剣の世界で拳を振るう
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キリトさんがシリカちゃんとデートするそうです
アインクラッド第76層【アークソフィア】
最前線のプレイヤーが大半を占めるこの街は、いつも様々な賑わいを見せている。
そして今日も…
「ケンくん!」
新しい1日がやって来た。
「どうしたアスナ。マッピングなら昨日のうちに終わらせたぞ。
データだって渡したろ?」
「違うの!そうじゃないの!」
エギルの店で寛いでいたところ、アスナが全力で扉をあけて俺のところまでやって来た。
「キリトが誰かと出掛けでもしたか?」
「何か知ってるの!?」
まさかの大当たり。
キリト…もう少し慎みを持つべきじゃないかね?
「いや、適当に言ってみたんだが」
「実はそうなの!今朝シリカちゃんとデートに出かけたってぇ!」
「デートって…んなアホな」
「アホって何よ!ケンくんは心配じゃないの!?」
それは何の心配なんですかね?
「まぁ取り敢えず落ち着けよ。
んで?シリカとデートって事だけど、実際にそうなのか?」
「…どういう事?」
「いやな?キリトだって節操無しじゃない。
シリカに何かを頼まれたーだとか、単純にレベリングーとか、
テイムモンスターがいることが条件のクエストがあるだとか。
色々と出て来るだろ?ただでさえアイツはゲーム脳なんだから」
「…なんかケンくん、私よりキリト君のこと知ってる。
ちょっと悔しいかも…」
変な邪推はやめてもらえませんかね?
何かホモォな関係と間違われるだろ。
「何処に行ったとか聞いてないのか?」
「えっと、リズから聞いた話だと78層に行ったって…」
78?そこまで離れてる訳じゃない。
かと言って最前線に近い訳でもない。
「ならやっぱり何かイベントでも発生したんだろ」
「そ、そうなのかな…」
「疑うねぇ…。なら、探しに言ってみるか?」
「え?」
「ほら、気になるんだったら直接見にいきゃ良いだろ?
話しかけなくても、遠目に見るだけで分かることもあるだろうし」
「ケンくん…!うん!そうと決まれば準備して来る!」
そして物凄い速さで店から飛び出すアスナ。
「何か手慣れてるな」
「俺の方でも散々付き合ったからな…。
やれ誰々と出掛けてただの、キリトが素っ気ないだの…」
「心中お察しするぜ…」
コトリとコーヒーを俺の前に置くエギル。
できる男って感じだ。
そう言えば現実世界でもバーテンダーだったな。
「ケンくん行くよ!」
「はいはい…」
「頑張れよ…」
「サンキューエギル。また素材やらを推すよ」
「そりゃいい。期待してるぜ」
はぁ…。称号システムがあったらきっとこんな感じに付けられるんだろうな。
【バカップルの相談役】みたいな。
「さて、取り敢えず78層に来た訳だが…」
「ここの何処に行くか聞いてなかったね…」
まさに出鼻を挫かれた感じだ。
アスナもどんより落ち込んだ表情。
「何にせよクリアされてるフロアだし、残ったクエストなんぞ些細なもんだろ。
効率とか重視してるアイツの事だ。
決まった訳じゃないけど、クエストやるついでにレベリングもしてそうだな」
「レベリング…もしかして奥に進んだとか?」
「まぁ普通に考えればそうだろな」
「じゃあ行ってみようよ!ここで止まってても仕方ないし!」
落ち込んだり元気になったり、忙しない事…。
saidキリト
「ふぅ………」
俺は目の前のモンスターにトドメを指すと息を吐いた。
ここまで結構ハイスピードでぶっ通して来たが、そろそろ休憩を入れた方がいいかもしれない。
ちょうどモンスターのいない安全地帯のような場所が近くにある。そこに行こう
「シリカ、少し休もうか。ぶっ通しで来たから疲れたろう」
「あたしはまだいけますよ。戦闘は殆どキリトさんに任せきりのようなものですから………あたしがもうちょっと戦えたら良いんですけど」
