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永遠の謎

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373部分:第二十四話 私の誠意その十一


第二十四話 私の誠意その十一

「だがそれも偽りなのだ」
「真実ではありませんか」
「ジャコバン派は何をしたか」
 そこから話すのだった。ここでもジャコバン派だった。
「ロベスピエールが全権を握ったな」
「はい。絶対者になりました」
 ホルニヒも知っていた。彼も学んだのだ。
「まさに。全てを握りです」
「そうだったな。ああなるのだ」
「ジャコバン派の落とし子故に」
「労働者と農民、どちらも必要とあらば次々に殺されていく」
「彼等もですか」
「フーシェは叛乱を抑える時にその町の市民の一割を殺した」
 その一割についてもだ。問題だというのだ。
「一割を殺すと決めてそのうえで一割を実際に殺したのだ」
「その一割の中に関係のない者は」
「勿論いた」
「その彼等もですか」
「そうだ。殺したのだ」
 この歴史的事実をだ。王は話すのだった。
「革命と言えば聞こえはいい」
「しかしその実態は」
「流血と破壊だ」
 王の言葉にも血が入る。王が最も忌んでいるものがそこにあるからだ。
 王はだ。その革命についてさらに話していった。
「その他にもだ。多くの血が流れているのだ」
「罪のない市民達の間で」
「市民の国だと言っていた」
 これは事実だ。何しろジャコバン派は急進的共和主義である。その背景には圧倒的多数の市民がいることになっているのだ。しかしそれは。
 建前でありだ。実際はどうかというのだった。
「だが。その市民達をだ」
「割合を決めそれだけ殺戮したのですか」
「街も破壊した」
 殺戮だけではなかった。
「それもだ」
「街までも」
「そうだ。何もかもを破壊し殺戮したのだ」
「それはフーシェ個人の問題ではないのですね」
「確かにフーシェは怪物だった」
 フランス革命は無数の革命家を生み出した。しかしそれとは別に四人のある意味において際立った存在も生み出してしまったのだ。
 まずは一人の独裁者だ。ロベスピエールである。
 そして一人の英雄だ。ナポレオンだ。フランス革命の最後に現れバイエルンにも大きな影響を与えた存在である。その彼と共にだ。
 二人の怪物、それが問題だった。
 一人はタレーランという。僧侶階級出身であり片足を引き摺っている一見して冴えない男だ。だが女性を篭絡することに長け恐ろしいまでの交渉能力を持っていた。その怪物ぶりはナポレオンすら手出しできなく最後は裏切られ破滅させられた。
 その怪物のもう一人がフーシェだ。天才的とも言える組織構成能力に悪魔的なまでの情報収集能力を以てフランスの警察機構を一手に握った。そのうえで辣腕を振るいやはりナポレオンにも手出しをさせず彼を裏切って破滅させたのだ。尚彼等はウィーン会議でフランスも救っている。
 そのフーシェの資質だけではないというのだ。
「あの怪物の問題でもロベスピエールの問題でもないのだ」
「革命そのものにあるのですか」
「そしてジャコバン派にだ」
「ジャコバン派ですか」
「あれは個人を否定し全てを絶対者に委ねるものだ」
 こう言うとキリスト教にも聞こえる。しかしなのだった。
「その絶対者が神となるのだ」
「神に」
「神の下に派、今は共産党がありだ」
「共産党が全てを治める」
「絶対者とそれに動かされる共産党が絶対の正義となる」
「この世の神に」
「そのこれまでの全てを否定する者達が治めるのだ」
 さすればだ。どうなるかというのだ。
 
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