
「私は。それで満ち足りることができるのだろうか」
「では陛下」
 ホルニヒはそんな王を気遣いこう提案する。
 
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