レーヴァティン
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第七十二話 大商人その一
第七十二話 大商人
朝早くからだ、久志はサウナの中にいた。その中で彼は裸になって汗をかきながらこんなことを言った。
「効くな」
「酒が抜けてきているな」
「ああ」
隣にいる正に答えた、他の面々も共にいるが女達は女風呂にいるのでここにはいない。
「本当にな」
「そうだな、俺もな」
「酒が抜けてきているな」
「ああ」
その通りだというのだ。
「本当にな」
「そうだよな、やっぱり二日酔いにはこれだな」
「サウナだな」
「風呂自体がいいけれどな」
「サウナは一気に熱くなって汗をかくからな」
それも全身からだ。
「だからな」
「二日酔いには一番いいな」
「汗をかいてな」
そうしてというのだ。
「水風呂にも入ってな」
「身体を冷やしてまた入る」
「それを繰り返したらな」
「二日酔いなんて一発だ」
正は久志の横で表情を変えずに述べた、皆裸で腰に布を巻いているだけだ。
「本当にな」
「ああ、起きた時は死にそうだったぜ」
久志はこの時のことも話した。
「冗談抜きにな」
「顔にも出ていたぞ」
正は久志に顔を向けずこう述べた。
「もうな」
「今にもか」
「死にそうだった」
「二日酔いでな」
「本当にそうだったがな」
「今はどうだ」
「死人から生者の顔になっている」
久志のその顔を横目で見ての言葉だった。
「かく言う俺もだろうがな」
「ああ、御前今は喋ってるがな」
「起きた時は違ったな」
「何も喋っていなかったぜ」
久志も正に横目で話した、ただ彼の口元は笑っていた。
「その証拠にな」
「そうだったな」
「御前辛い時は喋らなくなるからな」
「言葉を出すだけで苦しい」
これが苦境の時の正だ、無駄口を叩かなくなりそうして冷静さを保ったままことにあたろうとするのだ。
「体調が悪くてな」
「それが今はな」
「喋っているな」
「この通りだ、身体を洗ってサウナに入ってな」
「一回水風呂に入ったしな」
「二度目になるとな」
サウナもというのだ。
「流石にな」
「身体の調子が戻ってきたな」
「そうだ」
その通りと言うのだった、正も。
「かなりな」
「いいことだよ、じゃあな」
「もう一度サウナに入りたい」
「それで完全にだな」
「酒を抜いてな」
そうしてというのだ。
「十一人目のところに行こう」
「そうしような」
「女性の大商人ってね」
ここで源三が言って来た。
「それって案外珍しいだよね」
「そうそう、これがね」
淳二も言ってきた。
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