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提督はBarにいる。

作者:ごません
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秋祭りにはお熱い犬を?・その2

 ぐびり、ぐびり。ごくごくごく。喉を鳴らしてジョッキに注がれた黄金色の液体が胃の腑に滑り落ちていく。

「「「ぷはぁっ!」」」

「……お前ら、本来の目的忘れてるだろ」

「わ、忘れてないわ?」

「ホットドッグの試食でしょ?試食」

「決してビールを飲みに来た訳では……美味しいけど」

 今では立派な飲兵衛と化したアメリカ組は放っておいて。出店して作る側になるだろう八駆の4人は、ああだこうだと意見を交わしている。

「やっぱりこのキャベツがポイントよね」

「そうですね、カレー粉の風味とキャベツの甘味が絶妙です!」

「でもぉ、それ以外にも違う味もするわぁ~?」

「あぁ、そりゃ多分ウスターソースだな。バターでキャベツを炒めてコクをプラスしながら、カレー粉とウスターソースで塩気と辛味、酸味を加えてやるんだ」

 カレー粉とウスターソース、こいつが意外と相性が良くてな。カレーピラフ作る時なんかに一味足りないと思ったら、ウスターソースを隠し味程度に垂らしてやるとビシッと味が決まったりする。

「どう思う?霞」

 纏め役らしく、朝潮が霞に尋ねる。霞は朝潮型の中でも料理の腕は1、2を争う腕前らしく、次点で満潮、その次位に山雲が続く(らしい)。だったら他の料理の上手いメンバーも連れてくれば?とも思ったが、どうも他の出店のメンバーとして引っ張られていったらしい。まぁウチの鎮守府食べるのが好きでも作るのが上手い奴は限られてるからなぁ……。

「このキャベツは大量に作って、作り置きしておけば対応出来ると思うわ。パンはトーストするならオーブントースターが必要ね……ソーセージは焼くかボイルするかで用意する機材が変わってくるわね。何にせよ、早めに抑えておかないと。機材にだって限りがあるんだから」

 ふむふむ、とメモを取る朝潮。こうやってみると成る程、霞の奴は実際に屋台を出して作る場合を想定して勘定しているな。意外と見切り発車で屋台で出す料理を決めて、後から俺とか間宮とかに泣き付く奴が多いんだが……大変結構な事だ。

「んじゃ、悩んでる間にまた違うホットドッグを作って見せますかね」



《クセがあるほどチーズが美味い!バゲットドッグ》※分量2人前

・バゲット:1本

・ソーセージ(バゲットの半分の長さの物):2本

・チーズ(エメンタールがオススメ):80g

・パセリ(みじん切り※乾燥でもOK!):2つまみ

・カイエンペッパー(無ければ一味でも):少々

・オリーブオイル:小さじ2

・ブルーチーズ(マスタードでも美味いぞ):大さじ2




 まずはバゲット。半分の長さに切り、ソーセージを挟むための切れ込みを入れる。切れ込みを入れたらそこにブルーチーズを塗る。ブルーチーズが苦手な人ならばバターや粒マスタードなんかもオススメだ。

 お次はソーセージ。フライパンにオリーブオイルを引いて熱し、ソーセージの皮がパリッとするまで焼き上げる。

 ソーセージが焼き上がったらパンに挟み、上からチーズをおろして掛ける。エメンタールチーズなんかのクセの強いチーズの方がソーセージにも負けないが、普通のピザ用チーズでも十分に美味いぞ。チーズを掛けたらオーブントースター等でチーズがとろけるまで焼き、仕上げにパセリとカイエンペッパーを散らせば完成だ。ケチャップなんかは、お好みで。



「こんな変わり種があっても良いかも知れんぞ?『バゲットドッグ』だ」

「これは……フランスパン、ですか?」

「そこに焼いたソーセージを挟んで……」

「とろけるチーズをかけて焼いてある訳ね」

「「「「不味い訳無いじゃん!」」」」

「デスヨネー」

 トーストしてあるお陰でパリッとしたフランスパンの香ばしい表面に、コクのあるチーズとソーセージの肉汁が弾ける。そこにカイエンペッパーやマスタードの辛味がアクセントになって、食欲を増進させる。

