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レーヴァティン

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第七十二話 大商人その二

「案外ね」
「商人の世界って能力主義かっていうと」
「案外男尊女卑なんだよね」
「こっちの島でもそうだね」
「そうなんだよね」
「それでだよな」 
 久志は二人にも応えて言った。
「十一人目の奴も結構な」
「苦労したみたいだな」
「女だからとか言われたりしてな」
「金貸しからはじまって」
 この商売からはじめてだ。
「そうしてね」
「色々苦労してな」
「今に至ったみたいだね」
「そうだな」 
 久志は源三に応えて述べた。
「こっちの世界でもギルドがあるんだな」
「このギルドが結構な曲者で」
「男尊女卑か」
「その傾向があるみたいだね」
 ギルドという組織自体にだ。
「こっちの島でも」
「女だとな」
「排他的になるみたいだね」
「そこな、俺としてはな」
「女の人でもだね」
「商売なんて実力主義だろ」
 だからだというのだ。
「お金儲けの才能があったらな」
「性別に関係なくだね」
「やっていっていいだろう」
「それはやっぱりね」
「理想論か」
「理想ってあれじゃない」
 源三は明るい口調だがシビアに現実を話した。
「時として理想に過ぎなくて」
「現実は違うか」
「現実には色々なしがらみがかかるからね」
 それでというのだ。
「それで時にはね」
「女だから駄目だとかあるってことか」
「そうそう、根拠はなくてもね」
「その根拠なくってのがな」
「君は嫌なんだね」
「どうもな、偏見だろ」
 それになるだろうとだ、久志は指摘した。
「そうだろ」
「うん、この場合は絶対にそうだね」
「女が出来ないとかじゃないだろ」
「商売はね」
「男だったら子供を産めとか言われたら無理だけれどな」
 女ならば子供を産ませろとなる、どちらの性別にもそれぞれの役割があるので相手の役割は出来る筈がないのだ。
「しかしな」
「そういう話じゃないから」
「いいと思うけれどな」
「案外性の壁はあるってことでござる」
 ここでこう言ってきたのは進太だった。
「要するに」
「いや、それはわかっているけれどな」
「本人の実力次第とは別の話になると」
「違うって思うけれどな」
「それが偏見でござるな」
「そういうのとは別にあってか」
「かつてアメリカでもあったでござる」 
 進太は自分達の世界の国の例えを出した。
「黒人リーグがあったでござる」
「ああ、聞いたことあるぜ」
 久志はそのリーグの名前を聞いてすぐに答えた。
「黒人だけのリーグだよな」
「メジャーとは別にあったでござる」
「黒人差別が強かった時代にあったんだな」
「戦後暫くもあったでござる」
 多くのチームが存在した、このリーグもまたアメリカのスポーツの歴史に名前を残していることは紛れもない事実である。 
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