ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第九幕その八
「いつもスーツだし」
「サプールにすぐになれるよ」
「是非共だよ」
まさにと言ったのは老馬でした。
「先生も胸に薔薇を飾ってサプールになろう」
「サプール?僕もあの人達のことは知っているけれど」
先生は皆のお話を聞いてこう言いました。
「ちょっとね」
「なるつもりないんだ」
「スーツ着てるのに」
「それでも」
「うん、スーツはね」
それはというのです。
「あまりね」
「なる気はないの」
「特に」
「そうなんだ」
「うん、スーツは当然の身だしなみだから」
先生にしてはというのです、先生はお医者さんで様々な博士号を持っている知識人だからというのです。
「仮にも僕はお医者さんだからね」
「いつもスーツだよね」
「イギリスではお医者さんは知識人だしね」
「知識人は知識人の身だしなみをする」
「そのことは当然だから」
「それでいつもスーツだからね」
外出の時はそうしているというのです。
「だからね」
「それでだね」
「スーツはだね」
「先生にとっては当然で」
「お洒落ではないんだ」
「うん、身だしなみを整えることは当然にしても」
それでもというのです。
「お洒落をしているつもりはないし」
「サプールの人達みたいに」
「そうはしないんだ」
「うん、ただあの人達の考えは素晴らしいと思うよ」
お洒落をしているつもりはなくともです、先生はサプールの人達を否定していませんでした。むしろ肯定して言うのでした。
「あの人達は平和主義だね」
「うん、そうだね」
「凄い平和主義だよね」
「絶対に喧嘩もしないし」
「平和を愛する人達だね」
「あの考えは素晴らしいよ」
こう言うのでした。
「武器を捨てて優雅な紳士になる」
「そのことはだね」
「本当に素晴らしいことだよね」
「だから先生はサプールにはならなくても」
「サプールは素晴らしいと思うんだね」
「うん、僕も戦争は専門家じゃないから」
先生は喧嘩をしたこともありません、いつも穏やかな人です。
「だからね」
「それでだね」
「平和を愛する紳士として生きること素晴らしい」
「そう言うんだね」
「うん、国家と国家の間では戦争をしなくてはいけない時もあったし今もだよ」
そうした時はあるというのです、先生はこのことはわかっています。
「けれどそれでも平和主義もね」
「それもだね」
「非常に素晴らしい」
「そう言うんだね」
「うん、サプールの人達の考えはもっと広まるべきだよ」
笑顔で言う先生でした、そしてでした。
先生はまた論文を書くお仕事に戻りました、今はそうしたことにも励んでなのでした。そのうえで。
本を読んでいると研究室をノックする音が聞こえてきました、それで扉を開けるとそこに悠木さんがいました。
先生は悠木さんを研究室の中に入れるとすぐに舞台のお話をしてきました。
「先生のご提案通りにです」
「お花をなんだ」
「はい、演出に使うことになりました」
「舞台は抽象的にしてなんだ」
「これは予算のこともありまして」
それでというのです。
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