ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第十一幕その二
「僕に勇気とか義侠心とは縁がないよ」
「いや、武器を持ってとかじゃないよ」
「オスカルさんみたいに」
「そういう義侠心じゃないから」
「そのことは言っておくよ」
皆はそこはちゃんと言いました。
「先生は戦う人じゃないから」
「武器とか鎧とかとは無縁じゃない」
「軍医さんは出来るけれどね」
「そうしたことじゃないよ」
「だから困っている人を決して見捨てない」
「僕達動物にだってそうじゃない」
人に対してだけではありません、先生の博愛主義は人では人種や宗教や職業や性別は一切関係ないですがそれは動物達についてもなのです。
「それこそまさに義侠心だよ」
「そうじゃないの?」
「先生には義侠心が確かにあって」
「それが先生の心を奇麗にしているんだよ」
「そしてその心に薔薇を宿らせているんだ」
「そういうことなのかな、けれど僕は欠点だらけなんだれど」
慢心しないのですが先生はその反面自信がある方でもありません、それで皆にここまで言われても思うのでした。
「それでもかな」
「うん、そうだよ」
「先生よりも王子の方がわかってるんだ」
「勿論私達だってそうだし」
「トミーもそうだよ」
「それにサラさんだって」
先生の妹であるあの人もというのです。
「結婚してイギリスにいたままでも先生に時々会いに来るじゃない」
「お仕事のついでにしても」
「それは先生が好きだからだよ」
「先生のお心がね」
確かに先生の病院が動物だらけになって人のお客さんが来なくなってたまりかねてお家を出てしまいましたが。
「だから会いに来てるし」
「わざわざ先生のお家まで来て」
「それはサラさんも先生が好きだからだよ」
「先生のお心がね」
義侠心があってそこから出る勇気も備えている先生がというのです。
それで、です。先生にさらに言うのでした。
「先生は凄くいい人だから」
「自信を持っていいよ」
「そのお心ならね」
「薔薇も備わっているよ」
「ちゃんとね」
「ただね」
ここでホワイティがこんなことを言いました。
「先生の心にあるのはどんな薔薇か」
「うん、それはね」
「ちょっとわからないわね」
チープサイドの家族も言います。
「ちょっとね」
「具体的にどんな薔薇かは」
「薔薇といっても色々だから」
ダブダブもこう言います。
「赤薔薇、白薔薇だけじゃないし」
「この学園の植物園に行くとどれだけあるか」
ジップはあの植物園の薔薇園のお話をしました。
「色だけでも相当にあるからね」
「そうそう、薔薇と一口に言ってもね」
チーチーはジップに応えました。
「多いからね」
「その中のどの薔薇か」
首を傾げさせたのはポリネシアでした。
「言えないわね」
「はっきりとは言いにくいね」
トートーもこう言います。
「今のところは」
「先生は派手な人じゃないから」
そのお心もと言う老馬でした。
「赤薔薇とか白薔薇じゃないね」
「ピンクはないね」
「うん、それは絶対にないよ」
このことを言ったのはオシツオサレツでした。
「ピンクは女の人の色だし」
「先生にも似合わない色だしね」
「何の色の薔薇なのかは」
ガブガブも首を傾げさせるのでした。
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