「アメリカのホットドッグとは別物だけど、コレもアリね」

「元々ホットドッグのトッピングとして、チーズは定番ですし」

「ビールもいいけど、ワインとかジントニックが欲しくなる味ね」

 飲兵衛3人組にも好評のようだが、霞は1人腕組みをして眉間にシワを寄せてうんうん唸っている。

「どうした?まさか口に合わなかったか?」

「そ、そんなんじゃないわよ。ただ、これを屋台に出すとしたら幾らで出せば元を取れるかなと思って……」

 内心、へぇと感心しちまった。中々こういう経営者的な物の考え方が出来るってのは難しい。ウチの店は半分俺の道楽みたいな所があるから利益にはあまり興味が無い。赤字にさえならなければ良い、位の感覚でいるから割と材料等も拘って使っている。しかし、艦娘達の出す屋台は大淀からグループ毎に決められた金額の予算が渡される他、赤字は自分達のポケットマネーで補填するのがルールになっているのだが、その辺の見積もりが甘くて秋祭りの後に泣きを見ている奴等がちらほらいる。それを考えると、霞は赤字を出さずに利益を出そうと考えている辺りしっかりしたモンだ。

「とは言え、ある程度味にも拘らないと売上げは伸びんぞ?」

「そうよ、そこのバランスが難しいのよ」




「それならぁ、トッピングで種類と値段を変えたらどうかしらぁ?」

 という案を出してきたのは荒潮だ。

「トッピングか……パンはコッペパンをまとめ買いして、ソーセージも同様。そこにプラスしてやる訳ね」

「さっきのカレー味の炒めたキャベツに、他には何が良いかしら?」

「ホットドッグのトッピングといえば、レリッシュは欠かせないわね!」

「れ、レリッシュ?」

 アイオワの聞きなれない言葉に霞が首をかしげる。

「レリッシュってのは、細かく刻んだ玉ねぎやピクルスの事だ。英語で『薬味』だとか『付け合わせ』って意味だな」

「あぁ、そういえばよく挟まれてますね。刻んだ玉ねぎとかピクルスとか」

「そう言えば、山雲ちゃんがピクルスとか漬け物とか沢山作ってました!」

「なら、山雲に頼んでそれを分けて貰いましょ。後使えそうな具材は……」

「よくあるのはチーズとか、レタスやトマト等の野菜とか……あ!チリミートを使ってチリドッグとか!」

 アイオワが意見を出していくが……チリドッグか。あのピリッとしたトマトベースのソースを掛けて、ソーセージの肉の旨味とのコラボを楽しむ。そこにキリッと冷えた酒でもありゃあ最高だな。

「良いわね、ソースなら大量に作って置いておけるし」

 霞も乗り気だ。

「んじゃ、採用するか否かはべつとして取り敢えずチリミート作ってみますかね」



《タコスに!チリドッグに!チリミート》※分量:作りやすい量

・牛挽き肉:300g

・ホールトマト:1缶(450g)

・玉ねぎ:1個

・ニンニク:1片

・オリーブオイル:大さじ2

・塩、コショウ:少々

・白ワイン:1/3カップ

・チリパウダー:適量

※その他、オレガノ、クミンシード、パプリカパウダー、チリペッパー、カイエンペッパー等も合うぞ!




 さて、チリミートとは言ったものの要するに『チリコンカン(チリビーンズとも)』から豆を除いた物だ。チリコンカンってのはテクス・メクス料理(アメリカ生まれのメキシコ風料理)の1つで、挽き肉と野菜や豆をトマトソースとスパイスでピリ辛に煮込んだ料理で、『刑事コロンボ』の主人公、コロンボの大好物だったりする。

話が逸れたな。作り方だが、鍋(またはフライパン)にオリーブオイルを引いて熱し、粗みじん切りにしたニンニクを炒める。

ニンニクの香りが立ってきたら挽き肉を加えて更に炒める。肉の色が変わったら、塩、コショウで味付けしてみじん切りにした玉ねぎを加える。

スパイス類を加えたら全体をかき混ぜて馴染ませ、水200ccと白ワインを、ホールトマトを加えて煮込む。

「後は煮込んで味が馴染んで、味見をしてから味の調整したら完成だな」

「意外と簡単なんですね」

「手軽に作れるのがウリだしな。それに、家庭によって味が違うってのもある」

 使う挽き肉も牛・豚・鶏以外でも七面鳥や羊肉を使う事もあるらしいし、ベジタリアン向けに肉を使わないタイプ、セロリやニンジンなんかの香味野菜を効かせてみたり、隠し味にバーベキューソースやシナモンチョコ、インスタントコーヒーなんかを隠し味に使ったり……工夫を挙げていくとキリがない。

「……なんかカレーみたいね」

 霞の呟くような一言が聞こえる。地域独特のレシピなんかもあるからな。近いものがあるかもしれん。
 

 
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