空に星が輝く様に
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437部分:第三十四話 夜空にあるものその一
第三十四話 夜空にあるものその一
夜空にあるもの
陽太郎と月美はだ。食堂で狭山にこう言われた。
「最近何か変わったな、二人共な」
「えっ、変わったって」
「そうですか?」
二人は箸を止めて彼の言葉を聞いた。陽太郎は力うどんと天丼、月美は山掛け蕎麦に御飯といった組み合わせだ。狭山は大盛りカレーとラーメンである。無論他の面子もいる。
「俺達何か」
「変わりましたか」
「顔が晴れやかになったな」
これが変わったことだというのである。
「随分とな」
「顔がか」
「晴れやかに」
「何かあったのかよ、それで」
狭山はラーメンをすすりながら二人に問う。
「あれか?キスでもしたか?」
「あんたそれ下品よ」
彼の今の言葉は横にいた津島に指摘された。彼女はきし麺を食べている。その脇にはさんまが一匹頭ごと皿の上に置かれている。
「キスしたかとか。人に聞くなんて」
「あっ、そうか」
「そうよ」
こう言う津島だった。
「ちょっと気をつけなさいよ、それは」
「悪い悪い」
ラーメンを食べながら謝る狭山だった。
「別にそんなつもりなかったんだけれどな」
「いや、いいけど」
「私達は」
実際に特に気にしていない二人だった。彼等は下品だとも捉えてはいない。
「しかし。顔がか」
「晴れやかにですか」
「いいことあったのは間違いないわね」
何だかんだで津島も笑顔でこう言うのだった。
「それが何かは知らないけれどね」
「何処の誰かは知らないってやつだな」
ここでまた言う狭山だった。ラーメンを食べ終えカレーに入っている。麺類はのびないうちに食べ終える、その鉄則はわかっているようである。
「それってな」
「何か随分古いな」
「月光仮面ですよね」
二人も狭山の今の言葉の元はわかった。
「けれどまあ」
「別にいいことはなかったですよ」
「あれっ、そうなのか」
「そうだったの」
狭山と津島は二人の返事にいささか拍子抜けして述べた。
「何かそんな感じしたけれどな」
「別になのね」
「そうだよ。いいことはな」
「特になかったですけれど」
また答える二人だった。
「ただ。まあ」
「吹っ切れたことはあります」
二人はここでこうも言うのだった。
「何ていうかな」
「ちょっと」
「で、それって何なんだよ」
「それが気になるけれど」
二人がさらに尋ねようとする。しかしだった。
ここでだ。椎名が出て来た。いつも通り彼女もいるのである。無論赤瀬もいる。津島はお好み焼き定食、赤瀬は巨大な、それこそ人の半分程度はある皿の上にある途方もない量のハヤシライスを食べている。
その椎名がだ。こう言うのだった。
「気にしない気にしない」
「げっ、椎名」
「出て来たわね」
「最初からいたから」
身も蓋もない突っ込みはここでも健在であった。
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