銀河転生伝説
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第4話 イゼルローン前哨戦
<アドルフ>
ヴァンフリート星域の会戦は地上における戦闘が終結した後もだらだらと続き、両軍が兵を引いたのは4月の末になってからだった。
艦隊戦は全体において膠着し双方とも特に大きな戦果は無く、ラインハルトは原作通りセレブレッゼ中将を捕虜にして少将に昇進した。俺は昇進しなかったのにorz
遂に階級で並ばれたか……。
まあいい、これは最初から分かってたことだ。
イッツ既定事項。
それよりも今は……。
「久しいですねリューネブルク准将。いえ、少将」
「ハプスブルク少将ですか。久しいですな、ヴァンフリート以来ですか」
「ええ、ヴァンフリート4=2における貴殿の武勇は聞き及んでおります。この度はミューゼル少将に手柄を奪われさぞ残念でありましょう」
リューネブルクはラインハルトを快く思っていない。
必ず喰い付いてくるはずだ。
「ほお、私としては特に思うところはありませんが……閣下はミューゼル少将が気に食わないのですかな?」
「ミューゼル少将の才と能力は認めています。しかし、彼は覇気と野心が強すぎる。何れ帝国に牙を剥くのは目に見えたことです」
「なるほど、確かに現状で満足するタイプではありませんな」
それはお前もだろうに。
平然と言うあたりこいつも中々曲者だな。
「私としては彼に引っ掻き回されるのは勘弁してもらいたいですが、そうもいかないでしょうから彼に対抗しうる人材を集めているところです。少将にも時がくれば私に協力していただきたい」
「………考えておきましょう」
さすがに即答はしないか。
「良い返事が聞けることを期待してますよ。それでは」
そう言って俺は歩きだす。
今日の仕込みはこんなところか。
何も今日明日で結論を出させる必要はない。
急いて事を仕損じるのもバカらしい話だ。
原作通りだと、もうすぐラインハルトのローエングラム伯爵家継承の話が出るな。
長きに渡る支配体制で固定観念で凝り固まった門閥貴族にとっては受け入れられん話だろう。
ブラウンさんとリッテンさんが怒鳴り散らすのが目に浮かぶ。
どれだけ怒鳴り散らしたところで事態が変わらないのは笑えるが。
まあ、それはどうでもいいんだが俺にも大貴族としての付き合いってもんがある。
散々くだらない愚痴を聞かされるだろうと考えただけで溜息が出るわ。
ずっと部屋に引き籠ってようかな。
* * *
宇宙歴794年/帝国暦485年 9月25日。
俺はラインハルトより1日先立ってイゼルローン要塞に着任した。
反乱軍が11月ないし12月を期してイゼルローン要塞へ数年ぶりの大攻勢をかけてくるとの情報を得た帝国軍が、それに備えるべく大兵力を動員したその一員としてだ。
俺は傍らにいるミュラーに話しかける。
「また反乱軍がイゼルローン要塞に仕掛けてくるんだってさ。敵の司令官……何て言ったっけ? ロ…ロボ……あ~もういいやブタで。ブタの分際で俺の睡眠時間を削ろうなんて良い御身分だよね。ちょっとお灸を据えてやらんとな」
反乱軍の出兵でせっかくの自堕落生活に終止符が打たれたんだ。
愚痴の一つや二つ言いたくもなる。
「ですが、反乱軍に『眠いから今度にしてくれ』と言っても聞いてはもらえないでしょう」
「だよね~。あ~眠い、メンドイ」
「しかし、反乱軍には何らかの勝算があるのでしょうか?」
「まあ、態々来るから何らかの勝算はあるだろうさ。もっとも、それが理に適ったものなのか、単なる願望・妄想の類なのかどうかは知らんがな。それに、前回使用された並行追撃作戦――意図的に混戦状態に持ち込もうとする方法も場合によっては使ってくるだろうし、油断は禁物だな」
「確かに、しかしその状態で言われても説得力がないかと」
俺の今の状態は、目にアイマスクをかけ机にうつ伏せになってる状態だ。
確かに「油断禁物」とか言っても説得力はないな。
* * *
10月から11月にかけて、イゼルローン回廊の同盟側出入り口付近の宙域で制宙権を確保するための小規模な戦闘が連続して行われた。
戦闘は50隻から3000隻ほどの単位で立方体に区切った数千の宙域を一つ一つ争奪する形で展開した。
