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空に星が輝く様に

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411部分:第三十一話 夜の港でその六


第三十一話 夜の港でその六

「夜の汽笛って」
「お昼のとはまた違いますよね」
「不思議だよな、汽笛なのは同じなのに」
「けれど夜ってだけで」
「全然別のものに聞こえるよ」
 こう言う陽太郎だった。
「不思議にさ」
「そうですね。夜の汽笛って」
「何か遠くから聞こえる感じで」
「それでいて近くにいるような」
「そう感じるよな」
「どうしてでしょうか」
「いや、そう言われると」
 問われると口ごもってしまってそれで返す陽太郎だった。
「何ていうか。はっきりとは言えないけれどさ」
「そうなんですか」
「あれだよな。感覚でかな」
 首を捻って考えながらの言葉だった。
「見えないだろ、夜だと」
「暗くてですね」
「それで距離感とかわからなくて」
 このことが大きかった。それでだった。
「それでかな、やっぱり」
「それでなんですね。そういえばそうですね」
「月美もそうかな」
「はい、そう思います」
 月美はここでもまたにこりとしてそのうえで陽太郎に話した。
「そういうふうに」
「夜って。何か不思議なんだよな」
「周りが見えなくなって。それで」
「同じ場所でも全然違うものにするよな」
「ですよね。この港だって」
「昼の港もいいけれど」
 陽太郎は昼の港も好きだった。船が並んでそこにあるのを見ることがだ。とても好きだったのだ。無論青い海を見ることもである。
「それでも夜の港も」
「いいですよね」
「だよな。本当に不思議な感じだよ」
「それにですね」
「それに?」
「夜にはないものもありますから」
 月美はこうも話してきた。
「ちゃんと」
「っていうと一体それって」
「ほら、上に」
 月美はここでは上を見上げた。するとそこにはだ。
 寒くなろうとしているその空には星達があった。その星はそれぞれ形作っているものがあった。月美はそれを見ながら陽太郎に話した。
「あれ、見て下さい」
「星座か」
「はい、秋の星座です」
 それがなのだった。今二人の上にあるのだった。月美は陽太郎もそれを見ているのを横目で確かめてからだ。また彼に話した。
「特にあそこに」
「あっ、北斗七星か」
「大熊座ですね」
「あれ、皆知ってるよな」
「わかりやすいですしね」
「一年中見られるしな」
 北斗七星はそうした星だった。常に夜空にある星座なのだ。
 秋の星座とそれを見ながらだ。二人で話をするのだった。
「陽太郎君星座は」
「学校で習う位で」
「他にはですか」
「特に本とか読んだことなかったな」
「そうだったんですか」
「けれどさ」
 しかしというのだった。陽太郎はその月美に返した。
「今、それも変わりそうだよ」
「そうですか、じゃあ星座にも」
「興味出て来たよ。それじゃあだけれど」
「はい、どうされますか」
「暫くここにいる?」
 こう月美に提案したのである。
「ここで。星座見ていようか」
「はい、それじゃあ」
 そう言われてだった。笑顔で返す月美だった。その笑顔で自分から陽太郎に話した。
「暫くここで二人で」
「星座を見て」
「ただ」
「ただ?」
「終電までにはですね」
 にこやかに笑っての言葉だった。
 
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