喰種の少女は麦わらと共に
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白髪の少女
前書き
一話
〜 喰種 〜
人間を主食とする生き物。人間の食べることが出来る食べ物は喰種に取っては毒であり、吐くほど不味く、食べすぎると腹を下す。
見た目は人間と変わらないが、捕食や戦闘を行う際その目が赫々とした赤色に変わる。この目のことを赫眼と呼び、人を狩るための武器を「赫子」と呼ぶ。
赫子の種類は4つ。
羽赫。肩の辺りからはえてくる翼のような形をしている赫子。結晶を飛ばすことが出来るが持久力はない、近距離遠距離型。
鱗赫。腰の辺りからはえてくる鱗に覆われた触手のような赫子。4つの赫子の中で最も攻撃力が高いが1番脆い、中距離型。
甲赫。肩甲骨の辺りからはえてくる金属質な赫子。防御力が最も高いがスピードは遅い、近距離型。
尾赫。尾てい骨の辺りからはえてくる尻尾のような赫子。弱点らしい弱点がないが決め手に欠けるのが弱点、中距離型の4つの種類がある。
喰種には人間の数倍の筋力と内蔵を潰されても完全再生できる強靭な再生力があり、嗅覚をはじめとする感覚器官も優れている。
その喰種を狩る為の喰種専門の警察、喰種捜査官と呼び"クインケ"と呼ばれる喰種の赫子から作り出した武器で討伐する。
それでも赫子が与える戦闘能力も相まって、クインケを持っていない生身の人間では、なすすべもなく殺されるしかない。
しかし、赫子をうまく扱えない喰種が相手であれば、生身の人間であっても常人の数倍のパワーを発揮できる者ならば、対抗することが可能である。
喰種とは人を喰らう人間である。
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街灯やネオンの明かりが暗い一本道をぼんやりと照らす。冷たい雨が音もなく降りそそぎ、走るたびに水溜まりの跳ねる音は暗闇に吸い込まれるように小さく音を立てた。
「いたぞ! こっちだ!!」
後ろから捜査官の声が聞こえ、慌ただしい足音がいくつも聞こえる。
「はぁ……はぁ……」
小さく白い息を吐き出し長い髪をなびかせ少女は走る。一本道を走っていると脇道に扉を見つけ、すぐに部屋に入り扉のすぐそばでじっと息を殺し捜査官が過ぎるのを待つ。
「クソっどこに行った!?」
「Aレート 白龍 あいつを逃すのはまずい、必ず見つけ出すんだ!」
部屋に隠れていた彼女は手に小石を持ち、扉の隙間から小石を遠くへ投げる。
「音がしたぞあっちだ!」
捜査官数人が小気味よく足音を鳴らす。扉に耳をつけ耳をすませると、徐々に足音が聞こえなくなっていった。
少女はほっと一息つき扉を背に座り込んだ。
「……お腹空いたな」
と少女が呟いた直後、ふと背後に殺気を感じすぐに扉から離れる。
次の瞬間、鋭利な刃物が扉から飛び出しゆっくりと扉を斜めに切りさく。ゆっくりと扉が倒れ、1人の喰種捜査官が入ってきた。
「やぁ……何やら喰種の匂いを感じ取りましてここに来たんだが…君が白龍でよろしいかね?」
暗い雰囲気を持ち、猫背で、常時、手に白い手袋をつけていた。その捜査官の頬を白い尾赫が過ぎ去る。
「おやおや手癖が悪いようだ」
「尻尾癖だよ。私はまだ捕まるわけにはいかない」
「人が生きているのに罪は無いが、喰種は生きてるだけで罪。君は私のクインケにしてあげよう」
喰種と捜査官との戦いが始まる。お互い1体1での勝負、力が拮抗し長引くかと思われていた勝負は、すぐに決着がついた。
「…うぅ……」
体中が傷だらけになり、壁を背に座り込む少女。その様子を見て捜査官は拍子抜けしていた。
「Aレートの割にあっさり倒せてしまったな」
「……な…んで……なんでお前が…その赫子を持って……」
肩で息をし途切れ途切れに言葉を繋げる。その少女の目は真っ直ぐに捜査官の手を見つめる。その手には1つのクインケが握られていた。
「あぁ、これか? 何故かは知らないが、Sレートの喰種の死体があってな。私が有効活用させてもらったよ」
「ふざけるな……彼はちゃんと私が…」
「君の推察どうり。死体は埋まっていたさ、そこから君の居場所がバレたというわけなんだがね」
コイツまさか…墓を?
