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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第60話 体育祭

「これより体育祭を始めます!!」

開会式。
3年生の体育委員長の宣誓によって開幕した。

これから本格的に始まるのだが…………

「すまん、ちょっと付き合ってくれ………」

そう言われて、俺はバカに連れていかれた…………









「お前の言うとおりだった」
「はい?」

場所は体育館裏。
現在の競技は俺達に関係無いので問題ないけど、なるべく早く帰らないとまずい。

「前に屋上で言われた事さ」

ああ…………

「俺はあの後信じられなくて、一つ試してみることにしたんだ」

「何を?」

「わざと大怪我をして、なのはたちがお見舞いに来てくれるか」

体張ったな……………
だから学校にこれなかったのか。

「それで俺はずっと待っていた。俺に惚れた彼女達なら必ずお見舞いに来てくれるって。だけど…………」

まあ普通に学校に来たり、仕事したり、いつも通りだったな。

「ありがとう、あの時お前に言われて無かったら気付かなかった」

「あ、ああ……………」

まさかお礼を言われるとは…………

「それだけ言いたかっただけだ。悪かったな時間を取らせて」

そう言って行こうとするバカ。
いや……………

「神崎!!」

俺はこの時初めて名前を呼んだ。

「普通でいろよ!お前は元がいいんだから普通でいれば、モテるんだから」

「ああ、ありがとう………」

そう返事をすると、今度こそ先に行ってしまった。

「驚いたな…………」

思わず呟いてしまったが、それほど驚愕だった。
あの自意識過剰唯我独尊のアイツが自分で気がつくなんて…………

けれどこれで少しはマシになるかな。










「諸君!!私はSBS団総帥神崎大悟である!!私は帰ってきた!!今日は体育祭!!女の子の好感度を上げる絶好の機会だ!!皆全力を尽くし、好感度をあげるぞ!!!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」」」」」」


俺が間違ってた…………
普通の意味が違う!!

何で他人目線の普通じゃないんだよ!?

「はぁ…………」

「零治君?」

「なのは、俺頑張ったんだぜ」

「何の事か分からないの」

いつもと変わらない様子の神崎を見ながら、俺はなのはに愚痴っていた。







「行くぞ、せ〜の………」

「「「「「「「「「「フェイト姫〜!!魔王様〜!!たぬはやて〜!!」」」」」」」」」」

「ちょっと!?」
「私、魔王じゃないもんー!!」
「いえ〜い!!」

反応は3人共様々だが、取り敢えず言おう。
俺は桐谷のクラスに避難させてもらってます。

良介や圭、アリサ達、星達、坂巻も一緒に。
まあいつものメンバーだな。

「何とかならないのアレ?」

そう言って、なのは達に声援をかけているSBS団を見る。

「いや、俺にはどうすることも出来ん。アリサ達も覚悟しといた方がいいぞ、絶対声援あるから…………」

恥ずかしいと呟きながらブルーになっていった。
すずかとフェリアも同様だ。

「行けー!!吹っ飛ばせっスー!!!」

「あれ?何か聞きたくない声を聞いたような…………」
「奇遇ですね、私もです」
「我もだが………」

ああ、俺も聞こえたさ。
だけど今はちょうど、桐谷がいない。

アイツが帰ってくるまでスルーしよう。

「何静かにしてるんスか!!次は姉御が走る番っス!!喉が潰れるくらい応援するっス!!!」

「「「「「「「「「「おおっー!!!」」」」」」」」」」

「いや、それ俺のセリフ…………」

おお、ウェンディの暴走に流石の神崎も戸惑ってるな。

「何だ、騒がしい…………」

「行ってこい桐谷!!」

「はぁ!?何を……………って!?」

俺は聞く耳を持たず、あの集団に桐谷を無理やり突っ込んだ。

「何だ何だ?」
「押すなアホ!」
「誰だ…………って加藤!!」

「えっ!?桐谷兄っスか!?」

「ウェンディ!?お前一体何してんだ?」

「いや、普通に応援を………」

「自分のクラスでやってればいいだろうが」

「それじゃあ面白くないっス!!」

「だけどお前がいると絶対に厄介事になる、だから帰れ!!」

桐谷も結構酷いこと言ってるけど、あながち間違いじゃないので何も言わない。

「ひ、酷いっス!!私はただみんなで楽しく応援しようとしただけなのに…………」
「それが面倒な事になるんだろうが!いいから帰れ!!」

ちょっと言い過ぎじゃないか?

「酷い!!桐谷兄なんて………大嫌いっス!!」

流石のウェンディも真剣に怒っていた。
確かに言い過ぎかもな…………

「このイケメンが…………」
「ウェンディちゃんになんて酷いことを…………」
「FUCK!FUCK!」

ヤバイな、応援を止め、SBS団全員が一斉に桐谷を睨み始めた。

「ちょ、みんな落ち着けって………」

「みんな、桐谷兄にかかれっスー!!」

「「「「「「「「「「おおっー!!」」」」」」」」」」

ウェンディの号令でSBS団の全員が一斉に桐谷に襲いかかった。
ああっ、並んでいたイスがバラバラに…………

「痛!?いいから離れろって!!って誰だ今蹴ったの!?」

桐谷も器用に反撃してるが大人数には勝てないみたいだ。

「ウェンディ!!」

そんな様子を見てたフェリアがウェンディを止めに入った。
どうやら見ていられなかったみたいだ。

「やめないか!!これ以上騒ぎを大きくしたら無理やり帰らすぞ!!」

フェリアは結構本気で怒ってる。

「でも、桐谷兄が…………」

「ウェンディ?」

「ごめんなさいっス…………」

そう言ってウェンディはSBS団に止める様に言った。
俺はそう簡単に止まらないと思っていたが、意外とみんなウェンディの言うことを聞いてくれたみたいで、桐谷から離れて、暴れた後片付けをし始めた。

「桐谷兄、ごめんなさいっス…………」

「あ、ああ、こっちこそ悪かった。いつもの行いからきつく言いすぎた、すまない」

ホコリを叩きながら謝る桐谷。
次にウェンディもやってあげる。

「これで良し」

「あ、ありがとうっス…………」

「だけど、ほどほどにしてくれ………」

「うん、ありがとう桐谷兄………」

縮こまってるウェンディなんて珍しいな。

「これで仲直りだな」

「ああ、流石お姉ちゃんってとこか」

しかし、あのウェンディもフェリアの言うことには素直になるんだな。

「しかし、これを見ると立派な家族だな」
「そうだな」

夜美の言うとおりだ。

「それよりも言いたい事あるんやけど…………」

「うん?」

振り向くといつの間にかさっきまで走っていた3人がそこに居た。

「なんだかね、応援された時は恥ずかしかったけれど、いきなり応援がなくなると寂しいっていうか………」
「私魔王じゃないよね!?」
「目立てなかったやないかー!!どうしてくれるんやー!!」

