戦国異伝供書
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第八話 浅井家の内その二
「幾ら宗滴殿がおられようとも」
「その宗滴殿も最早ご高齢」
「朝倉家を支えておられますが」
「あの方もそれでは」
「余計にですな」
「うむ、しかもあの方お一人ではな」
それではというのだ。
「勝てる筈がない」
「それではですな」
「朝倉家が敗れたその時に」
「我等は仲立ちをして」
「そうして朝倉家だけは滅ぼさぬ様にしますな」
「そうしようぞ」
長政は家臣達に話した、そして父である久政にも会って自分の考えを話した。すると久政もこう言った。
「わしはどうしてもじゃ」
「朝倉殿への義理をですか」
「守りたい、しかしな」
それでもとだ、久政は我が子に難しい顔で述べた。
「わしも天下の流れはわかる」
「織田家に流れておりますな」
「そうじゃ、しかも織田殿ならな」
信長についてもだ、久政は言及した。
「朝倉家にも無体はされぬ」
「はい、ですから」
「織田家と朝倉家の戦になれば」
「当家はどちらにも兵を出さず」
「そしてじゃな」
「戦が終わった時にです」
まさにその時にとだ、長政は父にもこのことを話した。
「それがしが義兄上にお願いします」
「織田殿にじゃな」
「市と共に。そしてです」
「朝倉家をお助けするか」
「そうします、義兄上も特に朝倉家を滅ぼすお考えはないでしょう」
「わしもそう思う」
久政も我が子と同じ見方だった。
「あの御仁は決してな」
「無体の方ではないので」
「それでじゃ」
「朝倉家は最悪でもです」
「左衛門督殿が出家される位か」
当主である義景がというのだ。
「そして大名でなくなる」
「それ位で族滅等は」
「ないであろうな」
「だからです」
「朝倉殿のことも考えれば」
「はい、若し両家が戦になれば」
その時はとだ、長政は己の考えを話していった。
「その時はです」
「うむ、兵を動かさずな」
「朝倉家の助命に動きましょう」
「それでよいな、そして当家はこのままか」
「近江の北に留まるかと」
「そうなるな、それでよいわ」
久政は我が子の考えをよしとして述べた。
「四十万石、それ位がな」
「当家にとってですな」
「丁度よいであろう」
「当家はそれ位の家ということですな」
「それ以上のものは父上の頃から望んでおらぬ」
亮政の頃からだというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「うむ、それでよい」
「それでは」
「お主の考える様にせよ」
久政は長政に笑ってこうも言った。
「このことについてもな」
「そうさせて頂きます」
「わしからは言うことはない、しかしな」
「しかしとは」
「いや、本願寺のことじゃが」
久政もこの寺のことに言及した、織田家の者達と同じく。
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