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ドリトル先生と奇麗な薔薇園

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第十幕その三

「別にね」
「そんなに愚かでもないと思うし」
「そうよね」
 チープサイドの家族もこう思っています。
「特にね」
「時代の犠牲者だね」
「あんな時代じゃなかったら」
 それこそと言ったチーチーでした。
「あんなことになっていなかったよ」
「間違いないね」
 トートーも言います。
「とんでもないことが次から次に起こる時代だったから」
「あんな時代だったから」
 ダブダブも悲しく思うのでした。
「あんなことになったのね」
「あの時代って沢山の人が死んだんだよね」
「そうそう、革命の中でね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「何か百万位死んだとか」
「物凄い数だよ」
「いいものだったのかな、革命って」 
 最後に言ったのは老馬でした。
「フランスで起こったあれは」
「難しいね」
 実際にとです、こう言ったのは先生でした。
「ああした歴史の流れは必然だったにしても」
「急激過ぎてね」
「死んだ人が多過ぎた」
「そうだったっていうんだね」
「そう、それでね」
 先生は皆にさらにお話をしました。
「いいかっていうと難しいね」
「一概にそう言うのは」
「そうなんだね」
「どうしても」
「うん、時代の急激な流れの中で死んだ人や失われたものが多過ぎるから」
 先生も考えていることでした、それも心から。
「市民や民主主義に時代が向く大きな要因であってもね」
「それでもだね」
「その中であれだけの人が死ぬと」
「いいとは言えない」
「そうなんだね」
「うん、そう思うとね」
 本当にというのです。
「いいものとは言えないね」
 フランス革命自体はというのです。
「オスカルは民衆の側に立って戦ったけれどね」
「バスチーユ襲撃だね」
 ここで王子が応えました。
「あの時にだったね」
「作品の最後の場面だね」
「あの襲撃は革命の重要な場面の一つだね」
「そうなんだけれれど」
 それでもと言う先生でした。
「やっぱり無益な血も流れたんだよ」
「あの襲撃では」
「そうだったの」
「うん、そもそも監獄長の人は民衆を攻撃するつもりはなかったんだ」
 襲撃された人達はというのです。
「それでああして襲われたから」
「ううん、じゃああの事件もなんだ」
「いい事件じゃないんだ」
「物凄く象徴的に言われているけれど」
「無駄な血が流れた事件って言っていいんだ」
「ナポレオンが起こした一連の戦争でも沢山死んだけれど」
 革命の後のその時代でもです。
「それでもね」
「あの革命でもなんだ」
「沢山の人が死んで」
「それでなんだ」
「いいことじゃなかったんだ」
「革命は言葉は恰好いいよ」
 それ自体はいいというのです。
「けれどあの革命でもロシア革命でもどれだけの人が死んだか」
「アメリカの独立革命も戦争だったしね」
「沢山の人が死んだのは事実だしね」
「イギリスもね」
「清教徒革命は犠牲者が多かったし」
 動物の皆はフランスやロシア以外の国の革命のことも思うのでした。 
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