3人がそれぞれ騒いでいる。
しかし何で俺に文句言うかな……………

応援してたのSBS団だし。

「零治、この競技の次、アンタの種目じゃない?」

アリサに言われて気がつく。

「本当だ、じゃあ俺は行くわ!このアホ3人の相手よろしく」

「はいはい、分かったわよ」
「任せて」
「頑張って下さい」
「負けるんじゃないぞ」

後の後始末をアリサ、すずか、星、夜美に任せ、俺は待機場へ向かった。








「はあ………メンドイなぁ…………」

ちなみに俺が出る種目は100m走。
まあ普通なんだけどな。

ちなみに後、俺は2人3脚に出る予定だ。
それ以外は団体競技の棒引き、大玉転がしくらいか…………

あっ、あと障害物走か。

まあ文化祭の事を思えば…………
2人3脚は男子の大半(SBS団)がどこかに行ったため、残った男子が強制的にやる羽目になった。


「まあ仕方ないよな」

「有栖君?」

「ああ、すいません」

いつの間にか俺の順番みたいだ。
係の人に言われ、重い腰を上げて、自分のコースへ向かう。

そんな時、

「お兄ちゃ〜ん!!」
「レイ兄〜!!」

キャロとルーが大きな声で俺を呼ぶ。

「頑張って下さい〜!!」
「頑張れ〜!!」

あれ?よく見ると2人の端でエリオが恥ずかしそうに応援してる。
エリオは恥ずかしかったのかな?

「まあ、妹達が見てるんだから負けるわけにはいかないな」

エリオは男の子だけどね。
そう思いながら俺は気合を入れることにした。





「おかえり、良かったね一位で」

俺の結果は1位。
まあ一緒のメンツがついていただけだったけど。

それでもキャロとルーは感動してたし、エリオも目がキラキラしてた。
これで面目は保たれたかな?

「次は借り物競争だね」

「誰が出るんだっけ?」

「えっと…………アリサに、星に、フェリアだよ」

ライが一生懸命思い出しながら答える。

「何事もなければいいがな………」

「うん?どういうことだ?」

不吉な事を言う桐谷。

「借り物の内容、会長が考えたって聞いた」

うわぁ…………

「おっ、先ずはアリサちゃんやで」

はやてがそう言ったので、俺達は校庭に目を向けた。








パン!と大きな音が鳴り、走り出す。
アリサは運動神経もいいので、直ぐに一番速く机に着いた。

そして、お題を見て…………




顔が真っ赤になった。




何故?

「アリサちゃんー!!早くー!!」

その場でアワアワしてるアリサになのはが声をかける。
しかしアワアワしてるアリサって初めて見るかも…………

おっ、どうやら覚悟を決めたみたいだ。
さて、一体何のお題なのやら…………

と思ってたらアリサが真っ直ぐコッチに来て…………

「来なさい!!」

と腕をつかまれ引っ張られた。

「お、おい!!」

「いいから来なさい!!」

顔を赤くしながら引っ張っていく。

「はい、お題を見せてください」

ゴールにいた係員が声をかけてきた。
アリサは言われたとおり、紙を差し出す。

渡された紙を見て、俺を見る。
すると、何やらニヤリとして、

アリサに何かを言い始めた。

ああ、また顔が真っ赤に……………

「一体何が書いてあったんだ?」
「絶対に教えない!!!」

一体何なんだよ……………






「おっ、次は星か…………」

アリサから開放されて、星の番になった。

「さて、星の借り物は何だろうな………」

アリサみたいな珍しい反応が見れると面白いかも。
おっ、アリサみたいに顔が真っ赤になった。

さっきのアリサもそうだったけど、一体何が書かれてたんだ?

「あれ?星もこっちに来るよ」

ライに言われて見ると確かにこっちに来ている。
あれ?もしかして……………

「レ、レイ、一緒に来てもらえませんか?」

「ま、また!?」

一体何が書いてあるんだよ!?

「お願いします!!」
「そんなに強く言わなくてもそれくらい付き合うよ」

そう言って俺は星の元へ行く。

「レイ…………」

「ん?何だ?」

「手を………」

「手?」

「手を繋いで下さい……………」

「……………なして?」

「これがお題ですから…………」

………………借り物じゃなくね?


もう周りの黄色い声援がもの凄く痛かったです……………






「さ、最後はフェリアだな…………」

「零治は人気者だね」

フェイトさん、ぶっちゃけあんまり嬉しくないです。
さっきから男子の視線がこれまで以上にキツイです。

「あれ?フェリアちゃんもこっちに来たよ」

なのはがそう言ったので見ると確かにフェリアもこっちに来ていた。

「一体何なんだろうね、零治君…………あれ?」

「ちょうど今どっか行ったで」

「あれ?本当だ」

そんな時、フェリアがこっちに来た。

「零治いるか?」

「本当にレイだった………」

「いや、別に零治じゃなくていいのだが…………」

「ちょうどレイはどこかへ行っちゃったよ」

「そうか…………なら桐谷」

「何だ?」

「脱げ」

「は?」







「お題がズボンね…………」

「ああ、良かったなお前居なくて………」

あの後、様子を見ていた圭に聞いてみたが、どうやら男子のズボンを借りてこいっていうのがお題だったらしい。
桐谷はズボンを脱がされ、ズボンが帰ってくるまで、トランクスでいたらしい。

女子の視線が凄かったのは余談だ。

「全く、会長は……………」







「次はパン食い競争ね」

「うん!!じゃあ行ってくるよ!」

そう言って元気よくライは駆け出していった。

「我も行くか」

「頑張れな」

「…………必ず喰らってみせる……………」

何やらもの凄い気合が入ってるけど大丈夫なのか?






そして、パン食い競争が始まった…………

「あれ?セイン?」

星に言われて見てみると水色の髪の女の子がいた。

「パン食い競争に出るのか………」

そういえばノーヴェやウェンディの出る競技知らないな…………
一体何に出るんだろうか…………

「セイン〜!!一発で食べるっスよ〜!!」

「絶対に負けるな〜!!」

3人共パン食い競争ね…………

「あっ、始まりますよ!」

ピストルの音が響き、競技がスタートした……………





セインはやっぱり戦闘機人なんだろうな……………っと思ってました。

「えい!はあ!」

だけどパンまで全然届かない。

一生懸命ジャンプしてるのは分かるんだ。
それに可愛らしいし。

だけど異常ににジャンプ力が無いんだ………

「はあ!うぅ………たあ!…………ぐす…………」

もうやめてあげて!!セインが可哀想!!

