DQ5~友と絆と男と女 (リュカ伝その1)
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70.諦めたらそこで試合終了って、安西先生が言ってた。
<エビルマウンテン-魔王の間>
ティミーSIDE
僕達は和気藹々と険しい山道を進み続けている。
周囲の景色は禍々しいが、僕等の雰囲気は楽しげだ!
「何かピクニックみたい!」
ポピーが楽しそうに感想を述べると、
「ポピー、違うよ。ピクニックってのは、もっと真面目にやるものだ!」
って。
おいおい!
しかし楽しい時間は終わりを迎えた。
僕等の正面に一人の老人が玉座に座っている。
コイツが魔王ミルドラースだ!
凄まじい威圧感を放ち、こちらを睨んでいる。
「ふっふっふっ…ようやく来たか…伝説の勇者とその一族よ」
見た目は貧相な老人…しかし、漂う邪気がとてつもない…
「我が僕を滅ぼし、よくぞここまでやって来た…その勇気に敬意を表し、私自らがお前らを滅ぼしてくれよう!」
ミルドラースから邪悪なオーラが放出される!
僕は堪らず後ずさってしまった。
みんなも先程までの楽しげなムードは吹き飛んでしまい、1歩2歩と後ずさる…
でも、お父さんだけが前へ踏みだしミルドラースを見据えて言い放つ!
「ゲマといい…お前といい…出来もしない事を言うな!クソじじい!!」
すごい!
お父さんは何時もと変わらない態度でミルドラースと対峙している!
「人間風情が…神をも超えた存在の私に大言を吐くな!!」
ミルドラースの凄まじい怒気が僕等を襲う!
「フ、フンだ!こ、こっちには勇者様が居るんだもんね!天空の剣を装備した伝説の勇者様が!」
え!?
「勇者様ー!あんなじじい、やっつけちゃってよ!!」
えぇぇぇ!!
まさかの丸投げぇぇぇ!?
「ちょ…お父さん…ズルイよ…そんなの…」
「リュカ!貴様、息子に全てを押し付けるとは…どういうつもりだ!!」
ピエールの抗議に、お父さんはキョトンとした顔で、
「だって、みんなビビてるじゃん!戦力としてあてにならないじゃん!じゃぁ勇者様に頼るしかないじゃん!」
「ふざけるな!!あんな老人一人、子供に頼る必要はない!!」
ピエールは言い終えると、もの凄い勢いでミルドラースへ斬りかかる!
そして他のみんなもそれに続く!
やっぱり凄いな…みんなミルドラースの威圧感に負けて闘志が萎えていたのに…お父さんには敵わない…
「心が負けたらお終いさ」
お父さんの言う通りだ!
僕等は勝つんだ!
勝ってみんなで帰るんだ!
僕もみんなに負けじと斬りかかる。
お母さんのベギラゴン。
ポピーのイオナズン。
スノウのマヒャド。
サーラのメラゾーマ。
それぞれ魔法を唱えて攻撃している。
プックルは稲妻を放ち、プオーンが激しい炎でミルドラースを包む。
ピピン、ドリス、サンチョ、ピエール、ゴレムスが剣や拳で連撃を与える。
ミルドラースはよろけ隙が出来た。
僕はチャンスとばかりにギガデインを唱えミルドラースに追撃を喰らわせた。
ミルドラースは身体から煙を放ち膝を付く。
「どうだ!お前なんかに負けるもんか!!」
僕は勝利を確信した!
「ふっふっふっふっふっ………」
だがミルドラースは笑っている!?
「な、何が可笑しい!?」
「哀れな者達よ。なまじ強いが為に、私の真の姿を見る事になるのだから…」
し、真の姿…!?
「プフー!!ダッサー!『今まで本気じゃ無かったんだからね!』って、ガキかお前はー!!」
お父さんがお腹を抱えて笑っている。
「では、その目に焼き付けて死ぬが良い!私の真の姿を!!」
言い終えるやミルドラースの身体が闇に包まれ、5倍以上に巨大化した!
