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繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
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06.そうだ、刑務所に逝こう。
  最終回…………

 
前書き
第三者視点……って言えばいいですかね? 

 
 琴葉と聖月、そして黒と白のレンは揃って真剣な顔をして、互いの顔を見詰めあう。忘れない様に。


 二人は"黒い"正義の組織の、頭領と上級構成員として。
 二人は"黒い"刑務所の、看守と囚人として。


 似ても似つかない二つの世界で、此れから生きて行く。


「最後、写真撮る?」琴葉がカメラを取り出して、黒髪のレンの横に、白髪のレンを立たせる。そして、問答無用で、慌てる二人を画面に収める。「ふふっ、面白い表情(かお)
「も、もう一回、撮るならしっかり撮ってください‼」白髪のレンが言うと、琴葉はもう一度カメラを構え、「はい、チーズ」と言ってシャッターを切る。

「今度は俺が撮ってやるよ」黒髪のレンが琴葉の手からカメラを取って、琴葉を聖月の隣に並ばせる。琴葉は驚いた表情をしながらも、聖月と揃って顔の横でピースを作り、満面の笑みを浮かべる。「はい、ちーず」
「あの、今撮った写真、貰っていいですか?」無理なお願いだと考えながらも、聖月が問うと、琴葉は能力で写真を現像する。四枚の写真が出来上がり、二枚を聖月に、二枚を黒髪のレンに手渡す。


「もう一つプレゼントが在るんだ」


 琴葉は外套のポケットに手を入れ、その中から一つの球を取り出す。飴玉の様な小さな球は、赤く光り輝いている。それを聖月の胸元に近付けると、一瞬、球が強く光り、しゅわっと音を立てて消える。

「えっ!?」聖月が狼狽えていると、琴葉がにこにこと笑みを浮かべて、聖月に言う。


「私の小指と、君の小指を見詰めて御覧」


 言われたとおりに聖月は、琴葉が差し出した小指と、自分の小指を見詰める。段々目を凝らしていくと、其処に黄緑色の糸が見えてくる。

「黄緑色の糸が見えます……」聖月が不思議そうにしていると、琴葉は淡々と告げる。


「此れは、人と人を『繋ぐ』糸。沢山の色があり、それだけ意味がある。例えば、黄緑は"信頼、友情"。黒は"危険、死"。そして、赤は"運命"。此の糸は普通なら見ることは出来ないけど、糸を見る能力がある者には見ることが出来る。その能力を持った者は、此の糸を手繰り寄せて、相手を引き寄せたり、此の糸を切って、相手との関係を切ったりすることが出来る。君は、糸を切って周りの人や自分を危険から守ると良いよ。糸を切れば、周りの人を守れる。だから、君にピッタリな能力だ」


「……琴葉さんにも見えるんですか?」静かに聖月が問うと、琴葉は自信満々な表情を浮かべる。
「嗚呼、勿論。良く見ると分かると思うけど、私の指には沢山の糸が絡まっているんだ」

 聖月が目を凝らして琴葉の手を見ると、其処には大量の黒いと青い糸が。其の糸が手袋のようになっている。だが、何本か黄緑の糸がある。此れは、きっと仲間と、聖月に繋がる糸。その内の一本が、白髪のレンの指に絡まっている。

「あ………」突然、嬉しそうな表情を浮かべる聖月。黒と青と黄緑の糸の中に、一本しかない糸を見付ける。「赤い糸!」
「あはは……見付けられちゃったかぁ………」頭の後ろを掻きながら、苦笑を浮かべる琴葉。「黒赤のレン君、ちょっと手出して」
「ん? 何だよ」黒いレンが不思議そうに手を差し出すと、それを琴葉が取る。
「若しかして………琴葉さん!?」顔を赤く染めて、声を上げる白いレン。

「聖月さん、よーく見てみ」

 琴葉に促されて、聖月が黒いレンの指を見ると、其処には一本の赤い糸が。其れを辿っていくと、直ぐに其の糸の終わりに辿り着き、そして顔を赤くさせる。

「なっ……狙ってましたね!」
「くふふふ………何のことかなぁ」

 二人のレンが訳が分からないと、琴葉と聖月を見ていると、急に琴葉は白いレンの手を握る。


「会いたくなったら、何時でも此の糸を手繰り寄せて御覧。きっと、不思議なことが起きるよ」


 琴葉がそう言い終わると同時に、二人の躰が眩い光に包み込まれる。あまりの眩しさに聖月と黒いレンが目を瞑ってしまう。
 光が失せ、二人が目を開けた時には、既に琴葉と白いレンの姿は何処にも無かった。



