繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
06.そうだ、刑務所に逝こう。
第12回
前書き
聖月視点
琴葉さん達が刑務所から去って行った次の日の朝。
私はけたたましい"銃声"によって、眠りから引き起こされた。
「ウソ………なんで?」
状況に頭が追いつかない。
だって、軍の構成員は昨日全滅したはず。まだ残党が残っていたのだろうか。でも、その状態で琴葉さんがどこかへ言ってしまう事なんてあり得ない。
兎に角急いで着替え、大急ぎで看守寮を飛び出す。
だが、一舎に入ったときにはもう遅かった。
「いや………うそでしょ…………?」
囚人達は鉄格子掴み、必至に揺らしている。ガシャガシャと音が鳴り、不気味な雰囲気を醸し出す。
もう通路の向こう側に軍の構成員が群がっており、手遅れという言葉が頭に浮かぶ。
看守を呼ぶ声と、囚人達の悲鳴が混ざり、一つの不協和音となる。
急いで真横にある看守室に入り、昨日撮った写真を見る。既に印刷されている物だ。
琴葉さんが来てくれるかも知れないという、淡い希望を胸に、写真を拾い上げた。が。
「どうして…………?」
その写真に映っているのは、私だけだった。
琴葉さんの姿が写真から消えている。
『でも、意味無いかも知れないよ?』
ああ、そう言うことだったのか。
琴葉さんはこの世界の人じゃ無い。だから、この世界から去った瞬間に、存在していた事実は、この世界によって消された。だから、写真から琴葉さんの姿が消えている。
もう琴葉さん達はこの世界には来ないだろう。目標は果たしたと思っているのだから。
だから、私達はここで終わる。この状況を切り開く事が出来ず、ここで死ぬ。
廊下から断末魔が聞こえた。
最初の死者が出たんだ。
そう考え、私は写真を持ちながらも、固く手を握る。写真はくしゃくしゃになってしまい、更に目からこぼれ落ちた涙で濡れてしまう。
そして、無意識の内に私は叫んだ。
「助けて………琴葉さんっ!!」
―――主任看守殿が、こんな所で何泣いてんのさ?
爆発音が一舎内に響き渡る。
悲鳴が一舎内に響き渡る。
ドアを開ける音が私の頭の中に反響する。
「やぁ、聖月さん。君達を助けに参上した」
ドアの向こうから、不敵な笑みを浮かべた琴葉さんが姿を現す。
昨日と変わらない、どこまでも不思議な感じを浮かべて。
「琴葉さぁん! 何処ですかー!!」
「コトー! 早く出てきなさいよ! 帰れないでしょー!!」
「琴葉ァ! 仕事が溜まってんだよさっさとしろ!!」
「コトが確認しないと、首領に怒られる」
「琴葉さん、一応報告しますと、敵は全滅しました! 死者はゼロです!」
「帰ってお姉ちゃんとアイス食べる約束したの! 琴葉、早くして」
「琴葉さん。貴女は此れから任務があるのだろう? 早くしろ」
廊下から七つの声。
「あ、もう終わったの。流石私の優秀な部下達」
あ、此処か! と声が聞こえたと思ったら、いきなりドアが開き、奥から白髪の青年が琴葉さんの羽織っているコートを掴む。
「琴葉さん、昨日包帯グルグル巻きで帰ってきて、凄くびっくりしたんですからね!? 今日は絶対怪我しちゃ駄目ですよ!!」
「あーはいはいー分かりましたよーレンくーん」
「絶対分かってませんね!?」
あれ、レン? レンは黒髪の、ウチの囚人だよね? こんなに可愛くないよね??
白髪のレンは、頬をぷくっと膨らませて、琴葉さんに詰め寄っている。どうしよう、交換したい…………
「おーい、聖月-。どーしたんだー? 脱獄しようと思って外に出たら、ムショ内がぐっちゃぐちゃなんだけどー」
「あ、コラ!! 勝手に出ないでよ、レン!!」
と思っていたら、ウチの黒髪のレンが来る。
「「え」」
そして、琴葉さんと白髪のレンが揃って声を漏らす。
「ちょと待てちょと待て、如月くーん? 君は人間のー、如月レン君ー、だよね??」
「は、はい。そうですけど」
「ちょと待てちょと待て、囚人くーん? 君は吸血鬼の-、レン君ー、だよねぇ??」
「そうだけど?」
琴葉さんが妙なテンポで話す。
「ってことは、構成員のレンと、囚人のレンは完全に別人ってことね。まぁ、同じ様なモノが色んな空間に在っても不思議じゃないよね」琴葉さんは手を顎に当てる。二人のレンは、お互いの顔を不思議そうに見詰め合っている。「黒赤のレンの方は吸血鬼で、囚人。白黒のレンの方は人間で、構成員。まぁ、種族は違うけど、どっちも大きな組織みたいなモノの下っ端って事ね!!」
「「如何為てそうなるんですか/だ!!」」
「レンはどの世界へ行っても下っ端なんだねーやばい、出世するとき来るのか……?」
「「来ます/来る!!」」
「下っ端から昇格すること、あるのかな………?」
「「あります/ある!!!」」
「下っ端とか、直ぐ死にそうじゃない…………?」
「「死なないです/死なない!!!!」」
ページ上へ戻る