「フェリア、セインって運動音痴なのか?」

「いや、運動音痴では無いはずなのだが…………そういえば、他の2人はともかく、セインはろくな戦闘訓練していなかったな…………」

「それが…………」
「あれなのだろう………」

未だにぴょんぴょん跳ねている。
いい加減下げてあげようよ………………




「ノーヴェ、勝負っス!!」

「負けねえ!!」

さっきのセインは結局、パンを降ろしてもらってゴールした。
暖かい拍手が逆に心に響いたようだ。

今、フェリアに慰めてもらってる。

今度、何か食べさせてあげよう……………


「ようい…………」

パン!!

ピストルの音で一斉にスタートする。

「でりゃあああ!!」
「とりゃあああ!!」

その中でも2人が先頭で到達する。

さて、どのパンを食べるのかと思ったら………

「はっ、とりゃ!!」

「はっ、たあ!!」

何故か2人でパンを手当り次第食い始めた。

一体何をしてんだアイツらは……………


見てる人が全員唖然としてるし……………

「桐谷…………」

「ああ…………」

フェリアは桐谷に声をかけ、どこかへ行った。
ウェンディの奴、さっきので少しは反省したかと思ったが、全然懲りてねえ…………

この後の惨劇を想像して、俺は静かに祈るのだった……………





しばらくして、今度はライの番だ。

ライはさっきの二人みたいな事はしないと思うから問題ないと思うけど…………

ん?何か男子がそれぞれのクラスの最前列に集まっている。

1年から3年まで…………
これってどうよ?

そんなことをしているとレースがスタートした。

流石ライ、2位と結構な距離を残し、パンの所に着いた。

そして……………

「はむ」

パシャパシャパシャ!!

ジャンプした瞬間一斉にシャッターの音が響いた。

コイツら…………

「ボコしていい?」

「思いっきりやりなさい!って言いたいけど、キリが無いから止めなさい」

「それにライが気にしてないのでいいのではないかと思います」

ううっ、星とアリサに止められた…………
だけど、少しは気にして欲しいものだ…………

こっちを見てピースしてるライを見て、俺はそう思った。





「はっ!たぁ!」

何かセインの時を思い出す…………

「くそっ、もう少しなんだ………」

そう、もう少しなんだ…………

あと少し、パンの残りを食べれば…………

最初に食べたのは良かったが、パンを取ることが出来ず、少しずつ、かじっっていった事でどんどん小さくなり………


「はっ!たあ!」

届かなくなったのだ…………


「うぅ………何故取れぬのだ………」

結局、セインと同じで降ろしてもらい、暖かい拍手の中ゴールした。
帰ってきて俺の胸に飛び込んできた夜美を俺は優しく抱きしめてあげた……………










「全く…………本当に兄さんの周りは騒がしいわね…………」

私はC組の女の子と話しながらA組の様子を見ていたけど、相変わらずというか、どんなときもスタンスを変えないというか…………

「あら…………?」

するとあの暑苦しい集団から銀髪の男子が出てきた。

アイツ、今日は来てたのね?
だけど雰囲気変わった?

少し気になったので私は彼に付いていくことにした…………





「ふう…………」

「アンタがため息ね…………」

コイツは水飲み場の横で静かに座っていた。

「!?………何だ、佐藤さんか………」

佐藤さん!?
コイツ私の事馴れ馴れしく名前で呼んでなかったっけ!?

「何か用かい?」
「いや、何か雰囲気が違うから…………」
「そうか………」

そう言ってコイツは下を見た。

「最近になって自分が自惚れていた事にやっと気づいてね。本当に恥ずかしい事をしていたよ………今思うと悲しくなってくる」

苦笑いしながらそう答えた。

「そう、気づいたのね………いかに頭がイタい奴だったって事に…………」
「ハハ、そう言われても反論できないよ」

顔が暗い。
それほどショックでもあったのかしら?

「済まなかったね、俺のせいで嫌な思いをしただろう」
「そうね、本当にうざかったわ」

そう言うと更に顔が暗くなる。

「だけど、あなた変わるんでしょ?だったら見せてみなさい、それで許してあげる。だけど、変わらなかったら……………覚悟しなさい」
「ああ、肝に銘じておくよ」

さて、一応言うことも言ったし、帰りますか。

「あっ、それと………」
「何だい?」
「普通にしてれば、いい男なんだから普通でいなさいよ」

そう言い残して、私はC組の所へ帰った。





「普通か…………………兄妹で同じ事言われたな………」






「ふ〜ん…………」

体育祭も順調に進み、昼食となった。
その昼食も食い終わり、トイレに行っていたら、緑の髪をしたお姉さんに絡まれてるんだけど…………

「美人だな…………」
「あら、ありがとう」

心の中で言っていたつもりが、口に出ていたみたいだ。
お姉さんは嬉しそうに微笑んでいる。

「私ね、あなたに興味があるの………」

えっ!?それって…………

「今度ゆっくり………」
「何やってるの!?」

そんなとき、顔を真っ赤にしてフェイトがやって来た。

「何してるのお母さん!!」

「あらフェイト」

そう言って手を振るおかあ………

「お母さん!?」
「そうよ」

何てこった!!
普通に大学生位のお姉さんだと思ってた………

「初めましてね、リンディ・ハラオウンよ。よくフェイトやエイミィから話を聞いているわ」

エイミィさんとは直接会ったことがないから、ライ辺りから聞いたんだと思う。

「どうも、有栖零治です。家の家族共々フェイトさんと仲良くさせてもらってます」

「こちらこそ、いつもフェイトは零治君の事ばかり………」

「お、お母さん!!」

「もう、忙しない子ね…………」

本当にそうだな。
さっきからあたふたしてばかりだ。

「もう行くよ!!」
「おい、フェイト!?」

フェイトに無理やり引っ張られ、その場を後にした……………

「本当につれない子ね〜」






「ちょっとスポーツドリンク買ってくるな」

「僕の分も買ってきてね〜」
「我のも頼む」
「あっ、なら私のも頼むな〜」
「私も〜」
「あっ、私はお茶でお願い」
「私もお茶で」
「私も…………」

「君たちは、俺が一体何本手があると思ってるんでしょうか!?」

何という無理ゲー!!
ちなみに上からライ、夜美、はやて、なのは、フェイト、アリサ、すずかである。

フェリアは妹達の様子を見てくると桐谷と加奈を連れてセイン達の所へ向かった。


おかげで俺の苦労も……………
って俺パシリじゃ無いよ!?

