戦国異伝供書
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第十三話 青と赤と黒とその二
「その時はな」
「はい、万福丸とですね」
「娘達もな」
子供達のこともだ、長政は話した。
「宜しく頼むぞ」
「承知しております」
「必ず帰って来る、しかしな」
「この度のお相手」
「武田家それに上杉家じゃが」
「天下無双の強さですね」
「どちらも非常に厄介じゃ」
そこまでの敵だとだ、長政は市に強い声で述べた。
「敵になるとな」
「左様ですね、では」
「わしも必死に戦う」
武田家そして上杉家と戦う時になればというのだ。
「そして義兄上にな」
「勝ちをですね」
「もたらしたい」
「左様ですね、万が一の時は」
「わしも出る」
出陣、またこの話をした。
「そして戦うぞ」
「わかり申した。しかし本願寺の次はですか」
「すぐに武田家、上杉家が動くとはな」
「兄上も大変ですね」
「それも天下統一の為じゃな」
まさにこの為にとだ、長政は述べた。
「それを果たすまではな」
「戦はですね」
「終わらぬ、そしてわしもな」
「戦にですね」
「向かう、しかし思わぬことになったのう」
ここでこうも言った長政だった。
「わしもな」
「といいますと」
「うむ、万福丸にじゃ」
市との間に生まれた子のことだった、彼が今話すのは。
「茶々、初、江とな」
「娘もですね」
「三人も生まれるとはな」
「子宝にもですね」
「恵まれておる、まさにな」
このことはと言うのだった。
「実によいことじゃ」
「そう言われますか」
「わしは果報者じゃ、ではその果報に報いる為に」
是非にと言うのだった。
「義兄上の天下統一の為にな」
「働かれますね」
「そうする、そして今は茶を飲みたいが」
「お茶をですか」
「今から飲むか」
「では私が」
市は微笑みそしてだった、周りの者達に茶の用意をさせて自ら茶を煎れてその茶を長政に出した。長政はその茶を飲んでだった。
笑みを浮かべてだ、こう言ったのだった。
「よい茶じゃ」
「そう言って頂けますか」
「何か煎れ方がよいが」
「実は幼い頃に爺に手ほどきを受けまして」
「平手殿に」
「はい、爺は数寄者でして」
茶道に親しんでいる、そうした者だからだというのだ。
「兄上に茶を教えて」
「そなたにもか」
「教えてくれたのです」
「そうだったか」
「当家にお茶好きが多いのは」
何といってもというのだ。
「お酒が飲めないということもありますが」
「平手殿のこともあって」
「左様です」
「そうであったか」
「それで爺は今もと聞いています」
「茶の道にか」
「親しんでいると」
まさにというのだ。
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