戦国異伝供書
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第十三話 青と赤と黒とその一
第十三話 青と赤と黒と
長政は再び織田家に加わり今は小谷城の修繕を急がせていた、その彼のところに織田家の使者が来て彼に告げた。
「小谷城の修繕とか」
「はい、殿が銭を手配致すとのことで」
「それでか」
「はい、それでです」
まさにというのだ。
「人もこれまで以上に雇い木や石もです」
「揃えてか」
「修繕に当たって欲しいとのことです」
「では」
その話を聞いてだ、長政は鋭い声で述べた。
「それがしそして浅井家はここでは」
「いざという時にです」
「後詰としてじゃな」
「小谷城にいて欲しいとのことです」
「上杉家じゃな」
「そして武田家にも万が一の時は」
この家についてもというのだ。
「後詰としてです」
「岐阜城に籠られる義兄上をか」
「お助けして欲しいとのことなので」
「だからじゃな」
「これまで以上に急いで頂きたいとのことです」
小谷城の修繕、多くの兵や兵糧、武具を治めるそこをというのだ。
「宜しいでしょうか」
「わかった」
長政は使者に強い声で答えた。
「ではな」
「その様にお願いします」
使者は長政に伝え終わるとすぐに岐阜に戻った、長政はその使者を見送ったが彼の下に置かれた金や銀はかなりのもので。
長政はその多さに驚き家臣達に見せると彼等も驚いて言った。
「これはまた」
「随分と多いですな」
「この金と銀で人を雇い木や石も揃え」
「城を早く修繕せよとのことですか」
「その様じゃ、若し武田家や上杉家が迫ればな」
その時のこともだ、長政は家臣達に話した。
「我等に働いて欲しいとのことでな」
「それで、ですか」
「ここまでの金や銀を送って下さいましたか」
「城の為に」
「先の一向一揆の平定でも随分と褒美を頂いたが」
長政はこの時のことも話した。
「それに加えてだからのう」
「左様ですな」
「ここまでのものを頂くなぞ」
「かえって申し訳ありませぬ」
「まことに」
「そうであるな」
長政はまた言った。
「これはな」
「はい、それでは」
「このことはですな」
「かえって恐縮しますな」
「ここまで頂くと」
「全くじゃ、ではこの金や銀に応えてな」
是非にと言った長政だった。
「城は早く修繕しよう、そしてな」
「織田家に危急のことあらば」
「すぐに駆け付けましょうぞ」
「何があろうとも」
「そうするぞ」
こう言ってだ、長政は城の修繕を信長から贈られた金や銀を使い急がせた。そうして織田家のいざという時の後詰になる用意も進めた。
そしてその城の中でだ、彼は市にも話した。
「城の修繕を急がせているが」
「このことはですね」
「うむ、戦に備えてじゃ」
まさにそれが為にというのだ。
「それでじゃ」
「そうしていますな」
「その通りじゃ、若し何かあれば」
「殿は再び」
「戦の場に出るやもな」
こう市に話すのだった。
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