 二つの世界が交わり、別々の世界に住む住人が交わる。
 それは普通有り得ないことだったが、彼女達にはきっと「有り得ない」なんて存在しない。
 それが、糸の力なのだから。



  ◇ ◆ ◇



「あの、フランさん?」
「何だい?」
「如何為て私は貴方の膝の上に居るのです? そして撫でられているのです?」
「いーじゃないかー。丁度一ヶ月前、君のお願いで向こうに行かせてあげたんだし」
「まぁそうですけど」

 朝からベタベタと琴葉に張り付くフラン。相変わらず、此の態度は変わらない。

 別世界に行って、軍と戦ったあの三日間から、もう一ヶ月が経った。
 琴葉達の世界は、何事も無かったように廻っていた。

「……何か、可愛くなったよねぇ」
「…………如何言うことですか」
「自分の気持ちに素直になったのかは知らないけど、私を拒まなくなったよね」
「嗚呼、それですか」

 琴葉は静かに自分の手を見る。糸を見ることが出来る能力を意識しながら一度瞬きすると、其処に何百もの糸が現れる。次は赤い糸を意識しながら、もう一度瞬きすると、糸が一本に減る。赤い糸の一本に。
 ゆっくりとその先を辿っていくと―――

「どーしたの? 琴葉」
「え? 何も無いですよ? というか、もう呼び捨てデスカ」

「琴葉って、『運命の赤い糸』って信じてる?」

 ―――嗚呼、また唐突に痛いところを突いてくる。

 琴葉はゆっくりとフランの頬に手を添える。そして目を合わせ、一度瞬きをする。

「…………ねぇ、一つ聞いて良いかい?」フランは驚いた顔をして、琴葉の手を見る。「君の小指に赤い糸が見えるのは気の所為かい?」
「残念ながら、また新しい能力を覚えまして。此の様な糸を見ることが出来ます。使い熟せば、念じた相手にだけ、一時的に糸を見せることが出来ます」琴葉はフランの膝の上から下り、目の前に立つ。

 フランは直ぐに自分の手を見る。小指には赤い糸が絡まっており、直ぐにその先を辿る。そして、パァと顔を明るくして、琴葉に抱き付いた。

「ふふふ、矢っ張り琴葉は可愛いねぇ!」
「フランさん、痛いです……」
「矢っ張り、私と君は結ばれる運命だったんだ!!」
「分かりました、分かりましたから離して下さいよ………」

 否定する琴葉だが、その口元には笑みが浮かんでいた。

「琴葉、愛してるよ」
「…………仕方ないですね。フランさん、好きです」
「駄ぁ目」
「……………フランさん、愛してます」
「良く出来ました。じゃあ、君には御褒美をあげよう」

 フランがパチンと指を鳴らすと、琴葉の後ろでドタドタと、物が落ちる音が。


「…………あれ、ここは……?」
「いってぇ!! 何があった!?」
「ちょ、レン騒ぐなー! 頭に響くじゃん」
「待て、理解が追い付かない」
「聖月ちゃん、ここどこなのー?」
「って、何かワープしたんじゃね!?」
「僕、心当たりが一つあるんだけど……?」
「あ、僕じゃ無いよ!?」


 それを見て、琴葉は顔を青くした。落ちてきた物も顔を青くして、琴葉達を見た。

「聖月さん……といつメン的な存在………?」
「琴葉さんの…………運命の人じゃないですか!!」

「やぁ、組織の首領で、琴葉と赤い糸で結ばれている相手であり、吸血鬼のフラン・レミナスだ」

「わぁぁあああ!!? フランさん、何言ってるんですか、あと離して下さい!!」
「わ、マジか! 赤い糸ってホントに存在するのかぁ!」
「ひゅー!」
「わーわー」
「琴葉さんの相手がようやく分かったぁ……一ヶ月ずっと考えてたもん」
「え、何考えてるの!? 聖月さん!」


「まぁ、取り敢えず君達八人は、部屋を用意してあげたから、頑張って一ヶ月間生き残ってね!」
「え?」
「此処で鍛えてねってこと!! じゃ、頑張ってねー!!」


 
 

 
後書き
はい…………




   未だ続きます。





 
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