レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十話 セビーリアに向かいその十一
「そして仏教も廃仏毀釈運動が起こりましたが」
「それも収まってな」
「そのまま存在しましたし」
「無茶苦茶酷くはなかったな」
「宗教弾圧でもかなり穏やかな部類でした」
戦前の日本の宗教弾圧はというのだ。
「しかしそこからです」
「政治が宗教に介入するのを止める為だってか」
「日本では考えられる様になりました」
政教分離が何故必要か、その考えの基にある考えはそれであったのだ。
「ですが」
「それが違うってことか」
「はい、その実は」
「宗教こそがか」
「政治に関わらないことがです」
「大事だっていうんだな」
「危機は政治の暴走により起こるだけとは限りません」
第二次世界大戦後日本の知識人達は政治だけが権力と考えその権力が暴走する危険性だけを言っていた、これも大戦の反省とやらだ。
だがその答えは戦後五十年で見事に出た、ある宗教団体のテロ事件だ。この時も多くの知識人達は政治だけが権力と考えその暴走の危険性だけを言い自分達の無力さと無能さを露呈させてしまった。そうした意味でもこの事件は画期的だった。
「宗教が暴走して」
「そしてだよな」
「十字軍や三十年戦争、異端審問の様な事態に至りますから」
「そうしたことを避ける為にな」
「宗教は人の心であり救いです」
それになるものだというのだ。
「そして倫理にもなります」
「けれど政治にはな」
「関わらせず」
そしてと言うのだった。
「そのうえで、です」
「政治は政治でバランスを保ってやっていくべきだな」
「そうです」
まさにとだ、順一は久志に答えた。
「それが大事です」
「まことにでござるな、それがしはカトリックの騎士団にいたでござるが」
進太もまた言ってきた。
「やはりでござる」
「島全体を治めるとなるとな」
「特定の宗教そして思想の影響を受けることは」
「駄目だな」
「騎士団もでござる」
進太がいたこの騎士団もというのだ。
ページ上へ戻る