ジェームス=ディーンに憧れて
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第四章
「本当にな」
「インターネットなんてな」
「なかったさ」
実際にというのだ。
「スマホとかそうしたものはな」
「小説とか映画の世界だった」
そうしたものだったというのだ。
「テレビはあったしステーキは食ってたがな」
「ハンバーガーもか」
「それも食ってたけれどな」
それでもというのだ。
「今とは全然違ったな」
「そんな頃だよな」
「わしが子供の頃わしの親父が硫黄島で死にそうになって」
それで生還してだ。
「日本人はしぶとかったって言ってな」
「ああ、あの国か」
「御前の親父は日本に行ったことがあったな」
「旅行でな、面白い国って言ってたぜ」
「わしは言ったことがない、わしが若い頃は日本は戦争した国だった」
自分達の国アメリカとだ。
「それ位でな」
「特にか」
「思うところはなかったな」
そうだったというのだ。
「それよりもな」
「ジェームス=ディーンだったんだな」
「その時どれだけ恰好いいと思ったか」
それこそというのだ。
「今だってこの通りだからな」
「よっぽどディーンが好きなんだな」
「わしの青春だ、そして」
若い頃の象徴だけでなくというのだ。
「永遠の憧れだ」
「そんなに凄いんだな」
「わしにとってはな、それでな」
それ故にというのだ。
「今もこの通りだ」
「ジーンズでリーゼントか」
「そうだ、このまま死ぬまでな」
「そのスタイルでいくんだな」
「ああ、ずっとな」
二十一世紀になってかなり経った、だがそれでもというのだ。
「いくぞ、もう反抗って歳でもないがな」
「理由なき反抗か」
「いい映画だ、観るか」
「そう言って何回観てるんだよ」
それこそとだ、曾孫は笑顔で返した。
「ひい祖父ちゃんは」
「そこまでわしにとって大事だからな」
それでと言ってだ、ダグラスは笑って自分の部屋に戻った。そうして今はブルーレイで出ているその映画とそこにいるディーンを観た、画面の中の彼は今もダグラスにとっては憧れであり理想であった。
ジェームス=ディーンに憧れて 完
2018・8・12
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