巨大な目が3つ、巨大な角が3本、口は裂け腕はお父さんの胴回りとほぼ同じ、尻尾も同じくらい太い醜悪な化け物が姿を現した。
「さぁ…全員跡形もなく滅ぼしてくれようぞ!」
先程とは比べ物にならない程の邪気を放ち僕等を威嚇する。
「き、貴様など!!」
ピエールが戦陣を切りミルドラースへ斬りかかると、僕等もすぐ後に続く!
しかし、ミルドラースの凄まじい一撃が僕等を襲う!
突撃した僕等はミルドラースの太い腕に弾かれて、地面に身体を強く叩きつけられた。
マーリンがベギラゴンを唱える…が、魔法が弾かれマーリンに直撃する!
間髪を入れず、ホイミンがベホマでマーリンを回復した為、辛うじて命は助かったが、これ以上ミルドラースに魔法を使う事は出来ない。
お母さんとポピーがマホカンタを唱え、ミルドラースの魔法を無力化しようとする。
しかし、ミルドラースの手から凍てつく波動が僕等を包む!
僕等を守っていた魔法が全て無力化されてしまった!
「イオナズン」
次の瞬間、ミルドラースがイオナズンを唱えた。
僕等は皆吹き飛ばされ、致命的なダメージを負ってしまった。
「ベホマズン」
ホイミンのベホマズンにより身体の傷は癒えたが、ミルドラースに対する恐怖心は強さを増した。
僕は立ち上がる事も出来ず、ただミルドラースを見上げる事しか出来ないでいる…
僕の隣にお父さんが立っている…
お父さんはいつもの優しい口調で話しかけてきた。
「どうしたティミー?座っていたら、アイツは倒せないぞ!」
…倒す!?
アイツを!?
そ、そんなの…
「父さんがアイツの注意を引き付けるから、隙をみ「ムリだよ!!」
僕は俯き叫び出す。
「………ムリ…なのかい?」
「…ムリだよ…アイツには勝てないよ…最初から…勝てる見込みなんて無かったんだよ…」
「…じゃぁ…無駄な事をしていたのかな?みんな…」
「………」
僕はもう、何も答えられなくなっていた…
「そっか…無駄な人生だったのか…」
「お、お父さん…!」
「無駄に幼い頃から世界を旅し、無駄に父親を目の前で殺され、無駄に奴隷として生き、無駄に友の国を救い、無駄に結婚し、無駄に子供を作り、無駄に魔界へ赴き、無駄にここで死ぬ…」
お父さんは怒らない…ただ、悲しそうだ。
「(クス)ここまで無駄な事をしてきたんだ…僕は無駄に戦い抜くよ。最後まで!」
そう言って僕の頭を撫でると、お父さんは一人でミルドラースに襲いかかって行く。
お父さんはミルドラースの魔法をバギクロスで打ち落とし、太い腕から繰り出される打撃をすり避けて強烈な一撃をぶち当てる。
しかし、ミルドラースの硬い身体には傷一つ無く、お父さんの攻撃をモノともしない。
だがお父さんも、ミルドラースの攻撃を全てかわし、再三攻撃を仕掛ける。
お父さんがミルドラースの隙を付き、額の瞳へドラゴンの杖を突き刺した!
次の瞬間、ミルドラースの太い尻尾がお父さんの身体を強烈に弾き飛ばす!
お父さんの身体は地面を2度3度とバウンドして僕等の遙か後方で動かなくなる…
マーサ様が慌てて駆け寄り、ベホマを唱えて治療を試みる。
2度3度と魔法を唱え、その都度お父さんの身体は淡い光に包まれる…
しかし、お父さんは起きあがらない…ピクリとも動かない…
僕は…いや、みんな自分の目を疑っている…
だって…お父さんが死ぬ訳無い…
どんな時でも緊張感の無い、あの人が死ぬ訳無い…
「リュ、リュカーーーー!!」
横たわるお父さんの身体に覆い被さり泣き崩れるマーサ様…
「………うそ…だ…!」
僕は立ち上がり、お父さんを見つめていた。
ミルドラースに背中を向けて、ただお父さんの身体を見つめていた。
ティミーSIDE END
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