DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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空白の一昨晩
<レーベ>
アルル達は宿屋へ戻り作戦会議を行っている。
「さて、何とか魔法の玉の所在を掴んだけど…今度はバコタね!」
アルルが切り出す。
「バコタって言えば、アリアハンで名を轟かす盗賊だろ…捕まえるのは難しくないか?何処にいるのかも分からないし…」
ウルフが溜息混じりで意見を言う。
「バコタならアリアハン城の牢屋に居るよ」
リュカが状況打開の一言を発する。
「「「な、何でそれを知ってるの!?」」」
驚き詰め寄る3人…
「まぁまぁ…さっさとアリアハンへ行こうよ!ほら、『キメラの翼』も用意しておいたから」
アルル達は納得しきれないまま、リュカに促されアリアハンへと舞い戻る。
<アリアハン>
一行はアリアハン城下を城に向かい歩いて行く。
すると前方からうら若いシスターが一人駆け足で近付いてくる…胸を盛大に揺らしながら…
「あ!シスター・ミカエル!!」
嬉しそうに声を上げるのはウルフ。
しかしシスターはリュカに抱き付き話し出す。
「リュカさん!昨晩はありがとうございます。それと…楽しかったです…」
シスターは頬を赤らめ語り出す。
不満顔のウルフ。
シスターからは、今朝リュカから漂ってきたのと同じ香水の香りが…
《まさか…わざわざキメラの翼を使ってアリアハンへ戻ってたの?キメラの翼だって、ただじゃないのよ!………でもおかげでバコタの情報が手に入ったし……でも……》
やはり納得のいかない3人を伴い、シスターと別れ城の地下牢へと向かうリュカ。
「あ!!テメーは昨日の晩の!!テメーのせいで掴まっちまったじゃねぇーか!」
リュカは鉄格子越しにバコタと対面する。
「何言ってんだよ!ミカエルさんの財布をスったのが悪いんだろ!」
どうやらリュカは、昨晩シスター・ミカエルとデート中にバコタと遭遇し、財布を盗む現場を押さえた様である。
「まぁいい…そんな事より、盗賊の鍵を返してよ。本来の持ち主から依頼を受けたんだ!」
「あ゛?盗賊の鍵?………あぁ!アレなら『ナジミの塔』の爺に騙し取られたよ!」
「ナジミの塔?なんだそれは?馴染みの店みたいなもんか?行きつけか?…じゃぁ、その店の場所を教えろよ!」
「店の名前じゃねぇーよ馬鹿!そう言う名前の塔があるんだよ!」
「変な名前!バコタの次くらいに変な名前!!」
「うるせーよ!サッサと行けよ!そして死ね!」
バコタの暴言は止まらない。
「なんだ?悪い事して掴まったクセに、反省の色が見えないぞ!お仕置きしちゃる!」
そう言うとリュカは鉄格子の隙間から左手を入れバコタに向かって魔法を唱える。
「バギ」
(ヒュウ、ドゴ!!)
「うごっ………!」
リュカから発せられたバギには殺傷能力は無い、強力な風の固まりがバコタにぶち当たった!
「ほ~れ、バギ、バギ、バギ!」
「がはっ!…ごほっ!…ちょ、ごめんなさい!も、止めて…うごっ!!」
「うん。勘弁してあげる。悪い事したら反省するのが常識だからね!もうダメだよ、悪い事しちゃ」
「凄い………魔法を改造しちゃった…」
只今バギの魔法を懸命に修練中のハツキは、リュカの魔法の才能に心底憧れ、恋心と合わさり、とんでもない感情へと変化し始めている…
大変危険な兆候です!
「んで…そのナジミの塔って何処にあんの?」
「は、はい…アリアハンの西の小島に…あ!でも大丈夫です!更に西の岬に洞窟があって、そこからナジミの塔へは繋がってます!」
「うん。ありがとう。じゃぁ、僕達行くね。もう悪い事しちゃダメだよ。出所したら、全うに生きるんだよ」
リュカのバギが堪えたのだろう低姿勢なバコタの情報を元に、件の洞窟を目指すアルル一行。
<ナジミの塔への洞窟>
ジメジメと嫌な雰囲気を放つ洞窟を、度重なる戦闘に勝利しながら突き進む一行。
イヤ…言い直そう…度重なる戦闘に勝利する3人と戦闘をしない1人の一行…
更に言えば戦闘しないだけではなく、終始歌を歌いモンスターを呼び寄せるリュカ!因みに曲目は『YOUNG MAN』である!
「ちょ、戦闘しないのはいいとしてもさ、歌うのは止めてよ!」
肩で息するウルフの悲痛な叫び。
「あはははは!以前、息子にも同じ事言われた!」
「息子さんも苦労してるんですね…」
「でもさ…若い内の苦労は買ってでもしろって言うじゃん!良いんじゃね?」
本人が聞いたら間違いなく激怒するであろう発言をするリュカ。
会った事もないリュカの息子に、心底同情するウルフ。
「じゃぁ…そこまで言うリュカさんは、どんな苦労をしてきたんですか?」
単に歌われるより静かに語らせておく方がマシと思ったアルルの発言は、思わぬ重い話を引き出す結果へと繋がった。
リュカの幼少期の苦労話…
目の前で父親を…自分が人質になった為殺された話から奴隷時代の10年間…
口調は軽く、爽やかに話すものの、洞窟内と言う雰囲気と話の内容がマッチしてしまい、号泣し始める3人…
アルルにしては、幼い頃より同年代の女の子と遊ぶ事も許されず、勇者としての重荷を背負わされ、この世で最も不幸だと思っていた…
ハツキとウルフも同様に、幼い頃から孤児院で生きてきた自分はかなりの不幸だと思いこんでいたのである。
しかし、それでも…親を目の前で殺された事も無ければ、鞭で打たれ過酷な労働を強要された事も無い。
果たしてリュカと同じ人生を過ごしたら、リュカと同じように明るく爽やかな性格になっていたであろうか?
そう思った時、リュカに対する尊敬の度合いが飛躍的に上昇してしまう若者達…
道を踏み外す事の無いよう祈りたいものである…
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