いざ世界の果てへ
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第三章
海の底も探した、そこには遺跡があったがそれ以外はわからなかった。
王はそれから氷の大地にも向かい新たな大陸の海の向こうにも船を出してあらゆる方角に軍を率いて向かって行った。
そうして絹を生み出す国や不思議な島国、袋を持つ生きものがいる国に密林にと巡りに巡った。そうしているうちに。
イスカンダルは遂に死の床についた、彼はかなり置いていて寿命を迎えその中で言った。
「私はまだ世界を全て巡っていない」
「まだですか」
「世界を全て巡っておられないですか」
「あれだけ巡られても」
「それでもですか」
「そうだ、だからだ」
それでと言うのだった。
「私は死んでも世界を巡りたい」
「では天国に行かれても」
「そうされますか」
「アッラーがジャハンナムに進ませない限りは」
決してと言ってだ、そしてだった。
イスカンダルは世を去った、そして彼は幸いなことに天国に行くことが出来たが。
そこでも世界の隅から隅まで巡った、それでだった。
ペリ達はそのイスカンダルにだ、こう尋ねた。
「王よ、何時まで巡られますか」
「世界の何処から何処まで」
「何処まで巡られますか」
「一体」
「世界の果てまでだ」
これがイスカンダルの返事だった、それでだった。
王は天国でも彼と共にいるペルシアの兵達を率いて世界の隅から隅まで駆け巡っていった、それでペリ達に言うのだった。
「私はこの世界の隅から隅まで見て知りたい、だからな」
「今もですか」
「天国に行かれても」
「そうされますか」
「そうだ、天国に行ったがそれでもだ」
まさにとだ、こう言ってだった。
今も世界を見て回っていた、そうして果てしなく広い世界の隅から隅まで巡っていき続けた、その終わりはわからない。しかし笑顔で帰る都度迎えるペリ達に言うのだった。
「またわかった、ではだ」
「これからもですね」
「巡っていかれるのですね」
「世界の隅から隅を」
「これからも」
「全てがわかる日まで、その日が来なくともな」
笑顔で言ってだ、自らの軍勢を率いて巡っていった。軍を率いるその姿は神々しくさえあり埃があった。そうして常に世界を巡っていき続けるのだった。何時終わるともない何処までも広大な世界を。
そして隅まで回った時はどうするかもだ、イスカンダルは問われて答えた。
「ならもう一度前に巡った場所を巡るまで」
「そうされますか」
「その時は」
「そうだ、そうしていく」
こう言ってまた軍を率いて出るのだった、イスカンダルは果てしなくそうし続けていくこと自体を楽しんでいてだ。アッラーもその彼を見ていいとするのだった。それもまた人のあるべき姿の一つだとして。
いざ世界の果てへ 完
2018・7・4
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