空に星が輝く様に
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468部分:第三十六話 思わぬ出会いその十
第三十六話 思わぬ出会いその十
先輩の横に座った。二人一緒にであった。そのまま開演を待つのだった。
そしてだ。ここにだ。この二人も来たのであった。
「そろそろね」
「そうだね。もうすぐだね」
赤瀬は携帯で時間を見ながら椎名に話した。この二人であったのだ。
「開演はね」
「うん、じゃあ」
「中に入ろう」
赤瀬からの言葉だった。
「それじゃあね」
「うん。ここは」
「ここは?」
「十二月全部の夜空が見られるから」
「つまり全部の星座がだね」
「そう。日本の空以外も見られるから」
「それは凄いね」
赤瀬はそれを聞いて素直に驚いた。二人の前にはそのドームがある。ドームは外観も白い。今は何から何まで白い場所であった。
「じゃあそこで」
「星を見よう」
今度は椎名からの言葉だった。
「今から」
「うん」
こうしてだった。二人も中に入った。そしてそこで。
「ちょっと御免」
「おトイレ?」
「急に行きたくなったから」
赤瀬はここで椎名にこう言うのだった。
「ちょっと席を外すね」
「わかった。じゃあ先に中に行ってる」
「そういうことでね」
こうしてだった。赤瀬は一旦トイレに向かった。椎名はまずは一人で中に入った。彼女はそこでだ。思わぬ相手と顔を合わせてしまった。
「えっ・・・・・・」
「いたの」
星華だった。星華は彼女の顔を見て驚きの顔になった。
しかし椎名はだ。表情を変えずにこう返してきたのだった。
「ここに」
「え、ええ」
戸惑った様子でだ。椎名に言葉を返すのだった。
「ちょっと。部活の先輩と」
「そうだったの」
「そうなの」
こうだ。気まずい声で答えるのだった。
「実は」
「わかった」
椎名は星華の言葉を受けて静かに頷いた。
「そのことは」
「わかったって」
「宜しく」
椎名からだった。
「ここでは宜しく」
「宜しくって」
そう言われてだ。星華は呆然となった。そのうえで彼女に問い返した。
「あの、私その」
「もう二度としないから」
月美のことはだ。これで済ませるのだった。
「だからいい」
「それでいいの?けれど」
「過去は何度でもどれだけ言える」
「何度でも」
「そう、どれだけでも」
また星華に告げるのだった。
「けれど過去にこだわっていたら一歩も前に進めない」
「前に」
「誰でも前に進まないといけない」
星華に告げる言葉はこれであった。
「だから。もういい」
「そう言ってくれるの」
「それでここに来た理由は」
「理由って?」
「理由があるから来る」
これが椎名の言葉だった。
「何でも」
「それはそうだけれど」
「私はデートで来た」
椎名は正直に述べた。
「そう、二人で」
「あんた、彼氏いたの」
「いる」
過去形ではなく現在形だというのだ。
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