繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
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06.そうだ、刑務所に逝こう。
第26話
前書き
フラン視点(途中から琴葉視点)
琴葉を首領室に招き、窓辺で話しをする。
外には水城君が待機しているため、屹度怪しい話があったら直ぐに飛び込んでくる。まぁ、記憶が消えていない聖月さん達も居るから、如何にか止めてくれるだろうが。
「…………有難う御座いました。私を殺してくれて」
「否、悪かった。君の命を軽く見てしまったんだ……」
「いいえ、そんなこと無いです。全て、私の為でしたからね……嬉しい限りです」
以前と変わらず、可愛らしい笑みを浮かべる琴葉。でも、今は何処か儚げな感じがする。
「君は……彼等に忘れられて、悲しいだろう?」
「………悲しいっちゃ悲しいですけど、もう慣れっこですから」
矢っ張りだ。今にも消えてしまいそうな感じがする。
「でも、ねぇ…………」
命が終わる瞬間を沢山見てきたから、確信できる。
「私は、此の世界に忘れられたとしても、貴方が覚えていてくれるなら、其れ以上に嬉しいことは屹度有りませんよ」
以前の私が聞いたら、直ぐに舞い上がって、抱き付いていたと思う。
だけど、今の此の言葉は、別れの言葉にしか聞こえなかった。
「貴方が生きていてくれさえすれば、私は幸せです」
窓から入ってきた風が、彼女の髪を揺らす。
「貴方の幸せ以上に欲しい物は在りません」
綺麗な髪を耳に掛け、彼女は微笑んだ。
「愛してます、フランさん」
彼女は其れを言って直ぐに、椅子を立った。そして、部屋を去ろうと扉の方へ向かってしまう。
何がしたいかは全て分かった。
彼女に今にも死にそうな雰囲気がある理由。
別れの言葉に聞こえた理由。
「未だ逝くのは許さない………」
私は彼女を抱き締める。
先程、私が消えかかった琴葉との記憶を思い出したことにより、琴葉の願は果たされたのだ。
後は大切な場所で死ぬ。
其れが琴葉の残された使命。
「未だ、死なせない…………君を、愛してるから」
気付くと涙が溢れていて、視界がぼやける。
彼女の躰も細かく震えていて、力が入っていた。
◇ 琴葉視点 ◇
「ねぇ、ラル」
私は、私が前使っていた執務室で寛いでいるラルに声を掛ける。
「……何ですか?」
「怒ってる?」
「………………………………怒ってません」間隔を開けてラルが返す。あ、絶対怒ってるやつ。「別に、貴女が何をしようと、貴女の勝手ですから」
「じゃあ…………」
言葉を止める。ラルに怒られそうで恐ろしいのが半分、私が勝手に死なないように外で待機している構成員達が突入してきそうで恐ろしいのが半分。
此処で下手なことを言ったら、最悪死ぬ。
まあ言うけど。どうせ死ぬんだし。
「私、未だ生きていたいって言ったら、許してくれる?」
驚いたように目を見開き、此方を見るラル。構成員達は突入してこない。挟み撃ちは回避と。
「………………………………許し、ま……すけど?」
擦れた声で言うラル。………そんなに意外かな?
「貴女……此れから二十四時間以内に死ぬんですよ………? 僕が喋っている、今此の瞬間かも知れませんし…………」
「死ぬまでに、生きる方法を考える。そうすれば、此れからもずっと、ラルとグレースとも一緒に居られるよね」
…………我ながら、恐ろしい言葉である。言葉のチョイスが可笑しいよね。
予想通り、ラルは顔を真っ赤に染めている。
「別にっ、君を照れさせる気は無かったんだけどねぇ。ふふふ、面白いやつ」
私は明るい表情で執務室の扉を開ける。すると、途轍もない真顔で涙が待っていて、真顔を返したくなるが、敢えて無視。扉を閉めて、執務室から少し離れてから。
「………………くそっ」
廊下の壁に強く拳を打ち付け、額を付ける。
先程、生きたい宣言を為てから骨がキリキリと痛み出した。頭痛が為て、目眩が襲ってくる。大型トラックに轢かれたような衝撃が、四方八方から襲ってくる。
「何だよっ………死ななきゃいけない使命とか…………」
私は小さく呟き、再度廊下を歩き始めた。
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