そうは言うがシリカもピナとの連携を活かし戦闘に大いに貢献していると言ってもいい。
そう自分を卑下する必要はないと思うだけどな………それに、シリカがここ最近頑張っているのも知っている。まだ大雑把なところはあるが………そこは俺がフォローしながら直していこう
「でも、これからのことを考えると休憩はしておいた方がいいだろ。ちょうど近くに休める場所があるみたいだし」
俺は安全地帯を顎で指す
「わかりました」
笑顔で頷くシリカを確認して安全地帯へ向けて足を進める。
そろそろアスナや他の皆は起きただろうか。
エギルの奴、アスナに俺がいない理由をきちんと説明してくれているといいけど………クライン辺りがおふざけでややこしい方向に話を進めてそうで怖いな。
そんな予想に若干微笑ましく思い………いや、全然微笑ましくないな。
少し顔を青くするそんな俺の索敵にいきなり複数の反応が現れた。
「っ!?シリカッ!」
「へ?………きゃぁぁぁ!?」
急いで振り向くとシリカの真後ろにはちょうど振り上げた腕をシリカに向け振り下ろそうとしている人型をした木のモンスターがいた。その他にも左右にそれぞれ一体ずつ、キノコみたいなモンスターを引き連れている
安全地帯に近付いた途端これかよ………!
シリカを引き寄せる。人型の木のモンスター………《ウィズダムトレント》はさっきまでシリカのいた場所に腕を振り下ろす。シリカの前に出てトレントを攻撃し俺がタゲを取る。ついでに周りのキノコみたいなモンスター………《ファナティック・ファンガイ》と読めばいいのだろうか?そいつのタゲもとってしまったがむしろ好都合だ。
俺はシリカと離れ過ぎないようにモンスター達を引き付け、まずはトレントから狙う。
振り下ろされる腕を避け、斬りつける。相手のHPが減ったところで、この数だ………多少のHP消費は覚悟の上でソードスキル、《バーチカル・スクエア》を放つ。
「はあぁぁぁぁ!」
七撃目を気合を入れて放ち、ファンガイのHPを残り一割程まで減らせた。硬直したままファンガイからの攻撃を受け、硬直が解けた瞬間残りを削り取る
シリカの方を見るともう一体のファンガイと戦っていた。すぐに俺は走り出す
「っ!?」
だが目の前にまたトレントが現た
「連続ポップ!?なんでこんな時に………!」
トレントの攻撃を避け、剣を連続で叩き込む。チラリと見れば更に二体の敵がシリカを囲んでいた。俺の方にもトレントともう一体、ファンガイがいる
『きゅるる!!』
「えっ……周り、囲まれちゃってる!?」
あのままではシリカが危ない!!
「すぐ転移結晶を使うんだ!」
トレントをポリゴン片に変えながら叫ぶ。間髪入れずにファンガイへと攻撃をくらわせる。いつまたポップするかわからない………ファンガイは置いて俺はシリカの前へ躍り出た
「でも、キリトさんが………!」
「俺なら大丈夫だ。この程度なら充分凌げるから………だから早く!」
「わ、わかりました。転移結晶ならここに………あっ」
何やら不穏な声が背後から聞こえたが杞憂であることを信じ目の前のモンスター達と対峙する。剣を横薙ぎに一閃すると四体共後ろへ跳んで避ける。それを追撃し真ん中の二体に攻撃をくらわせ、HPを減らしていく
「キリトさぁ〜ん!ピナが………ピナが、転移結晶食べちゃいました!」
「な、なんだって!?」
一体を屠り、二体目のHPを0にしようとするや否や、シリカからそんな声が聞こえてきた
ど、どういう状況だよそれ!…………はっ!いや、ダメだ。余所見したらダメだ
二体目にトドメを指し、三体目へと剣を向ける。その際に残ったもう一体がシリカの方へ行ってしまった
「しまっ………シリカ!モンスターがそっちに……!」
「え!?きゃ、きゃぁぁぁっ!!」
くっ………!早くこいつを倒さないと!
