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私自身が藍染惣右介になることだ

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これが君の視ている世界だよ

 
前書き
ビビッきたので第2話の投稿です('ω')
ではどうぞ 

 
 此処は市街の大手のショッピング・モール
 人々が日々様々な目的で足を運び、日常を謳歌する場所である。

 この場には今、一輝、ステラ、一輝の妹である珠雫、そして彼女のルームメイトである有栖院凪が訪れていた。
 彼らはこのショッピング・モールで上映される映画を鑑賞すべく出向いた次第である。

 互いに睨み合うステラと珠雫を苦笑しながらも一輝はこの日を楽しむ。
 ステラと珠雫の仲が想像以上に悪いのは計算外であったが
 また、偶に妹のルームメイトであるアリスから向けられる視線に困惑することはあれど、この何気ない日常を一輝は享受していた。

 先日の学内選抜戦では、やはり藍染が桐原に勝利した。
 それも圧倒的な実力差を群集に示す形で

 あの日、あの場所で日本で2人目の学生のAランク騎士が誕生したことは記憶に新しい。
 
 その名を藍染惣右介
 ()の抜刀者が有する固有霊装の名は『鏡花水月』
 その固有霊装が有する真の能力は『完全催眠』
 
 藍染の超越者と呼ぶに相応しい実力に戦慄したことを今でも覚えている。
 一輝は自身が追いかけ、目標としている彼の背中が如何に遠く、大きいのかを再認識した。

 だが、それでも一輝は諦めない。
 それが黒鉄一輝という抜刀者の信念であり、自身の成長の手助けをしてくれた藍染への礼でもあるのだと一輝は信じているのだから



 しかし、一輝達はショッピング・モールでテロリスト集団「解放軍」と鉢合わせしてしまう。



 一輝と有栖の2人が丁度トイレに足を運んでいた刹那の時間にステラと珠雫は「解放軍」と相対していた。

 当所は抜刀者としての能力を駆使し、テロリスト達を翻弄していたステラであったが事態は一変してしまう。

 一般人を人質にとられてしまったのだ。
 抜刀者である以前に一国の皇女であるステラは瞬く間に無力化される。

 テロリストの言いなりとならざるをえなくなったステラは全裸で土下座することを強要される。
 ストリップを強いられ、下着姿となるべくそのきめ細かな指を服にかけたその刹那─







─またしても事態は一変した─







「あ…あぁ…藍染先輩……?」

 ステラの腹には深々と藍染の固有礼装が突き刺さる。
 彼女は現状を理解できずに、大きく吐血する。

 ステラは己の血で濡れる藍染の固有礼装の刀の柄を視界に収め、眼前の藍染を見上げることしか出来ない。

「これは、一体、何なんですか……?」

 常に温厚で、顔立ちの如く優しい藍染惣右介の姿など存在しない。
 見上げれば柔和な人を思いやる優しさなど存在せず、何処までも冷徹で残酷な顏を藍染が浮かべていた。

 血は一向に止まる気配はなく、ショッピング・モールの床を瞬く間に紅く染め上げていく。
 それは即座に大きな血だまりと化ししていく。

 現状は好転するばかりか、ステラは為す術無く血だまりへと崩れ落ちた。

「─」

 血だまりに伏したステラを見据える藍染の瞳は冷酷で、光を映してなどいない。
 その瞳は何処までも黒く、世界を映してなどいなかった。

「藍染先輩、何故、ステラさんを……!?」

 一輝の妹、黒鉄珠雫は眼前の凄惨と化した光景が信じられなかった。
 一体、何故ステラが斬られなければなかったのか
 何故、ステラを切り捨てた本人がそうも平然としていられるのか

「君は一輝君の妹である黒鉄珠雫君だったね」

 珠雫の心の内など知ることなく、藍染は言葉を続ける。

「あの時の彼女は憎しみなど無くただ無策で刃を振るっていた。そんなものはこの事態を打破するには至らない。抵抗無き戦意は翼無き鷹だ。そんなもので何も護れはしない。無力な人質の存在はただ脚をへし折る為の重りにしかなりはしないのだ」

 ステラという存在を容赦なく切り捨て、冷徹に藍染は言葉を続ける。

「貴方は誰ですか?本当にあの藍染(・・)先輩ですか?」

「随分と状況判断能力があるじゃないか。流石は一輝君の妹と言ったところかな」

 着眼点は悪くない。
 黒鉄一輝の妹なだけではある。

「だけど余り敵対心を抱いて欲しくはないかな。私も一輝君の妹である君を手に掛けるのは忍びない」

「何が死なせるには忍びないですか!?だったら、何故、ステラさんを殺したのですか!?」

「彼女は一輝君無しでは生きられない。そういう風に仕込んだ。……殺していくのは情けだと思わないか?」

 群衆の前でストリップを強いられ、裸体を晒してしまっては女性として死んだ方が本望だろう。
 何より憧憬という名の好意を抱いている彼、黒鉄一輝に顔向けが出来るはずもない。

