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空に星が輝く様に

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54部分:第五話 部活でその三


第五話 部活でその三

「御前も太宰なんだな」
「『ヴィヨンの妻』よ」
 太宰の晩年の作品である。後期の彼の自己破滅的、自己退廃的な特徴がよく表われている作品の一つである。名作としても有名だ。
「それ読んでるの」
「西堀は『富岳百景』でか」
「つきぴーに太宰は似合うから」
「御前はどうなんだ?」
「私にも似合う」
「いや、それはあまり」
 このことには首を傾げさせる陽太郎だった。
「そうは思わないけれどな」
「何で?」
「御前結構おかしな奴だからな」
 本人に対して直接言うのだった。
「魔道とか呪いとか。そういうの興味ないか?」
「ある」
 返答は一言だった。
「大好き」
「やっぱりな」
 そしてそれを聞いて素直に納得する陽太郎だった。
「そうだと思ったよ」
「そう見えるの?」
「ああ、見える」
 遠慮なく言う陽太郎だった。
「それはな」
「そうなの」
「って怒らないのか」
「そう見られるの好きだから」
 これは陽太郎にとっては意外な言葉だった。
「だからね」
「じゃあ別に怒ってないんだな」
「怒ってないわ。ただ」
「ただ?それでも何かあるのかよ」
「あるから」
 あるというのである。話は何か椎名のペースになってきている。ただし陽太郎はこのことにはどうも気付いていないといった様子である。
「それは」
「どうあるんだ?」
「私本好きだから」
 こう言ってきたのである。
「だから色々な本を読んでるの」
「そうなのか。じゃあ太宰もか」
「そう。太宰好き」
 手に持っているその本を見ながらの言葉である。
「前期のも中期のも後期のも」
「どれも好きなのか、太宰の作品は」
「それでどれが一番好きなんだ?」
「『走れメロス』」
 それだというのだ。
「あれが一番好き」
「へえ、あれがか」
「メロスは知ってるわね」
「ああ、それはな」
 陽太郎もそれはよく知っていた。太宰の最高傑作の一つであり最も有名な作品の一作でもある。太宰といえばこの作品とまで言われている。
「小学校でも習ったしな」
「そうよね。私も小学校の時に習って」
「それで太宰好きになったのか」
「そうなの」
 まさにそうだというのである。
「それで好きなの」
「成程な。だからか」
「そうよ。それでね」
「今度は何だ?」
「斉宮も読む?」
 こう言ってきたのである。
「太宰。どうかしら」
「そういえば太宰はあまり読んだことなかったな」
 陽太郎はここで自分のことを思い出したのだった。そういえばであった。
「太宰はな」
「じゃあ余計にどうかしら」
「ああ、読んでみる」
 また言う彼だった。読むというのだ。
 
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