俺はシリカの方を心配しながら、目の前のファンガイを高速で片付ける為に剣を振るう
『きゅる!!』
その時、ピナがシリカの前に出た
「ダメ、ピナ!身代わりになんか………!」
ピナ必死に止めようとするシリカ、それを見て俺はファンガイにトドメを指してシリカ達の方へと向かう
『きゅるぅぅぅぅぅ!!』
「なんだ!?ピナが光って………」
急にピナが光り出した。突然のことに俺は足を止め、モンスターが攻撃のモーションに入っていることに気付くのが遅れた。今からどんなに急いでも間に合わない。ピナ、一撃耐えてくれ………!
ピナがトレントの攻撃に撃ち落とされる姿が頭を過る
だが、目の前で起こった事実は違った
『きゅるぅ!!』
なんと、ピナが敵の攻撃を弾いたのだ。一瞬呆然とするも、次の瞬間にはシリカの横へステップで移動する
「シリカ、大丈夫か!?敵は怯んでる。この隙にここを離れるぞ!」
連続ポップはまだ続くだろう。さっきの戦闘で少なからずシリカのHPが減っている。ここは離れるのが得策だ
「ピナ、着いて来い!」
俺は小脇にシリカを抱えて走り出す。伊達に重い剣を振るために筋力値に趣を置いているわけじゃない。そのままその場から急いで離れる
「あわわわっ!?キ、キリトさん!あたし自分で走れますよぉ!」
シリカが何か言ってるが取り敢えず安全な場所に着くまではこのままで我慢してもらおう
「ふぅ………結局森を抜けたな。でもここまで来れば大丈夫だろ」
安全な場所を求め走り彷徨っていたら森を抜けてしまった。しかし危なかった
「大丈夫か……?」
「…………」
そのままシリカの安否を確認する。一応何かにぶつかったりしないように考慮したから大丈夫だと思うが………なんか様子がおかしいな。酔ったのな?もう少し強く抱き抱えた方が良かったかな…………
ん?抱えると言えば、妙に手の感覚が柔らかいのが気になると言えば気になる
これは一体…………
「……………」
「……………あ」
柔らかいもの…………うん、あれだ。きっと、あれだ……………うわああっ!?あれだ!?
「ご、ごめん!!変なとこ触ってた!!」
急いでシリカを下ろす。走るのに夢中で気付かなかった。俺はなんてことを………アスナに知れたらタダじゃ済まされないし、何より女の子の………その、なんだ、とにかくやってしまった
「本当にごめん!無我夢中で考えてなかったから………」
「い、いえ………いきなりでびっくりしましたけど………その、あたしがそんな大きくないからキリトさん気付かなかったんだと思いますし………」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
「そうですよね、皆さん大きいですもん…………シノンさんも、あると言えばありますし。でも、体は二年前ままだからまだ希望は捨て切れないと……うぅ、でもでもストレアさんのとか見ると自信なくすなぁ……」
『きゅるる………』
ネ、ネガティヴ………ネガティヴすぎるぞシリカ!
こ、こういう時はどう言えば………えぇと………そうだ!
「お、俺は小さくても良いと思うぞ!」
「うぅ………ピナァ……」
『きゅるぅ………』
あ、あれ!?駄目だったか!?女心って難しい
これは慰めるのに時間が掛かりそうだ
あぁ、ユイはきちんとお留守番してるかな…………?
