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Fate/BBB ー血界戦線・英霊混交都市ー

作者:海戦型
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登場するたびに噛ませやネタ化するお気に入りキャラを見ていると心が痛むけどこれも一つの愛なんだよ、って短編

 
前書き
タイトルがやたら長いのは長い方が考えるのが楽だからです。
もっと分かりやすいタイトルにしろよみたいな要望があったら二つ返事で応じます。 

 
 
 ライブラに加入した面々の間でも、仲の善し悪しや付き合いの濃い薄いはある。

 ブーディカや頼光などのママ勢は当然の如くK・Kと盛り上がっているし、ケルト勢はザップと相性がいい。文豪共は自分の身の回りの面倒をギルベルトに当然の如く押し付け、チェインは女子系サーヴァントと普通に仲がいい。元々貴族のお坊ちゃんで教養の高いクラウスは知識人たちにはウケがいい。

 ちなみにシャーロック・ホームズは普段あまり仕事もしなければ役にも立たないので私立探偵事務所を開き、面白そうな事件が起きると現場にノコノコやってきてダニエル警部に凄まじく嫌な顔をされている。そして事件を解決に導かれて更に嫌な顔をされ、時々職質と銘打って連行されている。ある意味二人は仲良しである。

 しかし、所詮は異郷の他人。結局付き合いのあるのは同郷の者や故知の仲、という場合もやはりある。



 HLに来たジル・ド・レェはキャスターの方、つまり頭がおかしい方のジルである。
 ローテンションだった頃のジルは最初から召喚されていないのか、それともHLの毒牙にかかって人知れず消えたのかは定かではない。前にレオが調べたところでは、ジルと同じオーラを放つ英霊は確認されていない。

 そのジルであるが、彼は現在ライブラの一員として活動してる。
 いやいや待てよ、お前は秩序とか嫌いな側だろ、と思うかもしれないが、これには理由がある。

 理由その一。神に対する冒涜行為の意味が希薄化したから。
 ジルの非道徳行動は神への侮辱の為に行っているのだが、彼の宗教観からするとHLの存在そものが主への冒涜である。揃いに揃った邪魔外道の眷属共が跳梁跋扈するHLでは、既にジルの神への冒涜という行為が常に為されているようなものである。

 理由その二。ジャンヌ・ダルクはライブラに属していないから。
 ライブラメンバーはクラウスみたいなほぼ聖人からザップみたいな屑までいろんな人が属しており、その行動原理や求められるものがジャンヌと噛み合わなかったからだ。ただ、これはどちらかと言えばジャンヌが自分の所為で迷惑をかけたくないと身を引いている面もあり、K・Kやクラウスは個人的に彼女の手伝いをする事もある。彼女を知る英霊たちもそんな感じであり、別に孤独という訳ではないようだ。

 理由その三、ジャンヌ・オルタがライブラに所属してしまったから。
 ぶっちゃけ一つ目より二つ目より、これが一番大きいものだろう。そう、自らを悪と呼んで憚らないジャンヌ・オルタは正反対の筈のライブラに属している。理由は一つ、クラウスに勝つ為だ。

 ジャンヌ・オルタはクラウスに勝負を挑んで負けている。自らが最高の悪である事を証明する為に、この街で最高の正義と思われる人物に喧嘩を売った結果である。ジャンヌ・オルタは弱いサーヴァントかと言われれば決してそのような事はないのだが、実戦経験的な意味では少々貧弱な部分もある。そしてそれ以上にクラウスが素で強い。対人戦では殊更強い。ジャンヌ・オルタは一方的に叩きのめされた挙句、ジャンヌに「根は決して悪い子じゃないんです!」と必死に説得されて座に還るのを免れている。
 この時のオルタの羞恥と屈辱たるや。人間だから楽勝楽勝と甘い見積もりで挑んだ相手がスパルタクスより重装歩兵みたいな男であったこと。オリジナルに助けられたこと。その二つが重なったジャンヌ・オルタは一つの結論を出した。

「私に情けをかけた事、絶対に後悔させてやるわ、オリジナル!そしてそこの強面十字架男!アンタは必ずこの私が殺すッ!!」
「いつでも来給え。私は逃げも隠れもしないし、君が誇りにかけて戦いを挑むのならば私も拳を以てして応えよう」

 ここまでは普通の宣戦布告だったのだが、この後のレオとザップの迂闊な言葉がまずかった。いや、別の視線で見ればファインプレーだったが。

「まぁライブラは秘密結社なんで、ライブラメンバーじゃない人は正々堂々クラウスさんに会いに来れないんですけどね。物理的にセキュリティに引っかかって」
「とするとアレか。いつ来るか分からない旦那を待って巌流島の小次郎状態か。或いはハチ公」
「誰っすかコジローって。ハチ公は映画で見たことありますけど」

 相変わらず変な所で日本知識を持っているザップはさておき、ジャンヌ・オルタは「え?」という顔をした。彼女は知らなかったのだが、秘密結社ライブラの本部はライブラのメンバーしか侵入できないように超高度なセキュリティが施されており、侵入するには見えない防壁を潜って窓から侵入するとか、内部から破壊されたタイミングを見計らうとか、ライブラの人間に直接招いて貰うとか、とにかくジャンヌ・オルタ自力では無理な方法しかなかった。

