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レーヴァティン

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第六十九話 西に向かいその五

「御前も」
「いい筈ないだろ」
 即座にだ、久志も答えた。
「六十からも長いっていうだろ」
「今じゃそうだな」
「その第二の人生が孤独とかな」
「しかも家族に捨てられたうえでな」
 孤独になるにもはじまり次第で随分と気分が違う、自分からなった場合は前を向けるし死別なら悲しくはじまる。だが捨てられると絶望からはじまる。それぞれはじまりが違うとそこから全く違って来たりするのだ。
「辛いだろ」
「だからか」
「ああ、そうなっても自業自得だしな」
「家庭は大事にしないと駄目か」
「仕事一筋でその後どうするんだ」
 その仕事を退いてから、というのだ。
「趣味も持って何よりもなんだよ」
「家庭もか」
「持ってこそってことだな」
「人間はそうか」
「ああ、それとな」
 さらに言う芳直だった。
「本当に全員揃ったらだな」
「ああ、ローマに戻ってな」
 そうしてというのだ。
「旗揚げするからな」
「じゃあまずはローマを掌握だな」
「そこからだな」
「ローマは複雑な街です」
 夕子が言ってきた。
「教会だけでなく貴族や傭兵、豪商に職人や船乗りのギルドとです」
「色々な勢力があるんだな」
「所謂平民の勢力も馬鹿に出来ません」
 市井の彼等のそれもというのだ。
「それぞれの職業のギルドに加わっていたりそれぞれの地域でのコミュニティを持っていますので」
「だからか」
「非常に複雑な状況にあります」
「色々な勢力が混在しているか」
「それがローマです」
 この街だというのだ。
「ですから掌握されるにも」
「旗揚げして終わりじゃないか」
「はい」
 その通りだというのだ。
「ですからまずはです」
「旗揚げもローマ統一からか」
「拠点を完全に掌握していないと」
 それこそとだ、夕子は久志に話した。
「旗揚げどころではないですね」
「そうだよな、じゃあな」
「はい、まずはです」
「旗揚げをするにはな」
「ローマを一つにし纏めることです」
「それからか」
「そうです」
 夕子もその通りだと答えた。
「このことはご了承下さい」
「わかったぜ、まずはローマだな」
「この街を纏めることです」
「自分の足元すら纏められないでな」
「島の統一は出来ません」
「家庭を大事に出来ない奴が駄目なのと同じか」
「そうですね、拠点は言うならです」
 まさにとだ、夕子は久志に話した。
「自宅ですので」
「家庭みたいなものだな」
「纏められないでは」
「統一なんて夢物語か」
「そうかと」
「そうだな、そういえばあんたも武器か何か持ってるよな」
 ここでふと気付いてだ、久志は夕子にこのことを問うた。 
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