「私も手伝いますか?」
「………済まない星」

そう言ってみんなと別れて星と自販機へ向かった。






「おっ、零治、星!」

自販機の方に行くとそこにはヴィータとリインが。
あと大人な女性2人……………

「美人だな…………痛っ!?」

俺がそう呟くと、足に痛みが…………
見てみると星が俺の足を踏んでいた。

「どうしたんだ星?」
「…………いいえ、何でも」

フン、とそっぽを向かれてしまった。
一体何だって言うんだ…………

「どうしたんだ零治?」
「ああ、いや何でも………」

ヴィータが俺を見上げて見てきたので、慌てて答えた。

「あら、ヴィータちゃんがそんなになついてるなんてね」
「はぁ!?べ、別に私は…………」

金髪のお姉さんに言われて、慌てて否定するヴィータ。
ああ、こういうのも悪くないなぁ…………

「零治さん、お久しぶりです!」

「おっすリイン、相変わらず元気だな」

「はい、元気です!!」

お〜良い子だね〜
はやての娘とは思えないぜ。

「零治さん、くすぐったいですぅ〜」

おっと、いつの間にかリインの頭を撫でていたみたいだ。
だけど、素直の子は愛でないとな…………

「「……………ロリコン」」

「おい、そこの二人!!そこに直れ!!」

俺をロリコン呼ばわりしたヴィータと星にそう言ったが、そっぽを向かれた。

「確かに俺は素直な子元気な子は好きだが、あの金髪お姉さんみたいな人も大好きだ!!」

そう言って、俺は金髪のお姉さんを指さした。

「えっ!?私ですか!?」

あれ?俺って何気に凄いことカミングアウトしてね?

「ありがとうございます。直接言われたのは初めてです」

嬉しそうに俺に微笑んでくれた。
やべ、めっちゃ嬉しい………

「痛っ!?」

だから何で足を踏むんだよ!!
しかも今度はヴィータも…………

「ハハハ、人気者じゃないか………」

ピンクのポニーテールの女性が少しからかう様に言ってきた。

「からかわないで下さいよ…………それより名前を聞いても良いですか?」

まあ恐らく思った通りだと思うけど…………

「そうだな、私はシグナムだ」
「私はシャマルです」

「それじゃあこっちも。有栖零治です」

「私は有栖星と言います」

「零治君と星ちゃんね、よろしくお願いします」

やっぱり予想通りだったな。

しかしシャマルさんがアニメよりも綺麗に見える………
影薄かったから気がつかなかっただけかな?

「何か失礼な事考えていませんでした?」
「いえいえ………」

危ない危ない。
ヘタな事言ったらリンカーコアぶち抜かれていた…………

「レイ、そろそろ………」

「ああそうだな、これ以上待たせたらアイツら怒りそうだな…………それじゃあ4人共ごゆっくり」

俺と星はそう言って自販機を後にした…………






さて、今日は初めて会う人が多いなと思う今日この頃。

今日の俺のエンカウント率は半端なかった。

「えっと、有栖零治君でいいのかな?」

今度は金髪の男と黒髪の男である。
金髪の男は俺と同世代、黒髪の方は俺より小さいけど、年上だと思う。

「これでも平均はある!!」
「ああ、さいですか………」

ぶっちゃけどうでもいい。

「で、零治君でいいのかな?」

「ええ、そうですけど………」

「僕はユーノ・スクライア、君の事はなのは達に聞いてるよ」

「僕はクロノ・ハラオウン、僕もフェイトから詳しく聞いてるよ」

何やらクロノさんから殺意を感じるのですが………

「そ、そうですか。じゃあ改めまして有栖零治です、よろしく」

取り敢えず握手をしといた。
だけどクロノさん、明らかに強く握ってますよね?

まあ対して痛くないから気にならないけど…………

「で、ユーノはなのはを探してるのか?なのはならフェイト達と先に校庭に行っちゃったみたいだけど………」
「確かになのは達とも話したかったけど、君とも話してみたかったんだ」
「僕もそうだな」

何か、クロノさんの言いたい事は分かる気がする。
恐らく『フェイトとどういう関係なんだ!?』とか聞きそうな気がする。

「僕は一つだけ言いたい事があるんだ。闇の残滓についてとかね」
「………………あいつらに何かするつもりですか?俺の家族に手を出すつもりなら、なのは達の知り合いでも容赦しませんよ…………」

俺は殺気を込めた目で2人を睨んだ。

「い、いやそんなつもりは無いよ。言いたくなければ無理して聞くつもりは無いから。ただ一つお礼を言いたくてね」

「お礼?」

「星ちゃんだっけ?なのはが生きているって話してくれたとき、とても嬉しそうに話してくれたから。なのはは消してしまった事をずっと悩んでいたみたいだったから………」

「僕も似たようなものだ、僕の場合はライだがな。僕自身が手を下したから…………悪い子では無かった。あの時はどうしようも無かったが、君のおかげで敵として話さなくて済む」

二人共気にしてたんだな…………
はやても初めて知った時は似たような反応だったし。

俺が原作介入していたら星達はどうなっていただろう…………
俺は今みたいに彼女達の為に願いを使っただろうか?

IFの話をすればいくら言ってもキリが無いが、今の彼らを見れば俺の選択は間違って無かったと思う。

「「だから、ありがとう」」

そう言って2人は俺に頭を下げた。

「そんなことしなくていいよ。俺がしたいからしただけだから。しかし……………」

俺はユーノを見た。
顔を上げたユーノは俺に見つめられて戸惑っている。

「なのはの事をよく見てるよな…………もしかしてなのはが好きなのか?」
「やはり気がつくか。コイツはずっと片思いでな、まあなのはの方が気がつかないのもあるが………」

ああ、確かに朴念仁だよななのは…………



………………なんだよ、何見てんだよ………

「違うよ、僕はただ単になのはの事を恩人として………」

「はいはい、分かった分かった。こんな感じで仕事優先の2人がくっつくのは当分先みたいなんだが………」

「…………そう思うなら仕事回さないで欲しいね」

「うっ!?」

この後も時間ギリギリまで3人で話していた。
意外と楽しく、今度は男だけで集まろうとも約束もした。
友好的だったクロノさんとユーノだったが、クロノさんにはちゃんとフェイトに関して忠告されました……………








「さあ、次は団体競技だ!!女子の棒引き!!我らがクラスの美少女達が戦乙女になる瞬間である!!皆、カメラの準備は万全か!?」

さて、後半が始まり、我らがクラスのSBS団。
見事にウェンディにお株を奪われていた神崎だが、元の総帥?の位置に着き、皆の士気を高めていた。
迷惑極まりないけど…………

相変わらず前の方を占領しており、校庭が見えないため、隣の桐谷のクラスで観戦することになった。

「相変わらずやかましいな…………」

「仕方ないだろ、あれはもう諦めるしかない………」

そう言って桐谷は俺のスポーツドリンクを取り、飲む。
っていうか飲みすぎ!!