「しかし、彼女を手に掛けたくなかったのも事実だよ。だから少し手間を掛けてステラ君が解放軍に如何に対処するかを窺っていたのだが、中々上手くいかなくてね」







「だから仕方なく私が殺したんだ」







「そうですか……!お兄様もステラさんも全て貴方の掌の上で転がされていただけだったということですか!!」

「君もだ。珠雫君」

 超然とした藍染の表情は崩れない。

「よく分かりました。貴方はもう私が知る藍染先輩ではないことを……!どんな理由があるかは知りませんがこれ以上死んでも貴方の好きにはさせるわけにはいきません!」

「もう自分が知る藍染惣右介ではないか。










残念だが、それは錯覚だよ、珠雫君。……君の知る藍染惣右介など最初からこの世界(・・・・)の何処にも居はしない」

 藍染は底冷えするような笑みをその形の良い唇に浮かべる。

「ステラさんはお兄様に憧憬の念を抱いていました……。お兄様に憧れてお兄様に歩み寄り、お兄様と肩を並べたいと、それこそ必死の思いで努力してやっとの思いでお兄様と気持ちが通じ合ってきたんです……」

 理解していた。
 敬愛するお兄様にあの女、ステラが好意に近しい感情を向けていたことを

 憧れから来る好意だったのかもしれない。
 だが、それでも何の打算も無くお兄様に好意を向けてくれる彼女のことは非常に不服ながらもミジンコレベルで認めていた。

「知っているさ。誰かに憧れを抱く人間ほど御しやすいものは無い。だから私が彼女を一輝君と引き合わせたんだ」

「な……」


この男は、それすらも知って……


()い機会だ。一つ憶えておくといい、珠雫君。










憧れは理解から最も遠い感情だよ」

 珠雫が激怒し藍染に特攻しようとした刹那、数多の銃弾が火を噴いた。
 
 狙いは藍染を含めた人質
 怒りで我を忘れ、藍染に憎悪の念を抱いていた珠雫は反応することも出来なかった。



「困った子だ……」

 迫り来る銃弾の嵐に藍染が動じることはない。
 否、動じる必要もなかった。

 藍染は緩慢な動きで右手を宙に掲げる。


素手で……ッ!?


 驚くことに藍染は素手で自身に迫り来る無数の弾丸を掴み取っていた。
 信じられない光景だ。

 視認することも不可能な程の高速移動を駆使し、放たれた銃弾の全てを無力化している。

「やはり、身に余る野心を抱えた者程やっかいだよ」


 そして、一閃


 視認することも困難な神速にて繰り出された一閃により全ての銃火器が両断される。
 途端、藍染の姿が消失した。

 周囲に血しぶきが飛び散り、テロリスト集団達は為す術無く地に倒れ伏す。
 深々と肩を斬られた者、銃火器ごと両腕を両断された者、腹を割かれた者と様々だ。
 ビショウは肩から脇腹にかけ大きく斬り割かれる。
 



「……確信だ。君達『解放軍』の存在を初めて知った時、全くもって使えないと確信した。だから君達とこの場で出会った瞬間に君達を潰すことを決断した」

 痛みに呻くビショウを見下ろし、藍染は死刑の宣告にも等しい言葉を叩き付ける。

「どうやら私の勘は正しかったらしい」

「……最後だ。大人しく固有霊装(デバイス)を手放し、此方に降伏したまえ」

「断る……ッ!」

「何だって……?」

 聞き間違いであろうか。
 ビショウは何と言葉にしたのだろうか。

「断ると言ったんだ、糞野郎……!」

「そうか……」

 どうやら聞き間違いではなかったようだ。
 凝り固まったプライドと歪んだ差別思考が冷静な判断力を鈍らせているらしい。
 こうなっては仕方がない。

「……どうやら君は強情のようだからね。固有霊装(デバイス)を手放すのが嫌ならば仕方ない。此方も君の気持ちを組もう。固有霊装(デバイス)を抱えたままで良い……










固有霊装(デバイス)ごと腕を置いて、降伏したまえ」

 一閃
 ビショウは咄嗟になけなしの最後の力を振り絞り、後方に回避した。

 血しぶき飛び散り、肉が裂ける音が鳴り響く。
 固有霊装(デバイス)ごと両断された両腕が血だまりに沈み、地面に無残に落ちる。

「随分上手く躱すじゃないか、その身体で……」

「だけど、できれば余り粘って欲しくはないかな。










潰さないように蟻を踏むのは、力の加減が難しいんだ」

 砂利と戯れる大人などいない。
 藍染にとってビショウ達は取るに足りない存在に過ぎない。

「う、動くな……!」

 突如、酷く狼狽した様子で一人の女性が人質の眉間に銃を向けていた。
 ビショウは奥の手が功を奏したことに余裕を取り戻し、小物感を全開にする。

 幾ら超越とした力を有していようと抜刀者は人質の前では無力に等しい。
 ビショウは得意げに指示を出し、その銃口を藍染へと向けさせる。
 
 藍染は抵抗することなく銃弾で射抜かれ、倒れ伏す。
 珠雫も同様だ。
 ビショウは藍染の死に現実味は無くとも、自身の勝利に酔いしれる。

 高笑いを浮かべ、企ての成功の喜びを嚙み締めようと天を仰いだ瞬間、その身に激痛が走った。
 肘から肩が宙を舞い、余りの痛みに声にならない絶叫を上げる。
 見れば一般人に紛れ込んでいた同朋が背中を大きく斬られ、崩れ落ちていた。


一体何が……ッ!?


