空に星が輝く様に
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469部分:第三十六話 思わぬ出会いその十一
第三十六話 思わぬ出会いその十一
「そう、いる」
また言う彼女だった。
「ちゃんと一人」
「二人も三人もってのじゃないのね」
「彼氏は一人いるから彼氏」
椎名は真面目にだ。星華に話すのだった。
「二人も三人もいたらそれは駄目よ」
「そりゃそうよ。そんなの絶対に駄目よ」
星華もそれは駄目だと目で言いながら言葉にも出す。
「浮気とかそんなの。許されることじゃないわ」
「そっちもそう考えてるのね」
「当たり前でしょ。私だってそんなのは嫌いだから」
「ならいい」
椎名ははじめて星華に微笑んでみせた。
「名前。確か」
「佐藤よ」
星華は名字から名乗った。
「佐藤星華。言ったことなかったかしら」
「忘れてたから」
それは忘れてしまったというのだ。実は知っていたがだ。あえて星華自身からその名前を聞きたかったのだ。そして実際にそうしたのだ。
「それでだから」
「そうなの。けれどこれでよね」
「うん、覚えた」
その通りだと返す。
「佐藤ね」
「まあ名字でも名前でもどっちでもいいけれど」
「とりあえず名字で呼ばせてもらうから」
「そっちなのね」
「そう。じゃあ佐藤」
星華をこう呼んでみせてだった。
「今から」
「お星様見るのよね」
「そうしよう」
こう彼女に話したのである。
「今から」
「うん、それじゃあね」
「あと。さっきの話だけれど」
「何?」
「ここに来た理由は何?」
椎名は星華にあらためてこのことを尋ねるのだった。
「どうしてなの、それは」
「ええと、私は」
「うん」
「先輩と一緒に来たの」
彼女もだ。素直に話した。自覚はないがそれでもだった。椎名に対してはじめて素直に自分のことを話すことができたのである。
それに気付かなくともだ。彼女はそれを続けるのだった。
「シューズとか買って。それに」
「それに」
「楽しみに来たの」
このことも素直に話すのだった。
「それでなの」
「そう、それでだったの」
「そういうことなの。あんたとはまた理由が違うけれど」
「けれどそれもいい」
「いいの」
「うん、いい」
椎名もだった。星華にはじめて微笑むのだった。これもだった。彼女自身は気付いていなかった。だがそうしてしまっていたのだ。
「それで」
「そうなのね」
「そう、それで」
「それで?」
「ここでも楽しもう」
星華に対しての言葉だ。
「お星様を見ることを」
「そうね。それじゃあね」
「お星様好きよね」
「うん、名前がそれだし」
星華はだ。素直な微笑で椎名に答えた。いつも三人に向けるのと同じ微笑をだ。椎名に向けてそのうえで話をするのだった。
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