「良介はそれより気になる事があるよな?」
「な、何が………」

圭が良介にニヤリと話しかける。

「何か気になる話だな………」
「俺も興味あるな、詳しく教えろ圭」

俺と桐谷も近づいて、耳を立てた。

「あのなコイツ、坂巻の事が心配で心配で、弁当食べた後からあたふたしてたんだよ。何度も大丈夫かって聞いて。流石の坂巻も『うるさいから良君黙って!!』って言われてしょぼんとしてやんの!」

そう言って腹抱えて笑い出した。
よっぽど普段見ない光景だったのだろう…………

確かに坂巻が怒る光景なんて思いつかない。
いつも明るく、ちょっと天然みたいな印象だからな…………

「その後もしょぼんとしながら説教されてんの、あの時の顔といえば………」

そう言ってまた笑い出す。
こりゃ止まらないかもな…………

「おい、始まるみたいだぞ」

桐谷に言われ、俺達は校庭に目をやった………








結果だけ言おう。

1組は負けた。
敗因は恐らくただ単に力不足なのが一番の影響だろう。

しかも相手のクラスは4組。
男子で一番なりたくないクラスナンバー1のクラスだ。(会長調べ)

その理由は……………

「勝ったわー!!!」

ガタイの良いゴリラ女が抱き合っている。
あれは中学生じゃないと思う。

だって、棒を3対1でも引っ張って行くんだぞ!?
それにどう勝てと……………

「ごめん、勝てなかったわ…………」

落ち込みながら帰ってくるアリサ率いる女性陣。

「相手が悪かったさ、お前らの仇は俺達がとってやる!!」

そう、次は男子の騎馬戦があるからだ。
これで女子の敵をとる!!








「だ、駄目だ!!仲元の班もやられた!!至急増援を…………ぎゃああああ!」
「森本ー!!」

5メートル先の森本の騎馬が、相手に潰される。

「これで、もうこっちは3割しか残ってないぞ………どうする?」
「どうするって……………」

どうしろと?
中心で暴れている怪物達に目をやる。

騎馬3人を体の大きいデブで固め、上に乗せる男子は手の長い男子。
攻守とも完璧な騎馬隊が無双してる。

しかも5組もあるのだ。
これでどうしろと……………

「か、加藤君、助け…………」

そう言いかけて、先にいる桐谷のクラスの騎馬がやられる。

「取り敢えず怪我しないように逃げてようぜ」

俺の騎馬隊は先ほどの気合など忘れて、ずっと逃げ回っていたのだった……………








「やはり、見事に赤組負けているな…………」

夜美が予想通りみたいな言い方で言う。

この学校の赤組と白組の分け方だが、A、B、C組とD、E、F組で前半後半で分かれている。
さっきの桐谷もその影響だ。

「そうだね、ボロボロだね…………」

ライの言うとおり、結果は散々である。

ちなみに結果だが…………

赤組    白組

550   1250



実に700点も違うのである。

「逆転するには団体競技をもう落とせないな…………」

後ある団体競技は大玉転がしとリレーのみである。

大玉転がしは1位が50点、2位が30点、3位が15点。
リレーは1位が100点、2位が50点、3位が30点なので全て1位2位3位を取らないと逆転出来ないくらい追い込まている。

「後は会長のアレか…………」

会長の提案した障害物走。あれが勝負の鍵となる。
一体どれくらい点を貰えるか分からないが、会長の事だから難しい分、高得点だろう。

ここまで来たら絶対に勝ちたい。

「取り敢えず、大玉転がしを頑張らないとな。星頼むぞ」

「えっ!?私ですか?」

「まあやれば分かる」

この作戦なら必ずうまく行く自信がある。
俺はそう確信して、3人と共に待機場へ向かった。








「で、何故私だけ省かれてるのでしょか?」
「星がそこにいることに意味がある」

そう星に言うが、星は大いに不満そうである。
まあそれもそうだろうが…………

何故ならクラスで列を作ってるその先に星がいるのだ。

要するに校庭の中心に一人ぼっち。

皆に注目されてるだろうな…………

「ううっ、恥ずかしい…………」

「これもクラスが勝つためだ、我慢してくれ」

「くう…………」

星は顔を赤くしながら覚悟を決めたのか、文句を言わなくなった。

「零治、うまくいくかしら?」

アリサが心配そうに話しかける。

「大丈夫、星はある意味ボールに愛されてるから」

こうして大玉転がしが始まる。







ここで俺たちの学校の大玉転がしのルールを説明しよう。

此処の学校の大玉転がしは、下に置いて転がすのではなく、クラス全員で道を作りその上を大玉を転がすようになっている。
落ちたら列の横にいる支える係の人がボールを列に戻し再開。カラーコーンを回り、一番速く帰って来たクラスが優勝である。

ちなみに俺は玉を支える係になっている。

「よーい…………」

パン!
ピストルが鳴り、大玉転がしがスタートする。

まずはクラスの列に玉を乗せる作業だが………

「よし、乗った!!」

回りのクラスより一番速く乗せることができた。

「よし、みんなここから速いからダッシュで新しい列を作ってくれ!!」

予めクラスのみんなには星のレアスキル?を説明しといた。
要するに星を前の方へ置いて、ボールを先導してもらうのが今回の作戦だ。

「よし、予想通りだ!」

ボールはまるで吸い寄せられるように星に向かっていく。
スピードも下の奴等が速く転がしているので速い。

「よし、カーブだ」

一番の問題はカーブだ。
玉が素直に下の道を進むとは考えられない。

俺たち支える係はすかさず列の横に行き、カーブ中に落ちないようにささえる。
玉は予想通り星の方へ行こうとしたので一生懸命支えた。

「カーブ終わったぞー!!」

一番後ろにいた圭が叫んだ。

「よし、後は直線だけ!!みんな、気合い入れていくわよ!!」

「「「「「「「「「「オオッー!!」」」」」」」」」」

アリサの号令にみんなも気合いが入る。
そして………

パンパン!!

