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人徳?いいえモフ徳です。

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二十六匹目

コツ…コツ…

シラヌイが一歩歩く度に、靴と廊下が音を発てる。

コツ…コツ…

シラヌイが扉の前に立つと、後ろに控えていたエリザが前に出て、扉を開けた。

スッと食堂の光が漏れる。

完全に扉が開くと、シラヌイはスカートの端を摘まんで一礼した。

そして顔をあげた第一声は…

「ねえ、あしたセンマリカさん殴りに行っていいですかねお母様」

「あー…………いいですよ」

「いやダメでしょシェルム」

「似合っておるし殴らずともよかろう」

カツカツと靴を鳴らした後、シラヌイが席に着く。

「ふぅ…」

「どうしたシラヌイ。かように疲れた顔をしおって」

「んー? なんか…なんか…うん…色々、ね…」

遠い目をするシラヌイ。

タマモ、シェルム、ブライがエリザに目を向ける。

「一部のメイドが暴走しまして…」

「背中触ったのはお前だろうが」

「うぐっ…」

「まぁ、よいよい。シラヌイにはいい仕置きになったじゃろうて」

「僕がよかねーですよ」

「そうカッカするなシラヌイよ」

ムスッとしていたシラヌイだったが、メインディッシュが運ばれくると目を輝かせた。

「シラヌイ様。こちらアイスドラゴンロードのステーキになります」

運んで来たのはメッサーだ。

「ドラゴンの肉は本来固くて食べられませんが、こちらは長くブランデーに漬け込んでいますので柔らかくなっております」

その分厚い肉にナイフを入れるとスッと切れた。

「あーむ……はぐ………♪」

嬉しそうにドラゴンのステーキを頬張るシラヌイを見たブライは満足げだった。

「ふぅ…狩ってきた甲斐があったよ」

「ぅゆ? お父様がとったの?」

「ああ。戦闘は簡単だったけど道中がね…」

ブライは遠い目をしながら言った。

「ゆー…?」

「お前が気にする事じゃないよシラヌイ」

「ぅゆ!」

その時のブライの瞳には、僅かな憎しみが浮かんでいた。

それに気付いたのは、メッサーただ一人だけだった。







食事が終わると、シラヌイは玉藻に尻尾を触らせて欲しいと頼み込んだ。

ロリモードよりも一回り大きくなった尻尾をモフりたいのだ。

「ん?かまわぬぞ」

「ひゃっふー!」

ソファーにうつ伏せに寝転んだ玉藻の腰の上に乗ったシラヌイがその大きな尻尾をモフり始めた。

「ふぁぁぁ……お婆様もふもふ……」

幸せそうに九本の尻尾に埋もれるシラヌイ。

「アニマライズ」

シラヌイの手足と体が縮み、鼻が伸び全身が毛に覆われる。

「きゅぅー」

獣化したシラヌイが玉藻の尻尾に潜り込む。

「うきゅぅぅぅ………❤」

「気持ちの良さそうな声を出しおってからに…」

と、それを悔しそうに見ているのが一人。

「むぅ…お母様ばっかり狡いです」

「なんじゃシェルム? シラヌイの尻尾をさわりたいのかのぅ?」

無言で頷くシェルム。

「儂の背中に座るといい」

「宜しいのですか?」

「構わぬ、お主一人支えられぬような鍛え方はしておらんわ」

「では失礼して」

シェルムは玉藻の背中に座り、玉藻の尻尾の中から一つ小さな尻尾を探し出した。

シラヌイの尻尾だ。

「ああ…シラヌイの尻尾…もふもふしてて最高ですね……」

息子の尻尾をモフり、シェルムは気持ち良さそうにタレ目を細めた。

「あんまりやり過ぎるとブライが妬くぞ」

「その時はあの長耳を一晩中なぶるだけですよ」

「やめてやれ……」

「うきゅぅ…?」

そこでシラヌイは自分がモフられている事に気付いた。

「うふふ…シラヌイももうこんなに立派な尻尾を持つようになったんですね」

「我らの尾の大きさは力の証じゃ。シラヌイ程であればこの大きさは妥当じゃろう。
体とのバランスはちとわるいがのぅ」

シラヌイの尾は獣化した時には体より長く、通常でも身長の半分以上ある。

「ぅきゅー?」

シェルムがシラヌイの頭を撫でると、くしくしとシェルムの手に顔を擦り付ける。

「きゅぁぁ~ん…❤」

「うふふ…今日はシラヌイを抱き枕にして寝ましょう、そうしましょう」










「ああ…シラヌイの尻尾もシェルムのようにもふもふになったんだなぁ…」

ブライはシェルムと獣化したシラヌイを挟むようにしてベッドに入っていた。

「お母様は、自分の身長の半分も尾があれば一人前の尾獣と言っておりましたが、シラヌイはまだまだ子供ですね」

シェルムがシラヌイの顎の下を撫でると、気持ち良さそうに声をあげる。

「それは……そうだろうな…。俺とシェルムの子だ。魔力が規格外なのは当然だ」

「うふふ、なんせエイルヴァイオン皇太子と九尾の娘の子ですものね」

ソレを言うと、ブライ…本名ブーミ・ライトニング・マクリリン・エイルヴァイオンはそっぽを向いた。

「拗ねないでくださいよブーミ・ライトニング・マクリリン・エイルヴァイオン皇太子陛下殿?」

「うるさい」

「ふふ…そういう子供っぽい所、120年前に会った時から変わってませんね」

「Zzzzzz」

「狸寝入りが下手なのもね」

するとブライは手に魔力を集め、自分に魔法を投射した。

催眠魔法だ。

「あらあら…。さ、私達も寝ましょう? シラヌイ」

「うきゅ」












(エイルヴァイオン皇太子…? ブーミ・ライトニング・マクリリン・エイルヴァイオン…?
エイルヴァイオンって隣国のエルフの国…。
え? お父様ってまさか……
いや、何も聞かなかったことにして寝よう…そうしよう)
 
 

 
後書き
次回! 新たなもふもふヒロイン登場! 
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