saidケン
あれから俺たちは黙々と歩き続けていた。
会話らしい会話もなく、何か考えているようなアスナを横目に、迫り来るセイレーンやらトレントやらを駆逐して行く。
「…」
「…」
無言は辛い。
しかしいつもならこれ程までに落ち込みはしないはず。
これは何かあったと考えるべきか。
「なぁアスナ。何かあったのか?」
「…え?何、ケンくん」
「いや、だから何かあったのかって」
「…キリト君、私の事どうでもよくなっちゃったのかなぁって…思ったら…止まらなくて…」
「それは無いと思うが、そこまで言う事があったのか?もしくは何か見ちゃったとか」
もしそうならキリトを裁かねばならんな。
散々相談に乗らせといてアッサリなんて俺が許さん。
「あ、そうだったね。
あの時はケンくん、居なかったんだ」
「?」
「実はねーーーーーーーー」
saidキリト
「そろそろ行くか、シリカ」
「はい」
あれからシリカを落ち着かせた俺は休憩をする予定だったことを思い出してシリカと一緒に休憩していた。近くにモンスターがいるから、戦闘になるかもしれないと不安だったが、運の良いことに戦闘にならずに十分休憩することができた
視線の先でこちらに背を向けている人型のモンスターを一瞥する。見た感じゴブリンだ。恐らくアスナが今日攻略する予定の場所はここから近い場所にあるんだろう
「そう言えば」
俺はストレージを開く
そう言えば転移門を通る前、クエストを受注していたんだった。モンスターからドロップする素材を集めるというものだ。確かトレントからドロップする素材だったはず…………おぉ、ドロップしている。良かった、戻って集める必要はなさそうだな
「……………」
ストレージを消そうとして…………俺はある一点を見つめる
別に何か不思議なものがあったわけじゃない。いや、どちらかと言うとない・・から違和感が生じる
そこに前まであったのは、アスナとのリンクだった
七十五層のボス部屋でヒースクリフを倒し、終わるはずのデスゲームは終わらなかった。混乱の中俺達は進むことを決意し、七十六層へと上がったあの日、俺とアスナはポーションの補充の為に商店通りを訪れた。ポーションの残量を確認すると、急にアスナが驚いたような声をあげたんだ
俺は最初、ポーション残量が0に近かったから、あまりの少なさに驚いたのかと思った。だけど、それは違った
『アイテムの共有が………キリト君とのリンクが、解けてる………!』
アスナの口から出た言葉に俺は一瞬耳を疑った
急いでストレージを開くと、確かにアスナとのアイテムの共有も切れて、アスナのステータスが見れなくなっていた
『ほ、本当だ………』
『まさかとは思うけどキリト君………私と、り……離婚、した?』
『いや、ない!絶対ない!!間違ってもするもんか!』
目に涙を溜めて俺に聞くアスナを必死に宥めながら否定する
SAOにおいて、システム上で規定されるプレイヤー同士の関係は4種類。その中の一つが結婚、俺とアスナがこれを共有しているわけだが………結婚と言っても手続きは簡単なもので、どちらかがプロポーズメッセージを送り、相手が受諾すればそれで終了というものだ。実に簡単だ
だが、結婚には他の3種類………無関係の他人、フレンド、ギルドメンバーといった具合だが、これらの比にならない変化と言うものがもたらされる
大まかにしてしまうとまず第一に自由に相手のステータス画面を見ることができるということ、そして次にアイテム画面の統合化。言わば最大の生命線を相手に差し出す行為だ。だからなのか、アインクラッドでは男性プレイヤーの方が圧倒的に多いからなのかは知らないが、男女間のカップルはあっても結婚まで至るのは非常に稀だ。男女間ということは、同性の間では多いのか?と聞かれるとそれも絶対にないと叫びたい。そもそもシステム的に無理だろう。ネカマならあり得なくもないが、このデスゲーム開始と共に全てのプレイヤーは現実と同じ姿なのだから言うまでもない
少し話が逸れてしまった
今回のケースは、俺とアスナの結婚という関係……もといリンクがどういうわけか急に切れた、ということだ
離婚が出来ないわけじゃないが、俺はアスナと離婚する気なんて全くもってないし、アスナもそんな気はないだろうから、どちらかが離婚申請ボタンを押したというわけではない。それに、申請ボタンを押した場合、相手の受諾がなければ離婚は出来ないようになっている。一方的に離婚する方法もあるが、そうなるとストレージ内のアイテムは全て相手の分になってしまうから、ストレージを見た限りそれもない