ゴールを伝えるピストルの音が響いた。

「やったあああ!!皆さん、1位ですよ!!」
「ああ…………そうだな…………」

1位になった事に大喜びの星。

ただ………

「はぁ………はぁ…………」
「ふぅ……………」

他のみんなはバテバテでした。
玉のスピードが速かったため、みんな慌ただしく動いていた。

その結果、元々は余り運動神経が良いクラスでは無いので、殆どの人が疲れていた。
この後の競技に個人競技が無くて助かった。

これで個人競技があったら大変な事になっていただろう…………

「取りあえず大玉転がしは何となったな………」

しかし、逆転するには障害物走もリレーも落とせない。

「気張んなきゃな………」

俺は静かに気合いを入れた。







『障害物走にエントリーした生徒は待機場へ集まって下さい。今から準備に入ります。他の人は校庭には決して入らないで下さい』

障害物走について放送が流れた。
とうとう会長の企画が始まる。

どのようなものかは未知数だけど、ここまで来たらクリアするしかない。

「零治、ライ、行くぞ」

桐谷がわざわざ迎えに来てくれた。
そこにはノーヴェとウェンディもいる。

「はーい!」

「ああ…………ってウェンディやノーヴェも出るのかよ…………」

「当たり前っス!!こんな面白そうな企画、参加しないわけにはいかないっス!!」

「私も面白そうだからな」

戦闘機人が出ていいものか…………

「まあいっか」

俺は余り気にせず待機場へ向かった。






「みんな、よく参加を決めてくれたわね。これから競技の説明に入るわ」

待機場に集められた選手達ちょうど25人に、会長はマイクを使って話しかけた。

「今回の障害物走はマッスルレジェンドみたいな事をしようと思ったんだけど、流石に理事長から許可が下りなかったのよね………」

少し残念そうに言う会長だが、俺達にとってはありがたい話である。

「だからみんなには着ぐるみを着てやってもらうわね」

みんな、えっ!?って顔をしてる。
何でそこに行き着いた!?

「それじゃあ説明するわね。着ぐるみは脱いだ時点で失格。制限時間内であればいくら失敗しても、その場所から何度でもチャレンジしていいから。だけど平均台だけは落ちた時点で失格ね」

ルールを聞いてみると平均台以外はそこまで難しい場所は無い?

「制限時間は5分、一気に5人スタートしてもらうわ」

まさかの複数か…………

「因みに妨害もOKだから、各自好きなようになさい。種目の説明はあっちに行ったら軽く説明するわ。説明は以上よ。それじゃあみんなここにあるくじを引いてね」

そう言われ、選手達はくじを引いた。

「そこに書かれてる番号があなた達の着る着ぐるみの番号と、順番ね。今から呼ぶ番号の順番に競技をしてもらうから」

そう言って、番号を順に読んでいく。
番号はバラバラなようで、恐らくランダムだろう。
ちなみに順番はライは3番目、ウェンディ、ノーヴェが4番目、俺と桐谷が5番目だ。

「それじゃあ、あっちのテントに行って着替えてきて」

そう言われ、俺達選手はテントへ向かった。





「さて、俺の着ぐるみは…………」

番号を探しながら着ぐるみを見てみる。
動物からアニメキャラ、ご当地ゆるキャラなど多種多様である。
しかし、どれも動きづらそうだな………

「おっ、あったあった」

そんな事を思っていると、俺の番号を見つけた。
しかし…………

「マジかよ…………」

俺はこの後、この障害物競争の過酷さを思い知る事となる……………






さて、着替えて出てみると多種多様な着ぐるみ達がいた。
歩きづらいのか、倒れる人が続出している。

これ、競技になるのかな?
しかし、誰が誰だか全然分からない…………

「レ〜イ〜、どこ〜?」

「ライ?俺はここだぞ!」

そう言って一生懸命手を振ってみる。

「あっ、レイ〜!!」

近いところでライの声がした。
どうやら近くにいるみたいだ。

「ここだよ!」

そう言われ、1つの着ぐるみに目を向けた。

猫の着ぐるみがコミカルな動きをしながら近づいてくる。

「へぇ〜、ライは猫か」

「うん!可愛いでしょ!」

そう言ってにゃ〜おと鳴いて見せた。
……………着ぐるみで残念だと思ったのは秘密だ。



「レイは犬だね」

そう俺は犬。
結構デザインもかっこいいので結構気に入っていたりする。

「かっこいいね!」

「だろ?」

しかも、結構動きやすい。
他の人達を見ると、足が極端に短い熊や、両手に羽がついている鳥、背中が重そうな亀などバランスの悪そうな着ぐるみもある。

「僕達ラッキーだね…………」

「そうだな…………」

「零治〜ライ〜」

今度はノーヴェの声が聞こえる。
俺達は辺りを見てみると、直ぐにノーヴェを見つけることが出来た。
ただ……………

「うわぁ…………」
「流石にこれはな………」

俺とライは大いにドン引きしていた。

ノーヴェの格好は白タイツに大きな星の被り物。顔は丸い穴からしっかりと出ている。
着ぐるみ?とも思うが、恐らく会長の遊び心だろう。

「おい、どこだよ…………返事してくれよ……………」

無視されたと思ったのかノーヴェの声が涙声になってくる。

「ノーヴェ、ここだよ!!」
「だから泣くな!!」

いつも強気なノーヴェが泣き顔になっているのはとても珍しい。
それほど恥ずかしいんだろうな…………

「こんな事ならフェリア姉の言う通りにしとけば良かった…………」

「まあ競技が終わるまでの辛抱だ」

「それまで頑張ろう!」

「うん……………」

その後ノーヴェは障害物走が終わるまでの間ずっとテンションが低かった………





「レイ兄〜!!ライ姉〜!!」

トラブルメーカーの声が聞こえてくる。
相変わらずテンションは高いようだ。

「ウェンディ、お前は………」

そこで俺は続きを声に出せなかった。

「レイ、どうし…………」

どうやらライも同じ心境みたいだ。



だってそこには口が大きく空いた半魚人がいたのだから…………






「いやぁ、偶然ってあるんスね〜」

「お前何か会長と企んでたろ…………」

「そんな事無いっスよ…………」

だけどそっぽを向くお前の様子を見るとどうしても信じられないのだが…………

「そういえば桐谷兄はどうしたんっスか?」

「そういえば…………」

「見てないね…………」

確かに見てないな…………
と言っても見た目じゃ分からないんだけどな。

「なあ零治?」

「何だ?」

「あれじゃね?」

そう言いてノーヴェの指さした方を見てみると、大きなマフラーを着けた、戦隊物の赤がポツンと座っていた。

「まさか…………ね?」

「だ、だけどあれって動きやすそうだよ!!」

確かに俺やライみたいにちゃんとした着ぐるみを着ている訳ではなく、ノーヴェみたいに被り物を被ってる訳でもない。
どっちかと言えばコスプレだと言えるだろう。



だけど……………

「俺は絶対に着たくないな」

何だかいい大人がコスプレしてるみたいで勘弁してほしい………

「桐谷か………?」

赤い戦隊物の人に恐る恐る声をかけるノーヴェ。
名前を呼んだ瞬間ビクッ!っと反応したのを俺は見逃さなかった。

「桐谷、お前まさかそんなものに当たるとはな……………良かったじゃないか、小さい時の夢はカOレンジャーになるのが夢だったよな…………」
「お前は何、人の恥ずかしい過去をカミングアウトしてんだ!?」