「……この外道が…地獄に落ちろ!!」
尾赫で攻撃を仕掛けるが、捜査官が手に持っていたクインケを前に出すと尾赫の攻撃が止まる。
「っ!!……」
頬を伝う一粒の涙が床へと落ちる。
私はどうして殺されるの?
私が人間だったら殺されてなかったの?
どんなに人間らしく振舞っても……どれだけ人間の食事を美味しそうに食べれても…喰種だからという理由で殺されるの?
なんで? どうして? わたしには分からない。
もう……疲れた。
「殺して……」
力なく倒れこみ。乾いた地面を見つめる。
「さっきとは言っていることが違うが……まぁいいだろう。君の赫子からどんなクインケが出来るか楽しみだよ」
ゆっくりと近づく捜査官、死を待つ喰種は悲しい眼差しで天井を眺めていた。そこは建設途中のビル、床などなく風が吹き抜け上を見上げると雨が降っていたはずがいつのまにか止み、空には星が輝いていた。
雨で湿ったアスファルトの上を、鮮血が生き物のように進み一定の砂をゆっくりと運ぶ。瞼がゆっくりと閉じていく中、彼女が最後に見たのは彼女の隣に咲いていた黄色いユリの花だった。
浜辺に横たわる1人の少女、白い髪は波に揺られ腰から下は波に浸かる。その少女の目の前には鬱蒼と茂った森。
瞼の裏に強い光を感じ、意識を取り戻した少女はゆっくりと瞼を開き、辺りを見渡した。
「ここは?」
確か……そうか、私……死んだんだ。
ここは地獄? でも地獄にしてはのどかな場所だ。天国というわけでもあるまいし……とりあえず誰か他に人がいないか探そう。
でも、体のいたるところが痛いな。戦ってた時の傷がまだ響いてる感じだ。
「…!!」
「……こで」
どこかから声が聞こえる……とりあえず森の中から様子を見よう。
「この島で少し休憩しましょうか」
「ナミさん! サンジ特製ドリンクはいかが!」
「森があるみたいだな」
「そうだなって……ん?なんか妙に静かだな。ルフィお前だったら冒険しようぜって言いだしそう……もういねーじゃねぇか!!!」
浜辺には美人な女の人とぐるぐる眉毛の金髪の人、緑色の髪の怖い顔の人と鼻の長い人がいる。あと停泊している一隻の帆船、マストには麦わら帽子を被ったドクロが書いてある。
帆船なんていつの時代? あれは海賊船とかいうやつなのだろうか? 怖い顔の人もいるしひとまず離れておこうかな。
一方のその頃、麦わら帽子を被った男は陽気に歌を歌いながら森の中を歩いていた。
「ふ~ん、ふ~ん南の~島~は~あったっけ~♬パイナップルプルあったまぽかぽかアホば~か~♬ ん?なんだあいつ、尻尾生えてる!すげーーイカす!!」
麦わら帽子の男は、遠くにいる白い尾を使い木からリンゴを1つ取っている少女を見つけ、目を輝かせ走り出した。
浜辺から離れたはいいけど、お腹空いたな……あれで、いいか。
よし、取れた。どうせ不味いだろうけど、ひとまずこれで飢えを…あれ? どうしてこれで飢えを凌ぎるって思ったんだ? まぁ、いいか。今はこれを食べて……
「おいお前、おれの仲間になれよ!!」
男はバシッと音を立てて少女の背中を叩く。叩いた衝撃で一口サイズの歯型がついたリンゴが、少女の手から落ち地面をボールのように転がった。