 肩から腕と完全にお別れしたビショウはその相貌を歪ませ、前方を憎々し気に睨み付ける。


何故、生きている……ッ!?


 藍染は刀身を地面に向け、己の固有霊装を掲げる。
 
 そして唱える。
 彼の最強にして最凶である固有霊装の解号を―







「砕けろ『鏡花水月』」







「何だ、これは……」
 
 途端、周囲の光景が砕け散る。

 人質の姿は何処に消え、この場には藍染を含めたテロリストしか存在しない。
 辺りを血だまりが支配し、残るは自分一人

「これが君が視ている世界だよ」

 ちっぽけな野心を抱えたビショウの野望が水泡の泡の様に消える。
 ビショウには眼前の現実を認めることなど出来なかった。

「おのれェ!」

 策など存在しない。
 だが、自身の敗北を直視出来ないビショウはしぶとくかなぎり声を上げた。

「無駄なことは止めた方が良い」

 だが、ニ刀の固有礼装が突き付けられ、ビショウは抵抗虚しく無力化される。
 一歩でも動けば斬る、刀身を突き付ける一輝とステラの目はそう語っていた。


何故、皇女(この女)も生きている……!?


「君如きでは私を殺せない」

 眼前の現象にビショウは理解が追い付かない。
 見ればこの場の騒動を収めるべく部隊が到着し、ビショウを含める解放軍の捕縛に動いていた。

 全ては藍染の掌の上
 鏡花水月の前には無力に過ぎず、ビショウは終始、藍染の掌の上で転がれさていたに過ぎなかった。


 こうしてショッピングモールにて起きた一連の騒動が鎮圧された。








 

 破軍学園 理事長室


 新宮寺黒乃は思案に暮れる。
 解放軍の今回の騒動の結末も一輝達から聞き及んでいる。

 ショッピングモールにて起きた騒動は無事、鎮圧された。
 破軍学園のAランク騎士である藍染惣右介の尽力によって

 だが、既に新宮寺黒乃にとって解放軍の事などどうでもよかった。
 現在、彼女の脳裏に浮かぶは一人の抜刀者


 ()の者は世界最強の剣士にして、世界最強の犯罪者
 世界でも有数の"魔人"へと到達した抜刀者の一人にして、"比翼"の名を冠する最強の抜刀者

 新宮寺黒乃自身、世界でも有数のAランク騎士の一人としての自信とそれを裏付ける実力を有している。
 だが、彼女は正に別格の存在だ。
 文字通り次元が違う。


 しかし、どうしても新宮寺黒乃は藍染惣右介が()の抜刀者に劣っているとは思えなかった。
 Aランク騎士の自分をもってしても太刀打ち出来ないと断言出来る"鏡花水月"の恐るべき能力
 
 他の抜刀者の追随を許さない超越した実力も有し、その実力たるや計り知れない。
 魔力は稀代の凡百の抜刀者の数十倍の魔力を持つステラ・ヴァーミリオンさえも凌駕している。
 固有礼装の能力は解放の瞬間を一度でも見た相手の五感を支配し、対象を誤認させる"鏡花水月"
 正に悪夢と言うしかない。

 世界でも名を轟かせるAランク騎士の自分をもっても絶対に敵わないと思わざるを得なかった。
 否、なまじ隔絶した力を有している自分だからこそ藍染惣右介の底の知れない力を肌で感じ取ることが出来たというべきか

 新宮寺黒乃は藍染惣右介に()の抜刀者、エーデルワイスの姿を幻視した。



「もしや藍染ならば彼女とも渡り合えるのでは……」


いや、それは無いだろう

 
 彼女は荒唐無稽な考えを即座に廃棄する。
 流石にそれは有り得ない可能性だ。

 新宮寺黒乃は理事長室で深く嘆息するのであった。

 








 知識や認識とは曖昧なモノであり、その現実は幻かもしれない。
 人は誰しも、思い込みの中で生きている、そうは考えられないだろうか。

 誰もが()の者を誤解し、誤認する。
 全ては()の抜刀者の掌の上

 藍染惣右介の真偽は誰にも分からない。
 
 

 
後書き
OSR値が足りない


<追記>
気分が乗れば投稿するかもしれないです('ω')
まあ、アイディアが浮かび上がればの話ですが…… 
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