転生とらぶる

『では、私達はこれで失礼する』

　そう告げ、キシリアは通信を切る。
　同時に、グワジン級と呼ばれている軍艦がグラナダから発進していった。
　このグワジン級が一番最後まで残っていた軍艦で、それにキシリアが乗っていたのは……まぁ、一種のポーズだろう。
　自分は最後まで戦場に立っているのだということを示す為の。
　勿論、俺がその気になればグワジン級が破壊されていた可能性は高いのだから、そういう意味でポーズであっても命懸けなのは間違いない。
　キシリアにしてみれば、今回の一件で間違いなく影響力を落とす。
　突撃機動軍の本拠地のグラナダを、たった1機のMS――正確にはMSではないが――に陥落させられたのだから、当然だろう。
　そんなキシリアにとって、少しでも自分の影響力を残そうと考えるのは、当然の事だった。
　涙ぐましい努力と言ってもいいが、今回の件でキシリアはなくしたばかりという訳でもない。
　少なくても……こうして、俺はしっかりとキシリアの名前を覚えたのだから。
　俺と顔見知りになれたというのは、キシリアにとっても決して悪い話ではないだろう。
　もっとも、俺と顔見知りになるのとグラナダを維持するののどちらかを選べと言われたら、普通なら間違いなく後者を選ぶだろうが。
　ともあれ、キシリアが消えたのを確認してから、俺はシーマに通信を入れる。

「シーマ、そっちから見ても分かると思うけど、突撃機動軍の面々は既に全員がいなくなった」
『あいよ。こっちからも見えてる。……それにしても、あたし達を顎で使っていた……いや、認識すらしていなかったザビ家の女が尻尾を巻いて逃げる光景ってのは、見てて気分がいいね』

　それこそ、爽快感極まるといった様子で笑みを浮かべるシーマ。
　いやまぁ、自分達を騙してG2という毒ガスを使わせるような真似をした連中が逃げ出しているのだから、その気持ちも分からないではない。
　……そう言えば、実際にシーマ達に命令をしたアサクラは、結局どうなったんだろうな。
　キシリアに聞いてみればよかったのか？
　もっとも、聞いたからといって素直に教えるとは思えないが。

「とにかくだ。シーマの部下と黒い三連星は一応グラナダの地理についても詳しい筈だ。そうである以上、妙な仕掛けとかがないのかどうか、そして隠し通路とかそういうのを調べるのは任せる」
『あいよ。……って言いたいけど、実際にそれを調べるのは量産型W達なんだろ？』
「まあな」

　人間が調べるよりも、メギロートやバッタ、量産型Wといった連中の方が能力は高い。
　全てにおいて完璧という訳ではない以上、それをフォローする為にシーマ艦隊や黒い三連星が派遣されたのだが。
　とはいえ、黒い三連星はともかく、シーマ艦隊は元突撃機動軍の所属ではあっても、その能力はともかく、汚れ仕事を行っていた部隊だからという理由で、グラナダではなくマハルを拠点として使わされていたのだが。
　もっとも、俺達がシーマと真っ先に接触できたのは、シーマ達がマハルを拠点としていたからだ。
　もしシーマ達の拠点が突撃機動軍らしくグラナダであれば、俺達がシーマに接触するのはもっと時間が掛かっただろう。
　シーマと最初に接触し、それでいて真っ先に協力を取り付ける事が出来たからこそ、俺達はジオンでの様々な工作を楽に出来るようになったのだ。
　もしシーマ達と接触できていなければ、ジオンでの工作はもっと時間が掛かっただろう。
　それこそ、ルナ・ジオンを実際に建国するのにもう数ヶ月……場合によっては更に多くの時間が必要となった可能性もある。
　いや、凛や千鶴達のおかげでキシリア機関を含む情報部の目を眩ます事が出来ていたが、あのような無茶な行為がいつまでも続いていたとは思えない。
　そう考えると、もしシーマとの接触が上手くいってなければ……最悪、ルナ・ジオンの建国は年単位で遅れていた可能性も否定は出来ないのだろう。
　ラル隊の連中が早期にシーマを見つけてくれたのは……そして、ラルがシーマに目を付けたのは、大正解だったという事か。