「ゴホゴホっ……何?」
人間? いつのまにこんな近くに……さっきの人達の仲間にしてはあんまり怖そうな顔してないし、嫌な感じがしない。
「あ、悪りぃ!! リンゴ食ってるところだったのか、えーっと……よし!! 《 ゴムゴムのガトリング 》」
麦わら帽子の男は腕を伸ばし木にあったリンゴをいくつも取る。その様子を見て少女は目を丸くした。
「えっ?……腕が伸びた?」
「リンゴ悪かったな、ほらこれ代わりにやるよ」
麦わら帽子の男は木から取ったリンゴを受け取るが、少女は困惑しその場に立ち尽くしていた。
「あ、ありがとう。えっと……あなた一体何者?」
「おれはモンキー・D・ルフィ。海賊王になる男だ!! 」
「うん。名前しか分かんない」
とりあえず名前しか分からなかったから、木の近くに座り山積みになったリンゴを食べながら話していたんだけど、この麦わら帽子の人ーーー ルフィいわく、悪魔の実っていう海に嫌われる代わりに能力を手に入れられる果実があるらしい。それを食べてルフィは体がゴムで出来てるゴム人間になったそうだ。体を72ゴムゴムまで伸ばせて100ゴムゴムが目標らしい。
正直わけがわからないけど、これは聞いておかないといけない。
「ねぇ、ルフィは喰種って知ってる?」
「何だそれ? 美味いのか?」
「……不味い。食べるのはオススメしない」
「何だ、美味かったら食いたかったんだけどな」
ゴムゴムっていうわけの分からない単位、さっきの海賊船、子供でも知ってるはずの喰種を知らない。そもそも知ってたら食べたいなんて言うはずないもんね。ならここは違う世界なんだろうか……でも、本当だったら私は死んでるはず、ならそう考えるのが普通か。
うぇ……不味い、吐きそう。やっぱり人の肉じゃなきゃダメみたい。ルフィはりんご取ってくれたし悪い人じゃないのか。なら、喰べるわけにはいかない。私が喰べるのは、私に攻撃して来た人か捜査官だけって決めてるし…って……そんなにリンゴをじっと見られても困るんだけど。
「あの……最後の1個だけど、食べる?」
「本当か!? ありがとう! お前いいやつだな!」
少女の提案に目を輝かせながらルフィは礼を言った。その様子を見て少し微笑ましく思った少女、すると突然目の前がぼやけて見えた。
「別に…そのリンゴも……美味しく食べてもらった方がいいだ…ろうし……」
ふらふらと体を揺らし座っていた少女は横に倒れる。
「あ、そうだ。お前おれの仲間に……っておい、どうした大丈夫か!?」
あぁ、なんか疲れた。今はとりあえず……
「お…」
「お?」
「お腹すいた」
そこで少女の意識は、シャットダウンした。
「なんだ腹減ってるだけか、リンゴじゃ腹一杯にならねぇもんな」
「おーーい ルフィーー!!」
「あ、ウソップ!!」
「お前いつの間に森の中に入ってー……それ誰だ?」
「尻尾生やせるいいやつだ! おれはこいつ仲間にするぞ!! けど腹減ってるみたいなんだよ。サンジに飯作ってもらおう!!」
「よくわかんねぇけど、分かった!」
そこはどこかの船の中。ベットの上で眠る少女とその前で本を読みながら見守るオレンジ色の髪の女が1人。
「ん、んん……ここは?」
なんで、私、ベットで寝てるの?
