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ドリトル先生と奇麗な薔薇園

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第七幕その三

「他のどの国にもない建物だよ」
「畳やお布団がなくてもね」
「その通りだよ、日本に建てる中でね」
 まさにその中でとです、先生は皆にお話しました。
「日本で換骨奪胎されてね」
「日本の建てものになったわね」
「日本のお家に」
「そうなったね」
「お料理や服と一緒だね」
 そのことはというのです。
「日本に入る中で日本のものになったのは」
「もう欧州のものじゃない」
「日本のものね」
「日本人はそう思っていなくても」
「もうそうなってるのね」
「僕はそう思うよ。それとね」 
 さらにお話をする先生でした。
「薔薇もそうした場所には合うからね」
「日本の洋館という建てものには」
「そして日本のそうしたものには」
「合うのね」
「だから洋館や薔薇を和歌で詠っても」 
 例えそうしてもというのです。
「いい筈だよ」
「そうだよね」
「それもまたよしよね」
「本当に」
「そう考えているよ、僕は」
 先生は論文をかくその手を動かし続けつつ皆にお話しました。
「今もね」
「そうだね、しかしね」
「先生ってそうした考え柔軟だね」
「和歌で洋館や薔薇を詠っていいとか」
「イメージに合わないって否定しないから」
「別に柔軟でもないよ」
 そこは笑って否定する先生でした。
「僕もね」
「そうかしら」
「充分柔軟だと思うけれど」
「そうよね」
「もっと柔軟ならね」
 それこそというのです。
「平安時代や奈良時代の日本でも薔薇をと言うと思うよ」
「いや、それは幾ら何でも」
「合わないと思うから」
「それはないわよ」
「流石にね」
「そこをそう言えるのが日本人だったりするから」
 このことは少し真面目に言う先生でした。
「日本人の発想は本当に凄いからね」
「誰かが日本人は独創性に欠けるって言ってたけれど」
「全然違うよね」
「何でそんな発想が、って思うことばかりで」
「どんな発明家でもびっくりするみたいな」
「そんな閃きばかりで」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「日本人の発想はもう違うから」
「他の国の人達とは」
「だから薔薇と平安時代も」
「ひょっとしたら」
「出来るかもね」
 そうした組み合わせもというのです。
「それも見事にね」
「じゃあ光源氏と薔薇とか」
「そんな誰もが考えなかった組み合わせを出す人がいるかも」
「そうかも知れないのね」
「ひょっとしたら」
「そうかもね、そしてね」
 さらに言う先生でした。
「奈良時代だってそうだね」
「前に僕達も奈良に行ったけれど」
「その奈良の文化の中に薔薇ね」
「赤や白の奇麗な薔薇」
「その中で恋愛を語るのかしら」
「それもあるかもね。あの奈良の神社仏閣や三山の中に薔薇があってね」
 そしてというのです。 
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