『じゃあ、早速始めるよ』

　その通信と共に、リリー・マルレーンの姿がグラナダからでも見えた。
　随分と早いと思ったが、この様子を見る限りでは恐らく2時間の待ち時間の間にこちらに向けて出撃していたのだろう。
　フットワークが軽いと言うべきか、少し迂闊だと言うべきか。
　もっとも、もし迂闊だとしても……シーマ艦隊はこのUC世界の中でもトップクラスに位置するMSパイロット達だ。
　そうである以上、例え突撃機動軍の面々が待ち伏せをしていようとも、それこそ対処するのは難しい話ではない。
　それどころか、嬉々として自分達に襲い掛かってきた相手を倒して、その連中が持っていた戦力を確保するだろう。
　もしくは、生かして捕らえて、降伏したのにまた攻撃を仕掛けてきたといった事でより多くの責任をキシリアにけしかけるか。
　とはいえ、その辺りを俺に報告してこないという事は、実際にはそんな事はなかったのだろうが。

「ああ、頼んだ。俺は一応、何かあった時の為にここにいるから、問題が起きたら連絡してくれ。……まぁ、占領活動で俺が何を出来るのかは分からないけど」
『あいよ』

　それだけを言うと、通信が切れる。
　占領活動の方に、本気を出すのだろう。
　グラナダの住民も、反抗したりしない限りは基本的に乱暴なことはされない筈だ。
　……ジオンのシンパによるテロとかがあれば、話は別だが。
　もっとも、実際にテロ活動を起こすよりも前に、バッタやメギロート、量産型Wといった面々が活躍して、それを鎮圧する可能性の方が高いだろうが。
　フォン・ブラウンを始めとする月面都市では、ジオンのシンパというのはあまりいない。
　とはいえ、そちらで何も問題がないかと言えば、そんな訳でもなく。
　ジオンのシンパはいないが、月に住むルナリアンであるという事に誇りを持っている者がレジスタンス活動をする可能性はあった。
　ジオンのシンパとルナリアン。どっちが厄介かと言われれば、どっちも厄介だと答えたくなるのは当然だろう。
　ともあれ、シーマ達の事だからその辺も上手くやるのは間違いなく、今の状況で俺がそちらに何かをするようなつもりは全くない。
　本格的に何かあった時に対処出来るように準備しておけば、それで十分だろう。
　そうして暫くの間、一応何があっても対処出来るようにと待機していたのだが……結局、特に何かがある訳でもなく、シーマから連絡が入る。

『アクセル、こっちは無事に終わったよ。一応あたし達が調べてみた限りだと、特に何かが仕掛けられている様子はない』
「そうなのか？　キシリアの事だから、てっきり何らかの罠は仕掛けていってもおかしくはないと思ったんだがな」

　ちなみに、2時間の猶予時間の間に、キシリアはグラナダの前で俺と戦ったニムバスを始め、ここに来る途中で待ち伏せしていたガトル等の戦闘機と軍艦で構成された面々の救助もしており、全員が無事にサイド3に撤退していった。
　いやまぁ、無事にって言っても手足の一本を骨折しているのを思えば、本当の意味で無事とは言えないのかもしれないが。
　それでも、取りあえず命に別状がないのは間違いない。

『考えられるとすれば……アクセルに、ルナ・ジオンの後ろにいるシャドウミラーに、悪感情を持たれたくはなかったんだろうね』

　そう言われてみれば、なるほどと納得出来ない訳でもない。
　キシリアにとって、今回唯一手に入れる事が出来たものは、俺達とのコネなのだ。
　であれば、こちらを不愉快にして、それを不意にするような真似はしたくないだろう。

「なら、そのまま占領を進めてくれ。後で量産型Wを派遣する事になると思うから」

　今の状況でグラナダの住人が大人しくしているのであれば、こちらとしては特に問題はない。
　いや、不満を持っていてもそれを実際に表情に出さないでいてくれれば、それで十分ですらあった。
　もっとも、そう言っても大人しくこっちの指示に従ったりといった事をしない者もいる以上……明確な利益を出す必要もある。
　そして、ルナ・ジオンにしてみれば、その明確な利益というのは……まず第一に、美味くで安い食料だろう。
　コロニーであれば、専用の栽培の空間を取る事も出来るし、実際にそうしているコロニーが大半だ。
　だが、そんなコロニーに比べて、月面都市はどうしても食料を育てる為の空間を確保するのが難しい。
　コロニーであれば、宇宙空間に専門の施設を作ればいいだけだが、月だとその辺はかなり難しいのだ。
　そもそも、地下に掘り進んでいく形で月面都市は広がっている以上、当然のように太陽を使う事は出来ない。
　勿論専用のライトの類があれば、地下であっても普通に野菜の類は育つ。
　だが……そうなれば当然のように掛かった費用の分食料の値段も高くなってしまうのだ。
　純粋に食料という点では、月面都市はコロニーよりも厳しい状況であってもおかしくはない。
　そんな場所に、クレイドルで育てられた食料が安値で流入したらどうなるか。
　いやまぁ、月面都市で食料を作っている連中にとっては迷惑極まりない行為だろうが、一般市民にとっては非常にありがたいのは間違いない。
　……もっとも、クレイドルではこれから食料を育てるのだから、実際に食料を輸出するのは、どんなに早くも数ヶ月……いや、クレイドルの住人に行き渡る分を考えると、年単位で先になる可能性も否定は出来ないのだが。

