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レーヴァティン

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第六十四話 あやかしその九

「相手は相当に強いぜ」
「勝てるかどうかわからない位にか」
「そうだよ」
 まさにという返事だった。
「そんな相手だってことはな」
「わかっていてだな」
「戦えよ、しかしな」
「今度は何だ」
「いや、海の魔神ってのは強いのはわかるけれどな」
「どんな神はか」
「わからねえな」
 このことも言うのだった。
「一体な」
「そうだな、名前も詳しい力もな」
「一切わかってねえな」
「古代の伝承にもなかった」
 英雄はデルフォイで読んだその知識も思い出した、だがそこにもだったのだ。
「一切な」
「本当に何もわかってねえんだな」
「ある時急にだな」
「空船に乗ってる連中が驚いたんだよ」
 それで東西の船を行き来している彼等がだ。
「下を観たらな」
「陸地がなくてか」
「海ばかりになっててな」
「それでだな」
「ああ、もうな」
 それこそというのだ。
「下の方に行ってもな」
「海ばかりでか」
「行けど行けどもな」
 そうした状況だったというのだ。
「そんなのでな」
「そうか、そしてだな」
「神託が伊勢とあっちの方でも下ってな」
「魔神と俺達のことがわかったか」
「そうだよ、けれど神託でわかったのはな」
「魔神がそうしていることだけだな」
「他は何もだよ」
 まさにという口調での返事だった。
「わかってないんだよ」
「名前も詳しい力も」
「一切な、しかしそんなとんでもない力持つ神様なんてな」 
 船乗りは飲みつつまたこのことを話した。
「そうそういないからな」
「名前のある神だな」
「そう思うんだけれどな」
 首を傾げさせつつの言葉だった。
「本当にどんな神様なんだろうな」
「神話では世界を滅ぼす洪水もままありますが」
 ここで言ったのは紅葉だった、勿論彼女も飲んで食べている。
「ノアの箱舟やデュカリオンの洪水」
「そうしたものだな」
「はい、ありますが」
「どの洪水もな」
「主神や唯一神が起こしたものです」
 こう英雄に話した。
「中南米の神話でもありますが」
「そちらでもだな」
「はい、主神と言っていい神々が起こしたものです」
「確かケツアルカトルやテスカトリポカだったな」
「そうでした」
 中南米、マヤやアステカの神話で最も有名な神々だ。この地域の神話でも世界を滅ぼす洪水の伝承があるのだ。
「ですから」
「世界で海を覆うとなるとな」
「そこで世界を眠らせるなぞ」
 滅ぼすのではなくだ。
「海の中で。となりますと」
「その主神達よりも上かも知れないな」
「恐ろしい力です」
「ではな」
「恐るべき力を持った存在であるこは」
 それはというのだ。
「間違いありません」
「そうなるか」
「はい、ですから」
「戦うにあたってだな」
「我々と西の島の方々と」
 さらにというのだ。 
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