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永遠の謎

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25部分:第二話 貴き殿堂よその三


第二話 貴き殿堂よその三

 そしてだった。もう一人の名前を出すのだった。
「それに」
「それに?」
「おそらくこれから会うあの方もだ」
「ビスマルク卿ですね」
「話を聞くとあの方はかなりの方だ」
「その様ですね」
「だからだ。是非会いたい」
 こう話すのだった。
「では。行こう」
「晩餐に」
 こうして太子はそのビスマルクと会うことにしたのだった。勲章が幾つも下げられている白い軍服を着た厳しい口髭の男だった。背は太子と同じだけ高く鷲鼻が目立つ。目の光は強く口元も厳しい。その男がビスマルクだった。
 彼はまず太子と握手をした。太子から言ってきた。
「ようこそ、バイエルンに」
「はい」
 ビスマルクはその厳しい声で彼に応えた。
「はじめまして、殿下。ビスマルクです」
 ここで彼は恭しく一礼した。バイエルンの太子に敬意を表してである。
 そうしてだった。ビスマルクは彼に言うのだった。
「では殿下」
「はい、何でしょうか」
「お話を聞きました」
 こう言ってからだった。
「何でも私に贈り物があるとか」
「些細なものですがいいでしょうか」
 太子は微笑んで彼に返した。
「音楽ですが」
「といいますと」
「こちらへ」 
 その笑みのまま彼を一室に案内した。青い花が所々に飾られた金色の部屋に黒い服のオーケストラの者達が座っていた。そしてビスマルクが部屋に入るとだった。
 すぐにだった。音楽が奏でられたのだった。その曲は。
「これは」
「お聴きになられたことがありますか」
「ワーグナーですな」
 すぐに答えが返ってきた。ビスマルクから。
「それもこの曲は」
「はい、ローエングリンです」
 今度は太子から答えた。
「第一幕の前奏曲です」
「そうですな。殿下はワーグナーがお好きでしたか」
「素晴しいと思っています」
 これが太子のここでの返答だった。
「この世で最も素晴らしい音楽でしょう」
「素晴しいですか」
「私はそう思っています」
 何処か熱を帯びた目でビスマルクに述べていく。
「ですからここで」
「私にもこの曲をですか」
「御気に召されたでしょうか」
「私はドイツ人です」
 ビスマルクはこう太子に言うのだった。
「ですから」
「そうですか。ドイツ人だからこそ」
「有り難うございます」
 こう言うのだった。
「曲だけでなく」
「演奏もですね」
「はい、見事です」
 ビスマルクは己の耳にも自信があった。だからこそだった。
 それでなのだった。今は耳を澄まして聞いていた。それで太子に礼を言うのだった。
「殿下、有り難うございます」
「御気に召されたのですね」
「その通りです。音楽は最高の贅沢の一つですね」
「人にだけ許された贅沢ですね」
「はい、その通りですね」
 ビスマルクも太子のその言葉に頷く。
「それは」
「そしてその中でも」
 その人の中だけでもというのだった。太子の言葉は続く。
「芸術を解することができるのは」
「さらに限られてますな」
「はい、そうです」
 
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