ほら桐谷だ。

「本当に桐谷だったんだね………」
「はぁ!?何を言って……………あ」

気づいた桐谷は頭を抱えてうずくまった。

「いやぁ〜桐谷兄にも可愛い頃があったんスね〜」

ニヤニヤしてるか分からないけどからかう半魚人。

「ウェンディ、お前今日の晩ご飯ふりかけだけな」

「ちょ!?流石にご飯とふりかけとか鬼畜っス!?」

「誰がご飯と言った?ふりかけだけと言ったはずだが?」

「ごめんなさいっス〜!!」

半魚人が土下座した。

この光景を見ると、怪物を謝らせてるヒーローの絵面みたいだ。

「は〜い、皆さん着替え終わったでしょうから、並んで〜!これから移動するわよ〜」

会長の指示があったため、俺達は自分たちの場所に戻った………………







校庭に移動した俺達は会長の本当に軽い説明を受け、最初の選手が各コースに着いた。

各障害物は全部で5個。
うんてい、ダンボール潰し、平均台、ミニ反り立つ壁、最後に麻袋だ。
っていうか麻袋着れるのか?

『さて、ここからは2−A組、八神はやてが実況を勤め務めさせていただきます!!まずは選手紹介です!象の着ぐるみを着ているのは…………3−D組川上君です!!』

どうやら一人ずづ紹介していくらしい。
まあそうしないと顔が分からない着ぐるみが多いからな………


『最後は………2ーA組、神崎大悟君です!』

はぁ!?あいつも出てるのか!?

「頑張れー!!総帥!!」
「我らの意地を見せてくれー!!」

SBS団が必死に応援している。
ちなみに神崎が着ている着ぐるみは電気ネズミ。

ぴょこぴょこと手を動かし、声援に答えている。
……………ってうんてい出来るのか?

「よ〜い…………」

パン!

こうして競技は始まった……………









そもそも最初のうんていが既にレベルが高くなっている。

『おーっと?未だにクリア者は無し!しかもうんていを超えられたのは神崎君ただ一人だ!!』

そう、神崎だけしかうんていをクリア出来てないのだ。
小さい腕ながら何とか渡りきってた。

ちなみに神崎は平均台まで進んだ。
平均台で横から飛んで来たバレーボールが脇腹に直撃し、その勢いで隣の平均台に頭を打って、今は保健室にいる。

『さあ、この難易度が高い障害物走をクリアするものはいるのでしょうか!!』

テントから身を乗り出し、実況するはやて。
そこから3レース目の選手紹介が始まった。




『さて、猫のぬいぐるみを着ているのは………2−A、有栖ライさんです!!』

歓声がどっと湧いた。

パン食いの時もそうだが、ライの人気はもの凄く高い。
美少女だけでなく、巨乳ってのもアドバンテージになっているのかもな…………

「よ〜い…………」

パン!

ライの組もスタートした…………







『おおっと!ライさん、うんていも軽々クリアした!!』

これは流石としか言いようがない。
着ぐるみを着ているにも関わらず、動きが余り変わらない。
視界だって着ぐるみを被っているので狭い筈、それなのに…………

「凄いなぁ…………ライ」

「そうっスね…………」

戦闘機人の二人を唸らせるとは…………
次のダンボール潰しも難なくジャンプして潰している。

「次が問題だな…………」

桐谷がそう呟く。

そう、次は平均台。
神崎の時も思ったけど、結構鬼畜だ。

バレーボールの玉は結構なスピード出てるし、平均台の上でしかも着ぐるみを着てる。
マイナス要素しかない。

「よっ!………とと………てい!」

コミカルな感じの声が漏れてくる。

いやいや……………
その声とは違って、着ぐるみの猫が華麗に平均台の上で踊っているんだけど…………

「ありえないだろ…………」

俺もそう思うぞ、桐谷。
何で着ぐるみであんな動きができるんだろうな…………

余りの華麗さに、校庭全体が静まりかえってる。


その後もライは問題なく進んで行き…………

パンパン!!

ライは30秒も残してクリアした。



『凄い!!凄すぎるで!!ライちゃん化け物ちゃうんか!!』

はやても素になってるし…………








『さあ、4組目です!!始めは星の人…………1−C組、ノーヴェ・イーグレイさんです!!』

自己紹介されて、顔が真っ赤になるノーヴェ。

『次の半魚人は………………同じく1−C組、ウェンディ・イーグレイです!!』

「ギャオオオオオオオオー!!」

怪獣みたいな鳴き声を上げるウェンディだが、半魚人って怪獣か?



こうして、4組目もスタートした。






「ここは余裕だな」

みんなは着ぐるみを着てるが、私は被ってるデカイ星が邪魔なだけで、後は普通に動きやすい。
白タイツはめっちゃ恥ずかしいけど………………
ふと、後ろを見てみると、半魚人が付いてきていた。

まあ流石私の妹ってとこだな。
だけど半魚人が付いてくるってかなり怖いな…………


その後のダンボール潰しも簡単にクリアした。

ウェンディも問題無くクリアだ。

しかし、私達以外の3人はうんていでリタイアみたいだ。
何度も落ちて、やり直してを繰り返し、諦めたみたいだ。

だけど私達も……………

「準備は良いかウェンディ?」

「モチっス!!」

「よし、それじゃあ行くぞ!!」

私はウェンディと同時に平均台を渡り始めた。

平均台は3つ並んでいる。
ボールを発射する機械は横から発射しているため、真ん中が一番有利なんだけど…………

「私が右を行くっス!!」

……………これほど妹をバカで良かったと思った事はない。

しかし、反対側の玉除けに私もなっていることに後で気がついた…………





「反り立つ壁っスね…………」

時間も3分切り、ちょっと余裕が無くなってきた。
さっさと行かないと間に合わなくなる…………

「私から行くぞ」

一回勢いを付けて…………
思いっきり走った。


ガン!!