ラインハルトは20回以上も出撃し、狩猟でも楽しむかのようにその手腕を遺憾なく発揮している。
俺も20回近く出撃し、その全てに勝利している。
もちろん、その成功にはミュラーの助力があったからに他ならない。
俺一人ではここまでの戦果は出せなかったはずだ。
……ていうか9割以上はミュラーの功績。
しかし、1000隻単位の艦隊の戦果は大局からすれば微々たるものでしかない。
帝国軍上層部ではそれほど評価してくれんだろう。
「敵艦隊発見。数、およそ1000」
「こちらの3分の1か……なら、力押しで十分だな。戦いは数なのだよ」
この兵力差なら下手な小細工は必要ない。
正面から数で圧倒するのみだ。
「全艦、砲撃開始!」
敵艦隊は不利を悟って退却しようとするが、そう簡単に逃がしてやる義理はない。
たちまち最後部が火線に捉えられ、後ろから順に仕留められていく。
結果的に、逃げ切ることができた同盟軍の艦艇は300隻程度だった。
「まあ、こんなものか。これで20勝目だな」
このとき、俺は少し浮かれていた。
そして、この時すでに原作からの大きな乖離が出てきていることに気づかなかった。
同盟軍にとっての『小賢しい敵』が2人になっていたことに。
* * *
ラインハルトがヤンの罠に引っ掛かっているその頃―――
「敵の規模、約6000!!」
ちょっ!
「敵は包囲陣を形成しつつあり」
おま!
「敵両翼に砲撃を集中し、包囲陣の形成を阻止せよ!」
我らが名参謀ミュラーが声を大にして叫ぶが……
「ダメです、間に合いません!」
やっべぇ、同盟軍に半包囲されちゃった☆
……え? マジで!?
こういうのはラインハルトの役目だろ!
俺には役不足だっつーの。
どうすれば良いんだよこれ!!
いや、待て、落ちつけアドルフ。
慌ててもエロゲの発売日は早くならない。
先ずは深呼吸だ。
…………
敵はおよそ6000隻。
戦力差はおよそ3000。
つまり、こちらの2倍だ。
ただし、敵は4つに分かれているため1部隊の兵力はこちらの半分。
各個に撃破するか……いや、これはさすがに無理か。
なら疑似突出で……これも難しいな。
俺の艦隊はすでに半包囲下におかれている。
攻勢をかけて包囲が完成する前に引く……これはかなり至難の業だ。
何しろ、攻勢をかけるということは前進しなきゃならんわけで、包囲を容易にしているのと同義になる。
それに、万一成功したとしても敵両翼には追い付かれるだろう。
何か他に良い案は……そうだ!!
敵は包囲陣を敷いたことにより全体が薄くなっている。
ならば……。
「装甲の薄い艦艇を内側にして紡錘陣形をとれ、敵の包囲陣の一角を突き崩すんだ!!」
ここはウランフさんの手法を真似ることにしよう。
「砲火を集中しろ、撃って撃って撃ちまくれ!」
敵全体としてはこちらの倍でも、敵の1部隊だけならこちらの半分。
火力の集中により敵の包囲陣が崩れる。
「今だ、脱出する。全艦、ありったけのビームとミサイルを敵に叩きつけろ!!」
俺は味方艦と一緒に包囲陣を脱出する。
だって、味方艦を逃がすため留まってたらウランフみたいに戦死しちゃうじゃん。
ミュラーが「さすがです」とか俺を褒めてくれている。
戦闘中の命令ほとんどパクりだけどな(笑)
まあいいか、命あっての物種だ。
よし、窮地は脱出…し……た?
「正面に敵影、およそ3000!」
またかよ!
しつこい男は嫌われるぞ!
……今度はこちらと同数か。
だが、戦闘が長引けば先ほどの艦隊が追い付いてくる。
仕方ない、今度こそ。
「全艦突撃し、敵に一撃を加えたら直ちに撤退せよ」
俺の艦隊は全面攻勢に出る。
敵はこちらの勢いに押され、一時後退する。
「今だ、全艦急速撤退!」
・・・・・
こうして、俺は窮地を脱した。
そして、イゼルローン要塞に戻りラインハルトも原作通りヤンに嵌められたことを知って、
「お、やっぱりラインハルトのやつヤンに嵌められてやんのm9(^Д^)プギャーwww」
と自分のことを棚に上げて大爆笑してしまった。
無論、それを周囲から白い目で見られていたのは当然のことだった。
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