となると、七十六層に上がってきた時にバグが起こったとしか考えられない
取り敢えず、その件についてユイに聞いてみたところ、以前参照したデータから情報を掻き集めて来てくれたらしく、とても有力な情報が手に入った
『今、二人が結婚したという値は、システムの不具合が起きた時に壊れてしまったものだと考えられます。
なのでパパとママは《祝福の儀式》というクエストを受けてみてください』
《祝福の儀式》、聞くところによるとそのクエストをクリアすることで値が書き換えられ、元の状態に戻せるかもしれないらしい
クエストのトリガーは七十七層以上で貰える対になる特殊な指輪。イベントが起こるのは七十七層より上のどこか…………まだ曖昧な状況だが、それでも最初よりは何歩も前進している
「キリトさん、どうかしましたか?」
「…………あ、いや、なんでもない」
気付けばストレージとずっと睨めっこしたままだったようだ。それを不思議に思ったのかシリカが聞いてくる
……………さっきはあの森を走って抜けてしまったが、帰りにもうちょっと探索してみるか
「行こうか」
「はい!」
元気の良い返事を聞いて俺は剣を抜く
……………俺は正直言って、別にアスナとのシステム上での関係を修復するのに、そんなに急がなくてもいいと思っている
アスナのステータスが見れないのは心配だし、不安になるけど………それでも、システム上での値だ。今更俺のアスナへの気持ちが変わることはない
例えアイテムが共有されていなくても、リンクが切れていても、心の部分で俺達は繋がっていると信じてるから
「……………ふっ!」
我ながら恥ずかしいことを考えてるな………そう思い若干頰が熱を帯びるのを感じながら、俺はゴブリンへ剣を振り下ろした。
saidケン
「なるほどね……」
森の中、取り敢えず座れそうな所を見つけて、そこでアスナの話を聞いていた俺は今とっても驚いた顔をしているだろう。
正直叫びたい。
相談というか事の起こりと言うか、兎も角内容が重過ぎて俺には何を言っていいのか解らんのだ。
「取り敢えずその対になる指輪を探している、と言う事だな?」
「うん…」
「ふむ…」
2人でやっている同時進行のサブクエスト。
システムとは言え、バグが仕事し過ぎてこんなに拗らせるのはこの世界の親父でも驚愕に値するだろう。
「俺の世界ではな、アスナ。
それはもう砂糖吐くぐらいにイチャイチャしやがるお前達が目の前にいるんだわ」
「えっ!?あ、うん?」
「他所でやれって言っても恥ずかしいからって言うんだぜ?なら俺の前なら良いのかよって何度突っ込んだ事か…」
「それは…ごめんなさい?」
「まぁ何にせよ、それだけ仲のいい二人が、些細なことですれ違うなんてことは一度も見たことがないんだわ。
愚痴だって数えるほどしか聞いたことがない。…まぁ、苦情は結構きたけどな」
「…」
「つまりだ。ストレージが分割されようが、バグで結婚が解除されようが、甘えら自身が通じ合っている現状を信じるってのが一番の正解だって話だ。
結婚が無くなったから別れなくてはならないなんて、誰かが決めたわけじゃない。
何か形あるものが欲しいってのもわかる。
それよりも焦ってことを損じる方が、お前たちも、周りも、望んじゃいないってのを分かってくれよ」
そもそもキリトがアスナ以外と、なんて考えられんからな。
「…うん。ありがとう、ケン君」
「おう」
その後、しっかりと捜索し、キリトとシリカを見つけ出したは良いが、見つけられたシリカが残念そうな顔をしたり、追いかけてきた俺たちにキリトが驚いていたり、ピナが結晶を食っただとかでまた騒がしくなったのは言うまでもない。
それでもやっぱり、二人は何かの形をなすだろう…と思っていたら、その二日後に件の指輪を手に入れて帰ってきた二人を見て、「ほら見ろ…」と呟いてしまったのはしょうがないことだ。
また、左手薬指にはめた指輪をキリトの周囲の女性陣に見せびらかしていたのを見て、間違いなく牽制だと思ったのもまた、仕方のないことだと思ったのだった。
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