「あたし達の船の中よ。ここは私の部屋、気分はどう?」
オレンジ色の髪をした女はベットで寝ていた少女に聞く。
「…えっと……少し体がだるいですが一応平気…です」
わぁ……凄い美人さん。
「起きたのなら、まず先にお風呂入っちゃいなさい。結構体汚れてるから」
「え? あ……あぁ…ありがとうございます」
少女が名も知らない美人に連れられユニットバスへと向かう。服を脱ぎシャワーを浴びると湯船に入ると自然と声が出てくる。
「はぁ……いいお湯」
体から力が抜けていくや…っと状況の整理をしておこう。
死んだはずの私はいつのまにかにこの島の海岸で寝ていた。そのあとルフィと一緒にリンゴを食べてそのあとは寝ちゃってたんだ。でも何故かルフィがいなくなってて、代わりにいたのはさっき見た美人さん。ということはここはルフィの仲間の船ってことかな……それで……
「着替えのTシャツここに置いておくから、お風呂から上がったら着替えちゃいなさい」
「…………」
しかし、パシャパシャと水が跳ねる音が返ってくるだけで返事がない。ユニットバスに付いているカーテンを開けると、湯船に頭まで浸かり弱々しく手足を動かしている少女の姿があった。
「ちょっと!! なんで溺れてるのよ!?」
「ゴホゴホッ…ゴホッ…はぁ…はぁ…死ぬかと思った」
湯船に浸かってたらなんか力が抜けてきてお風呂で死ぬとこだった。そんな残念な死に方はしたくない。
「しっかりしてよもう。あんた能力者だったのね、ルフィが言ってたのは本当だったんだ。ほら、タオルで体拭いて、みんなのところに行くわよ」
「はぁ…はぁ……ありがとうございます、えっとみんなって?」
「この船の船員達よ」
船員? よく分かんないけど、ついてこいってことだよね?
まだ髪は乾ききってなくてひんやりする。それに美人さんから貰った服はダボついてる。まぁ、私より身長が大きいし、胸も大きいから仕方ないんだろうけど。私で150くらいだから、この人170くらいだと思う。それでここはキッチンかな?
「おー! お前起きたのか!! 良かったな!」
あ、ルフィ……じゃあやっぱりこの船はルフィが乗ってる船、それも海賊船か。私これからどうなっちゃうんだろう?
「目覚めて良かったよ麗しきレディ。お腹が空いてるということでしたので、この船のコックであるこのサンジが作った料理をお召し上がり下さい」
キッチンにある椅子に座らせられ、目の前にはぐるぐる眉毛の男の人が出してきたのは湯気が立ち上り香ばしい嗅いだことがない臭いがするスープ。
いい匂い……でも、この人が作ったってことは人間が作った食事ってことになる。人間の作った料理なんて食べれるわけ無い……けど、ここで食べないと喰種だと疑われる。
いつものように美味そうな顔で食事を口に含むだけそれだけでいい。
「いただきます」
あれ? いつもの池の水でも飲んでいるような味じゃない……美味しいとは思わないけど吐き出すほど不味いっていうわけじゃない。いつもよりちょっとだけマシって感じ……あの人間の食事を食べた時の吐き気が来ない?
「…もしかしてお口に合わなかったかい?」
心配そうに少女に聞く、ぐるぐる眉毛の男。
「いえ……とても美味しいです、料理がお上手なんですね」
「それは良かった、存分に食べてくれ」
「ありがとうございます」
微笑む少女の顔を見てぐるぐる眉毛の男は胸を打たれる。
「はぅ!! 」
サンジ心の声
(腰まで届く雪のように白い髪、小さい体ながら凛々しくも優しさに溢れたその澄んだ青い瞳、そして風呂上がりの火照った顔にダボついたTシャツを1枚だけ着ているその姿、おれのスカウターで見るにC…いや、Dか? ……ナミさんに遠く及ばないにしろ、将来が楽しみだ。「あの……」ん?)