「ふぎゃあ!?」

頭の星が反っている部分に当たり、そのままずるずる落ちていってしまった………

「何やってるんスか………私が先に行くっス!!」

そう言ってウェンディ軽々上に登り、先に行ってしまう。

「くそっ、私だって!!」

そう思いもう一度チャレンジするが、また頭をぶつけ、結局クリアすることは出来なかった………


ゴールしたウェンディのドヤ顔がうざくて殴ったけど、悪くないと思う。









「さて、次は俺達の番か…………」

そう呟き立ち上がった。

ハッキリ言ってクリア出来るか微妙だ。
ライみたいに着ぐるみ着て動ける自信が全く無い。

「おい桐谷はクリアする自信あるか?」

と聞いてみるが、隣にいるはずの桐谷がいない。

「嫌〜だ!!俺は棄権する〜!!」

係の生徒に止められていたが、もの凄く必死だ。

「珍しい…………よっぽど恥ずかしいんだな…………」

結局会長の手により無理やり引っ張られていた。





『さあ、あの可愛い犬の中には獣が潜んでいる………女の子は貞操に気を付けてください。あっ中身は次期生徒会長候補2−A組有栖零治君です!!』

「はやてー!!後で覚えてろよー!!」

なんちゅう事言ってやがんだあのたぬき………

『次は、わが校1、2を争うイケメン2−B組加藤桐谷君です!!今日はシャインレッドになっております!!』

シャインレッドって言うのか………………

ヤバイ、小さい子の黄色い声が凄い。
人気みたいだな。

「桐谷、意地でも負けられないぞ………」

「もうこうなりゃヤケだ………」

そんなこんなで最後の組みがスタートした………







「もうやだ…………」

俺は平均台の前で心が折れかけていた。

うんていは着ぐるみで滑るのを何とか耐えてクリアしたが、その後のダンボールが苦痛だった………


「あははははは!!面白ーい!!」
「かわいいね、あのワンちゃん」
「頑張れワンちゃんー!!」

ダンボールを潰そうとして、ジャンプした俺は潰して転んでを繰り返していた。
その内みんなから応援が…………だけど心にかなりきてます。

ちなみに桐谷はさっさと先に行ってしまった………

「くそ、こうなりゃヤケだ!!」

俺は犬の格好で平均台の上に上がった。

ボン!!

ドン!!

「ぐふっ!?」

俺は登って直ぐに平均台から落ちた……………







「もう疲れた………勝敗なんてどうでもいいや………」
「さっき言ってたこと全く違うね…………」

なのはが呆れながらそう言う。

「それほど障害物走に堪えたんだろう………」

フェリア、この気持ちはやった本人達しか分からねえよ。

「そうかな?僕は楽しかったけど………」
「俺はもうやりたくない…………」

あの後桐谷は無事にクリアした。
クリアした後、小さい子達に大人気だった。

羨ましいなんて思ってないからな俺………

「それより次が最後よ。みんな、頑張ってね」

なのはに声援を送ってもらって、混合リレーの選手は待機場へと移動した。






「なんだかんだ、逆転可能の点数差だもんな…………」

障害物走のクリアはライ、ウェンディ、桐谷と全員紅組で150点が加算された。
そして、男子女子とリレーを何とか前半のクラスが制し、逆転可能な点数差まで来たのだ。

「1年も頑張ってくれたおかげで、ここで俺たちが勝てたら勝利は確実なものになるからな…………」

「そうだな………ここで決めて3年生に楽をさせてやりたいな…………」

圭も頷きながら言う。

そうだよな…………こりゃあ最後まで気張るか。

「よ〜い…………」

パン!


ピストルの音がなり、フェイトがスタートした…………




「お願い!」
「任せろ!!」

フェイトからバトンを受け取った圭が走る。
フェイトは他の女子を離し、1番でバトンを渡した。

ハッキリ言って、女子は問題が無い。
ただ、男子に問題があるのだ………

「圭!!抜かれる!!気張れー!!」

俺達1組は男子リレーは何とか3位で終われることが出来たが、結構満身創痍だったりする。
特に圭は男子で一番速いので一番プレッシャーがあったと思う。

「くそっ………」

圭は4組の男子に抜かれてしまった………
確か陸上部のエースだったような気がする。

何とか2位を守って、ライにバトンを渡すことができた。
しかしライは流石としか言いようがない…………

圭が抜かれたクラスを直ぐに抜き返し、また単独1位となった。

「神崎、しっかりな」
「おう任せろ!!」

そう返事をして元気よくコースに入る神崎。
空回りしなきゃいいけど…………

「お願い!」
「了解!!」

バトンを受け取った神崎はすぐさまダッシュ。
ライが開けてくれた差を縮めまいと必死に走っている。

他のクラスの男子も速いが、抜かれることはなさそうだ…………
神崎も無事、夜美の所へ…………

「あっ!?」

っとそこで神崎が転んだ。
あのバカ…………

「早く!!」
「す、済まない」

神崎は直ぐに立ち上がり、バトンを夜美に渡したが、差は一気に縮まってしまった。

「さて、これだと俺と零治の戦いになりそうだな…………」

そんな感じで宣戦布告をしてきたのは子供にも大人気になった桐谷。
不敵な笑みを浮かべて俺に言った。

「そうだな、だがただでは負けねえよ………」

だが、そこまで言われたら俺だって負けたくない。

「面白い………」

そう言い合ってコースに向かった俺達。
夜美は何とか1位をキープしてるが、差はもう全然ない。

「夜美!!」
「頼む!!」

バトンを先に受け取ったのは俺だ。
俺は直ぐにダッシュする。

最後は200m。
意外と長く、ペース配分も重要になってくるが、俺は最初からとばした。

「お願い加藤君!」
「ああ、絶対に勝つ!!」

そして桐谷もその後直ぐにスタートした。


「直線なら負けん!!」
「俺だって、簡単に抜かれるか!!」

桐谷は50mを俺より0.4秒ほど速く走れるが、カーブが少し失速する。

そこを狙ってダッシュをすれば…………

「くっ!?」

「このまま行かせてもらう!!」

半周した所で、早くも桐谷がジョーカーを切ってきた。
要するに全力で走って来たのだ。

「こっちだって!!」

俺も負けじと全力で走る。
俺の利点はスタミナ。

200m位ならペース配分を余り気にせず、全力で走れる。

「絶対、負けない!」

2度目のカーブを抜け、後は直線のみ。

「「うおおおおおおおおおお!!」」

俺と桐谷は大体同時でゴールした。

「「どっちだ!?」」

結果を求める俺達だったが…………

「あなたたち2人は結果何てどうでもいいでしょ…………あなたたちの活躍のおかげで紅組の優勝は確実よ」

「「あっ………」」

会長に言われて思い出した。
俺たちが同じ紅組だって事をすっかり忘れてた。

まあ燃えたし、楽しかったからいいんだけど…………



結局紅組は会長の言うとおり、優勝した。

クラスの所に戻ると、クラスの声援で迎えられた。

「お疲れ様です」

「おしかったな、最後………」

星とフェリアに迎えられ、フェリアにはさっきのリレーの事を言われた。
結局、少しの差で桐谷に負けてしまった。

…………今度から少し走ろうかな。

「でも良かったです…………みんな嬉しそう」

星の言ったとおり、クラスはかなり盛り上がっていた。

「ああ、そうだな………」

この後、クラスで打ち上げをして盛り上がった。
SBS団も友好的だったのが一番の驚きだった………… 
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