「とにかく、頼んだ」
『あいよ』

　そう返事をし、通信が切れる。
　さて、取りあえずグラナダの一件は俺の手を離れた。
　当然のようにグラナダでも俺がどれだけの力で突撃機動軍を蹂躙してきたのかという映像は見ていた筈だから、多分逆らうといった真似はしないと思うんだが……しないといいな、というのが正しいところか。
　そんな風に考えていると、通信が入る。
　一瞬、グラナダの占拠で何か問題があってシーマが連絡してきたのかと思ったが、映像に映し出されたのはラルだ。

「どうした？」
『グラナダから撤退したキシリア達は、サイド3に戻った』
「そうだろうな。そこに行くしか道はないし」

　もしどこかに秘密基地の類でもあれば、そちらに向かった可能性は否定出来ない。
　ああ、でも当然のようにキシリア達は俺達に見張られているというのは理解しているだろうから、秘密基地の類があっても迂闊にそっちに向かうような真似は出来ないか。
　俺達に見つかれば、秘密基地が秘密基地ではなくなるだろうし。
　……実質的に、現在のルナ・ジオンはジオン公国を相手と半ば戦争状態に近い。
　いやまぁ、こうして拠点の1つだったグラナダを占拠しているのを考えれば、近いんじゃなくて完全に戦争状態になっているという表現の方が正しいのだろうが。
　ともあれ、そんな状況で自分達の生命線にもなりかねない秘密基地の類は、教える訳にもいかないだろう。

「それで、ジオン軍はどう動くと思う？　以前からの予想では、こっちに交渉を持ち掛けてくる可能性が高いって話だったが」
『間違いないだろう。向こうにしてみれば、連邦という巨大な存在を敵に回しているというのに、そこで更にルナ・ジオンやシャドウミラーという新たな戦力を敵に回すような愚かな真似をするとは思えん』

　きっぱりとそうラルが言い切るのは、ジオン軍という存在をよく理解しているからこそだろう。

「ラルがそう言うんなら、多分その方向で間違いないんだろうな。そうなると、やはり交渉か。……けど、セイラがそれを受け入れるか？」

　俺としては、特に問題なく交渉を受けてもいいと思う。
　だが、セイラにとってジオン公国というのは、自分の父親を殺し……一家の運命を狂わせた存在だ。
　いやまぁ、本当にジオン・ズム・ダイクンを暗殺したのがザビ家なのかどうかは、証拠の類がないんだが。
　それでも、状況証拠的にはほぼ間違いなくザビ家の仕業と考えてもいいのは間違いない。
　そうなると、やはりセイラがそれを受け入れられるかどうかという問題があるのだが……

『恐らく、大丈夫だ。姫様も一国の女王という立場になられたのだから、私情で判断を下す事はない筈だし、もしそのような真似をするのであれば、儂が……そして他の者達がそれを止めるだろう』

　自信に満ちた様子でそう呟くラルを見る限り、その辺は心配しなくてもいいらしい。
　もっとも、セイラにとっては既に死んでしまった父親の件よりも、まだ生きているシャアの件をどうにかする方が先の筈だ。
　……ああ、ジオン公国と交渉をするという事は、シャアを連れてくるように要望するのはおかしな話ではないのか。
　そういう意味では、今までどうしても接触する事が出来なかったシャアと接触するという意味で、ジオン公国との交渉は実りあるものになる可能性があるのだろう。 

アクセル・アルマー
LV：43
PP：235
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1987
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
　　　努力 消費SP8
　　　集中 消費SP16
　　　直撃 消費SP30
　　　覚醒 消費SP32
　　　愛　 消費SP48

スキル：EXPアップ
　　　　SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
　　　　念動力 LV.11
　　　　アタッカー
　　　　ガンファイト LV.9
　　　　インファイト LV.9
　　　　気力限界突破
　　　　魔法（炎）
　　　　魔法（影）
　　　　魔法（召喚）
　　　　闇の魔法
　　　　混沌精霊
　　　　鬼眼
　　　　気配遮断A+

撃墜数：1435