「何かな?」
「……サンジさんって私と会ったことあります? 最近だと思うんですけど」
少女の質問にサンジは困惑していた。とりあえず記憶を辿っては見たが少女との出会いの記憶は無かった。
「いや、今日初めて会ったはずだよ? 君みたいな可愛いレディを会っていたらおれは覚えているはずだし」
「そう……気のせいでしたか」
覚えてないってことはそこまで重要じゃないと思った少女は食後のコーヒーを貰い一息つく。
結局、あの後食べ物を食べたけど吐きそうになることにはならなかった。不味いことには変わらなかったんだけど…力も余り戻ってないし、でもまぁ多少動けるようにはなった。
「あの……ご飯を恵んでいただきありがとうございます。その上お風呂まで貸してもらって」
「気にすんな、にしし」
「それであなたは、森の中で何をしていたの?」
「えっと……船が沈んでしまって、木片にしがみついて何とかこの島にたどり着いたんです。ここは一体どこなんですか?」
「ここは東の海にある孤島よ。私たちはこれから始まりの町 ローグタウンに行く途中で、あの島で休息をとっていたの。そしたら、うちの船長があなたを拾ってきたってわけ」
イーストブルー? ローグタウン?知らない地名だ。外国かと思ったけど私がいたのは日本だし、それにこの人たちも日本語を話してるから、外国って線は薄いかな……
「おう! なぁ、おれと一緒に海賊しようぜ!!」
さっきもそんなことを言ってたな……というかルフィが船長なのか、大丈夫かなこの船。なんか沈みそうか気がする。
「またお前は唐突だな…」
「いいじゃねぇかゾロ。尻尾だぞ! 尻尾!すげぇいかすだろ!!」
赫子を見られてた? マズい…ルフィが喰種を知らないとしても、他の人が喰種を知らないとは限らない。どうする?
「多分悪魔の実を食べたのよ、さっきお風呂で溺れてたもの」
え? いや、さっきのお風呂の時は食事をしてなくて力が入らなかったから溺れかけただけ、私は悪魔の実なんて食べてない。
あ……そうか、喰種ってバレるより、悪魔の実と勘違いしてもらっていた方がいいか。
「へぇどんな能力なんだ?」
「…えっと………白い尻尾と羽が出せる、こんな風に…」
少女が白い尾赫と右肩から白い炎のように揺らめく羽赫を見せると、周りにいた者が驚く。ナミはハクの羽赫を見て妖艶のような可憐さを感じていた。
「私はてっきりいきなりルフィがあなたを担いで来たから、ルフィが変なキノコでも食べてあなたに何かしたんじゃないかって思ってた」
ルフィ以外がすごく頷いてる。やっぱりルフィはそういう感じの人なんだ。頭で考えるより先に体が動くタイプ。
「おまえら失敬だな!!」
赫子を出しても何も言わない船員達に少女は驚いていた。
「えっと……怖くないの?」
「ん? 別に怖くねぇだろ、むしろカッケェ!」
「そうね、悪魔の実の能力者は見て来たし今更って感じ」
「そう……それで海賊って言っていたけど、私をどうする気?」
海賊って島を襲ったり、客船を襲ったりって本で読んだことがある。この人達も海賊でこんな変な能力を持った私を売り飛ばしたりするかも知れない。そう考えると赫子を見せたのは失敗だったかな。思ったより動揺していたみたい。
「別にどうもしねぇよ。ただおれ達と一緒に冒険してほしいだけだ」
少女は赫子をしまい、ルフィに聞くとルフィは笑顔で答えた。
「え? ……そ、そう……」
どの道私には帰る場所なんてないし、帰る場所も私のことを待ってくれている人もいない。
やっと苦しみから解放されると思ったのに、まだ生きている私は、もう生きる目的が無い。
だから、このまま1人で生きているくらいなら死ぬつもりだった。でも、ルフィが誘ってくれた、みんなは赫子を怖がらなかった。私はそれがすごい嬉しかった。
他の人からみたらそんなことと思うかも知れない、でも私にとっては大事なことだ。この世界で私は、生きていて良かったって思える人生を送りたい。この人達とならそれを見つけられるかな?
「……いいよ、海賊になる」
「おぉ本当か!えーっと……そういえばお前名前なんて言うんだ?」
「名前も知らずに勧誘してたのかよ!?」
どうやら鼻の長い人はツッコミ役みたいだ。うん、ツッコミ役がいるのはいいことだ。
名前か……どうしよう、前の名前だとこの船にいる人たちの名前からして浮きそうだ……そうだな。
「私の名前はハクリュウ……ハクって呼んで」
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