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レーヴァティン

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第七十三話 出発その二

 一行はまずはマルセイユに向かった、セビーリャからマルセイユまで行く途中の道は途中までは平たんだった、だが。
 山脈に入った、久志はその山脈を仲間達と共に歩きつつ周りを見た。この山脈は荒涼として草木は少なかった。
 その荒涼とした様を見回してだ、彼は仲間達に言った。
「山に草木がないとな」
「寂しいっていうんだな」
「ああ」
 芳直にこう答えた。
「どうもな」
「日本だとな」
「山は森だからな」
「そう言っていいからな」
 山は草木に覆われている、日本ではこう考えられている。しかしそれは実はどうかというかというのだ。
「日本だと。しかしな」
「この島も森多いんだがな」
「ここの山脈は違うな」
「そうだな」
「前もこうした山行ったけれどな」
 久志は淳二を見つつ彼に縁があったその山のことを思い出した。
「それでもな」
「そうした山は好きじゃないか」
「山は草木、特に木がないと駄目だろ」
「駄目か」
「ああ、若し大雨なんか降ったらな」
 その時はというのだ。
「すぐに土砂崩れになるしな」
「木が水を吸ったり止めたりしないからな」
「それでだよ」
「山に木は必要か」
「林業になるしな」
 この産業のこともあるからだというのだ。
「だからな」
「山には草木か」
「それがないとな」
 どうしてもと言うのだった。
「ここにだってな」
「それじゃあ植林も大事だな」
「ないなら植えろか」
「そうだろ、だからな」
 それでと言うのだった。
「俺達が旗揚げして政もしていく様になったらな」
「植林もか」
「しないとな、しないならな」
 その場合どうなるかもだ、芳直は話した。
「ここみたいになるからな」
「荒れ地になるか」
「昔のギリシアやスペインも緑は多かったんだよ」
 今は岩が目立つ国土だが、というのだ。
「それがな」
「木を切っていってか」
「そうしていってな、木がなくなってな」
「ああなったんだな」
「だからな、こうした場所もな」
「まずはか」
「植えることだよ」
 そうすることが大事だというのだ。
「ないならな」
「そうすればいいか」
「ああ、あとな」
「あと?」
「ここも多分だけれどな」
「昔は草木が多かったんだな」
「山の近くに村多かったよな」
 芳直はこのことにも言及した、実際彼等が今進んでいる山脈の傍には村が多い。どの村も見事な田畑や牧場を持っている。
「あの村の人達がな」
「この山脈の木を切っていってか」
「なくなったんだろうな」
「そうなったか」
「何でもなくなるものさ」
 ここでだ、芳直はこうも言った。
「木だって何でもな」
「結構でかい山脈だけれどな」
「その山脈を覆う森だってな」
 つまりそこにある木々もというのだ。 
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