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繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
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06.そうだ、刑務所に逝こう。
  第25話

 
前書き
フラン視点 

 
「いやぁ、晴れって何か良いよね」
「確かに」
「それに、早朝の涼しい空気」
「はい」
「良いよねぇ」
「良いですよね」

 私の最高の遊び相………話し相手のレン君と会話をしながら、のんびり水城君と七星君を連れて、私は外に出た。
 そう言えば、私が外に出るのは久し振りだった気がする。

 何時だっけな、最後外に出たのは。
 あの夢の中では、三人目の幹部に沢山連れ出して貰っていた気がするが、現実に彼の幹部は存在しない。只の、夢に出て来ただけの人だ。
 嗚呼、確か白猫との戦争が最後だ。

「皆さんは、彼の三人目の幹部の事、どう思って居るのですか?」ふとレン君が問う。
「居てくれたら嬉しいねぇ」私は答える。
「あまりにも関わりにくい奴だったら屹度引き籠もって生活する」水城君が遠い目を為ながら答える。
「私的にも、居てくれたら嬉しいですよ」七星君が優しそうに微笑みながら答える。

 まぁ、そんな感じか。予想していた通りと言えば予想していた通りだ。

「此の世界に実在する人だったら良いのになぁ……」

 ぽつりとレン君が呟く。水城君と七星君は気付いていない様だったが、私にはばっちりと聞こえている。




「………あはは…………へぇ、そうなんだ! 私も………てみよっかなぁ…………」
「………無いと思いますけど………ろ、首領ら……ですが…………」
「…………ぶない事だけは………いでね?」




 前方から途切れ途切れ会話が聞こえてくる。声的に三人、男性二人と女性一人だ。話し声が段々大きくなってくると言うことは、近付いているのだろうか。


「……落下死の感触? ………知る訳無いじゃん」
「否でも、あの落ち方………躰の曲がり方は可笑しい何処じゃ無かったですよ」
「病んでる人が破壊した人形かと思った」
「そんな酷かったのっ!?」


 段々と近付いてくるなぁと思ったら。


「…………おっと」

 路地裏から出てきたじゃ無いか。ぶつかりそうだったから、思わず支えちゃってるし。
 って、此の女性に見覚えがある様な…………

「あ、済みませ」
「美しいお嬢さん、何処かでお会いした事、在りましたっけ?」

 後ろでレン君が慌てているのが分かる。七星君もだね。で、水城君がドン引きしてる。後で仕事増やしてやる。

「え、いや……その………」


 あれ、何処だ?
 何処かで会った気がするんだ。
 先が白い黒髪に、深い黒の瞳。
 何処かで……何処かで会った気がする。

 何処だ、何処だ何処だ何処だ?


"………思い出した?"


 彼女の口が小さく、そう動く。私は観察眼は良い方だから、少しの動作でも見落とすことは無い。
 彼女はさっき、間違えなくそう言った。































「"琴葉"…………?」































 ぽつりと、自分にも聞こえるか微妙な程小さな声で、私は言った。

 夢に出て来た彼の三人目の幹部、否、昨日私が殺してしまった、大切な彼女の名を。


「思い出し、た…………んですか?」


 小さくそう聞こえて、私は確信する。

 彼女は黒華琴葉。黑猫幹部で猫の頭領、私の最高の部下で、一番優秀であり、時の旅人。


「琴葉………琴葉、琴葉ッ!!」


 反射的に躰が動き、思わず彼女の小さな躰を抱き締める。彼女の後ろで、キュラル君とグレース君が大変驚いたような表情を浮かべて、言葉を失っている。


「悪かった! 全て、全て、私が悪かった………」


 そして、自分の全てを掛けて彼女に謝罪をしようと為たときだった。











「首領、直ぐに其の女性から離れて下さい。其の距離では、守るモノも守れません」











 背後から冷静な水城君の声。レン君も七星君も、鋭い視線を琴葉へ向けている。


「……如何言う事なんだい? 琴葉…………」

 言葉が震える。

 ジリジリと近寄ってくる水城君の威圧感が、それはまた素晴らしい物で。


「…………私は、一度目に其の世界を訪れ、死ぬか、諦めた時、関わった人の記憶を少しだけ残しつつ消します。そして、二度目に其の世界を訪れた時、誰か一人が私の事を思い出すと、他の人の残っている記憶が全て消えるんです。つまり、今私が昨日まで此の世界に居た事を知っているのは、私の仲間を除いて、フランさん。貴方一人だけとなりました」


 私の所為で、私以外の人が琴葉を忘れたのか?

 だとしたら、私は…………



「フランさん、そんなに落ち込まないで下さいよ。私は、貴方に"分かって貰えて"、迚も嬉しいんですから」



 琴葉が細い腕を背中に回して抱き締め返してくれる。



「有難う御座いました。其れでは、さような…………」



 琴葉が言い掛けたところで、何か異変を感じたのか、琴葉の肩がピクリと上下する。

 直後。



「琴葉さあああああああああああん!!!!!」



 私の後ろから、聖月さんが走って来て、琴葉に飛び付いた。

「大丈夫ですか!? 昨日から居なくなったって聞いて………大丈夫ですか!!」
「あ、うん………大丈夫…………」
「全然大丈夫じゃ無さそうですよ!? す、少し休んで下さいよ………」
「………あ、うん…………何処で?」

「首領室に来ると良い」

「え!? 首領、大丈夫ですか!?」
「琴葉は私の知り合いだ。問題はないし、情報を言いふらすような人では無い」
「しかし………」
「大丈夫」

「ちょ、主!」
「え、あ、ちょまっ! ラルぅぅううう!? グレースぅぅううう!!?」

「僕達に無断で首領を連れ出すのは一寸見過ごせませんねぇ?」
「キュラル君が言った事なんて如何でも良い。私は、琴葉と話しをするんだ」

「あ、一寸待って下さい!! …………って、逃げ足だけは速いですね………チッ」
「ラル君、舌打ち怖いよー?」
「気持ち悪いですよ、その言い方」
「まぁ、主を連れて行かれたのは気に食わないけど…………」



 琴葉の手を引っ張って、二人から逃げていく。



「主の願を叶えてくれたんだから、其れで良い」



 最後にそんな声が聞こえた。



 
 

 
後書き
久し振りに聖月さん出て来た気がする………… 
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