諦めないことが
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第二章
「君達は何も感じないのか!」
「何も?」
「何もっていうと」
「この村そしてこの国の惨状に!」
こう言うのだった。
「何もなくただ奪われ虐げられるだけの状況に!」
「領主様に奪われこき使われる」
「田畑のものも娘さえも」
「そんなわし等のことをか」
「そう言われるのか」
「そうだ、このままでは国も民も滅ぶぞ!」
男は叫び続けていた。
「これでいいのか!悪辣な領主に黙って従うのか!」
「そう言われましても」
「わし等何も持ってません」
「領主様には兵隊がいるんですよ」
「武器を持った」
「ですから」
「兵隊が何だ!あの者達が幾ら来ようとも私には勝てない!」
男は豪語もした。
「諸君等は戦いを知らない!しかしだ!」
「あんたはですか」
「戦いを知っていますか」
「そうなんですね」
「そうだ、私は諸君等の為にだ」
まさにと言うのだった。
「ここに都から送られたのだ」
「都から?」
「あそこから」
「どういうことなんだ?」
「総督府が出来たのだ」
都にというのだ。
「そこから送られた、この村を守る為に」
「えっ、そうだったのか?」
「新しい領主様か?」
「そうなのか?」
「役人達はすぐに来る」
この村にというのだ。
「だがその前にだ」
「今の領主様をか」
「どうにかしてくれるのか」
「そうなのか」
「そうだ、今から領主のところに向かい引っ立てる」
男は言い切った。
「見ておるのだ」
「まさか」
「領主様のところには兵隊がいるんだぞ」
「槍や弓矢を持っているのに」
「勝てる筈がないだろう」
「幾ら何でも無理だ」
「だから見ているのだ」
男はこう言うのだけだった、そして。
彼はすぐに領主の屋敷に向かった、ソライはそれを見てだった。
男のところに来てだ、こう問うた。
「貴方はこの国の者ではないですね」
「総督府と言ったな」
「はい、それは何ですか」
「私の国がこの国の都に置いたものだ」
「それも言われましたが」
「この国の王をお助けしてそのうえでこの国をあらためる場所だと思ってくれ」
こう言うのだった。
「我が国がな」
「そうなのですか」
「安心しろ、我が国はこの国の民を害する考えはない」
「それどころかですね」
「この国はどうなのだ」
男は前を見据えて領主の屋敷に進みながらソライに問うた。
「役人ばかりが肥え太り国と民はやせ細っている」
「だからですか」
「この国が大国に奪われればだ」
その時はというのだ。
「我が国も危うくなる」
「だからですか」
「我が国は二度の大きな戦に勝った、しかしこの国がまともでなければだ」
その時はというのだ。
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