レーヴァティン
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第六十八話 女枢機卿その十
「さて、次は誰で何処にいるかだよ」
「このローマは人も多しね」
淳二は街中を見回しつつ言った、確かに人は一行がこれまで回ったどの街よりも多い感じである。店も実に多い。
「色々情報が聞けるかな」
「それじゃあ居酒屋に入ろうか」
源三は淳二のその言葉を聞いて言った。
「そうしてね」
「居酒屋で飲みながらだね」
「客達の噂話を聞いてな」
そうしてというのだ。
「情報収集をするか」
「そうしたらどうかな」
「そうだな、ここはな」
久志は今度は二人の言葉に頷いて述べた。
「酒場なり何処にでも入ってな」
「情報収集だね」
「それに入るんだね」
「そうしような、直接話して聞ける奴がいたらな」
その場合もことも話す久志だった。
「聞いてな」
「そうしてだね」
「十一人目の情報を聞くんだね」
「ああ、そうしような」
こう言った、そしてだった。
久志はあらためてだった、今度はこんなことを言った。
「あとここを旗揚げの時の本拠地にするならな」
「それなら?」
「ああ、ここにな」
まさにこのローマにというのだ。
「家を移すか」
「ヨハネスブルグからだね」
「奥さんもな」
ハンナ、彼女もというのだ。
「ここに来てもらうか」
「ああ、そういえばあの人ともな」
正は久志がこの世界での自分の妻のことを言ったところで彼に言った。
「ずっと会ってないな」
「結婚したけれどな」
「そうだったな」
「何しろ冒険に出てるからな」
それでというのだ。
「もうな」
「奥さんがいてもな」
「会ってないぜ」
ヨハネスブルグの家にいる彼女ともというのだ、実際に彼等は今はヨハネスブルグから遠く離れているローマにいる。
「それでもな」
「おい、冒険者でも英雄でもな」
「家庭はか」
「大事にしないとな」
「駄目だよな」
「つまり仕事はな」
冒険も戦いもそれになるというのだ、正はこう考えていた。
「大事だがな」
「家庭もな」
「同じいやそれ以上にな」
「大事か」
「家庭を大事に出来ない奴が何か出来るか」
正は久志に厳しい口調で言った。
「仕事しか頭になくて家庭を顧みない奴は何だ」
「それは馬鹿だよな」
「そうして奥さんもお子さんも不幸にするとかな」
「本末転倒っていうんだな」
「仕事は大事でも生きる為、家族を養う為のものだ」
そうしたものだとだ、正は強い声で言った。
「それが全部になって家庭を顧みなくなったらな」
「駄目だよな」
「そんな奴が奥さんが浮気したとか子供がぐれたとか騒いでもな」
「自業自得か」
「自分がそうなる様にしたんだ」
妻子を全く見ようともしない、そうしたことをしてというのだ。
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