 ――ちなみにこのセキュリティ、月のアルターエゴ達やBBでさえ電子戦での突破は不可能である。何故ならHLから言わせれば彼女たちの性能がポンコツだから。一日でも自己改造を怠ると2世代ほど置いていかれそうな技術革新が繰り返されるHLは彼女たちに冷たかった。尤もそれは、正当な「切磋琢磨」の関係と言えなくもないのだが。

「ちょ、何よそれ!逃げないとか言いつつ自分は安全圏に引きこもる訳!?」
「あー……連絡先でも交換して待ち合わせすればよくないっすか?」
「女子高校生か!何で私が宿敵の電話番号知ってるような関係になんなくちゃいけないのよ!」
「ンだよメンドクセー小娘だな。旦那はお前みたいなのにいちいち構っていられる程暇じゃねーんだよ!」
「アンタは1日1回は挑んでますけどね」

 怒り狂うジャンヌ・オルタをよそに、どうすればいいか思案を巡らせていたジャンヌに(久しぶりに)天啓が下りた。

「つまり、クラウスさんに正々堂々リベンジするにはライブラの一員となって働かなければならないという事ですねっ!!」
「はぁぁぁぁぁぁッ!?!?そいつライブラのリーダーでしょ!?倒す為に部下になるって、そんな尻尾を振るような真似を私にしろっての!?」
「じゃあどうします?仮にあなたがクラウスさんを超すほど強くなったとして、クラウスさんにどうやって会いますか?雨の日も風の日もクラウスさんを探し回って街をうろうろしますか?それともボヤ騒ぎでも起こしてクラウスさんの気を引こうと必死に悪事を働く気ですか?前者は格好悪いですし、後者も小物っぽさがありますよね。何なら……レオ君に仲立ちでもしてもらいますか?貴方がどう思っているかは私からはなんとも言えませんが、人に頼るのも立派な手段ですよ?」
「うっ、ぐぅぅぅ……!!」

 オリジナルがイエスと言えば自分はノーと言いたくなるし見栄っ張りな所もあるジャンヌ・オルタの性格をある程度理解した上でのこの発言は、段々とオルタの選択肢を縮めていった。更にライブラきっての天然さんなクラウスによる無自覚の追撃が入る。

「私は個人的に園芸を嗜んでいるので、同じ園芸クラブに通えば定期的に会うことはできる。あとはオンラインでチェスをやっているので、フレンドになれば……」

 この時、オルタの脳内に二つのイメージが浮かぶ。

『植物はいいわねぇ、癒されるわ!今度新しい庭を造ってみようと思うんだけど……あ、そうだ。明日の昼ぐらいにリベンジマッチを挑んでいい?』
『承った。その時間は空けておこう。それで、新しい庭と言ったが一体どんな植物を……』
『今度は食人植物オンリーを目指してみたの!きっとクラウスも気に入るわ~』

 イメージその二。

『いやぁwwwクラウス氏強杉wwwもう52戦全敗でわたし泣きそうwwwwあ、ちなみに来週リベンジマッチしたいんだけどスケジュールおk?』
『承った。その時間は空けておこう。それにしても、君も随分強くなったと思うぞ。まだチェス歴半年とは思えない上達ぶりだ』

 若干変なイメージに浸食されているが、ねぇなコレとジャンヌ・オルタは思った。

 かくして、彼女はライブラの一員となったのである。ハッピーセットでジルも一緒に着いてきて。
 ちなみに二人とも結構真面目に働いている。なんだかんだで妥協できない二人であった。

「今日こそ覚悟しな旦那ぁッ!……ハブッ!?ちょ、待っ、グボォッ!?」
「ハッ!銀ザルが猿の一つ覚えみたいに情けなく負けちゃって!この憤怒の魔女が一丁お手本を……ドブハァッ!?ちょっ、手加減しっ、ぎゃあああーーーーッ!?」
「まーたやってますよ、あの二人。凝りませんねぇ」
「駄目ですよレオ君。片方は猿の反復行動、もう片方はきちんと人の尊厳を持っています。同列に語るのは彼女に失礼です」
「聞こえてんぞ半魚人!先輩に対してその態度は何だ、なます切りにすんぞオラァ!?」
「魔女であるこの私に尊厳とかそういうオリジナルが好きそうな言葉使わないで欲しいんですけどーッ!!串焼きにするわよこの半魚人ッ!!」
「精神レベルが同等っすね」
「ささ、こちらへジャンヌ。このジル・ド・レェ、抜かりなく戦闘記録は録画していますぞ?」
「いたた……あったりまえよ!絶対にあの顔面凶器に吠え面かかせてやるんだからッ!!」

 ここは現世と異界の入り混じる街、ヘルサレムズ・ロット。
 誰よりも絶望的な力を前に、誰よりも人間の可能性を信じる者たちが集う。
  
 

 
後書き
HLの事件って基本バイオレンス現行犯だからホームズの出番あんまりないんじゃないでしょうか。

厳密に考えるとジルが神を冒涜するのはジャンヌのため的なアレな気もするのですが、オルタが絡んでるならその辺はカットでいいかと飛ばしました。個人的にはZeroのジルさん知ってるとFGOのジルは日和ったなぁ、と感じないでもないです。 
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