剣の世界で拳を振るう
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稀少な食材で一時の休息を
遂に、遂にここまで来た…!
開始から約3週間…遂にOSSの実装が実現された!今日までいろんな武器やら防具やらを装備しては振り回し、幾度となく金の熊野郎を打ち倒したことか…。
開拓やら調査やらで忙しかったあの頃が懐かしい。
「これで俺だけのソードスキルが作成できる!」
――――――――と、思っていた時期がありました。
とうやらこのシステム、OSSとか言っておきながら実際はソードスキルを連携させるリンクシステムの事だったようだ。
ガッカリだよ…俺だけのソードスキルが作成できる!なんて思っていたあの頃をやり直したい。
この為だけにどれだけ時間を浪費したことか…。
「…待てよ?もしかしてこれ…」
ふと気になったことをモニターに出して検索してみる。結果、実装された対象は全てのプレイヤーに適応されるようだ。
「じゃあこれをキリト達に教えてやれば…!」
間違いなく攻略に貢献されることだろう。
さらに言えば、このOSS(笑)は繋げば繋ぐほどダメージが上がっていく使用なのだそうだ。
もしもこれでボスをフルボッコなんてした暁には、ボスなんて目じゃないくらいに強くなれるだろう。
さらに言えば俺がそれぞれ手に入れてきた伝説級武器も、みんなに渡してやれば戦力アップも考慮出来る。
「じゃあ早速呼んで話してみよう」
俺は急いでアークソフィアへと転移した。
「おう!丁度よかったぜケン!今お前にもメッセージを飛ばそうと思ってたところだ」
エギルの店へと入るなり、クラインが手を振って話しかけてきた。
見るからにハイテンション。正に良いことがあったと言う顔でこっちに来いと手招きする。
「何だよクライン」
見れば何時もの面子が勢揃いしていた。恐らくその後ろにあるバカでかい肉の事なんだろうけど。
「ふふふ…聞いて驚け!そして見ろ!」
「なんだってっ!?マジかよ!」
「まだ何も言ってねぇよ!」
いや、何となくそのどや顔がムカついたもんだから…。
「こいつはな、幻のS級食材《フライング・バッファロー A5肉》だ!」
「あぁ、うん」
「なんだぁ?反応薄いな…いいか?こいつは本邦初公開、ドロップさせた第一人者が俺なんだ!」
「そ、そうなのか?いや、S級食材事態が出るのは珍しい事だから解らんでもないが…」
「一応聞いた限りではクラインが最初だってさ」
「はい!SAOのデータベースでは、この食材のドロップ回数は一回のみとなっています。即ち、クラインさんが始めてと言うことですね」
成る程、要は自慢したかったわけだな。クラインも子供見たいな所があるもんだ。
「それで、その《クライン・バッキャロー》の肉はどうすんだ?」
「《フライング・バッファロー》だよ!何いきなり俺をdisってんだよ!」
「悪い悪い。それで、どうすんの?」
「ほらよぉ、最近変な奴とか攻略の進み具合で張り摘めてるじゃねぇか?だからこいつを食って英気を養おうってこった」
へぇ。クラインはこう言う気配りも出来たわけか…。流石は大人組の一人だな。ちょっと見直した。
「気が利くじゃない。じゃあ調理はアスナが担当するって事で」
「任せて!」
「厨房はうちのを使うといい。俺も手伝うぜ」
エギル、アスナは調理班か。
「じゃあ私は付け合わせのための飲み物を買い出ししてきますね!」
「あ、私もてつだう!」
何だかとんとん拍子で事が進んでいく。
いつの間にかポツンと残された俺。
「あー、何か手伝うことはありませんかね?」
「ねぇな」
「うん。まだ少し時間が掛かるから、他の皆を手伝ってあげて」
そう言われましても、俺しか居ないわけですよ。
取り敢えず厨房はダメ、と。
「取り敢えず外に出るか…」
俺は肩を落として店を出た。
「で、 出てきたは良いけど何もないな…」
店を出た俺は周りを見渡す。しかし知り合いは誰も見当たらず、 この店へ買い出しに行ったのかも分からないため追うこともできない。
因みにフレンド登録はキリトしかしていないため、追っても仕方ないと判断する。
「ねぇねぇ」
「俺は君のお姉ちゃんじゃないぞ。そして女でもない」
ふとかけられた声にそう返す。
「知ってるよ?じゃなくて、君はキリトの知り合いだよね?」
振り替えれば、銀髪の女性プレイヤーが立っていた。と言うかまたキリトか…。
ホントにあいつの回りは女性プレイヤーが多いな。
「一応そうなるが、俺に何か用か?」
「ううん。ただ近くで見ておきたかったなって」
「あそう…で、見た感想は?」
「うーん。あんまりパッとしないね!」
「うん。それ本人を前にして言うことじゃないからね?」
なんと言う失礼なプレイヤーだろうか。ただ無邪気さがあるためにあまりカッとしなかった。
「それで、君は?」
「あ、ごめんね?私はストレア。よろしくね!」
「俺はケン。一応キリトのフレンドだ」
ご紹介をお互いにする。
しかしなんだろう。このプレイヤー、ストレアの立ち振舞いが…何処か子供のような…不自然と言うか、なんだろうかこの取っ掛かりを覚えた感じは…?
「じゃあまたね!」
「自由か」
突拍子もなく手を振って去っていくストレア。
それを見送って俺もエギルの店へと戻ろうとする。
「まさか、アルベリヒのメンバーじゃないだろうな…」
余りにも外れな考えを持って、歩みを進めた。
「よぉし!じゃあ遠慮なく食ってくれ!」
戻って数分で料理も完成し、クラインが音頭を取った。
テーブルには様々な料理が並べられており、その全てが良い匂いを出していた。
「遠慮なく?本当に良いのね?」
「え?お、おう。そのための料理だからな!
それに俺はついてるからな!フライング・バッファローなんかまたドロップさせてやるぜ!」
「おおー!じゃあクラインの分も食べれるわね!」
「ええ。またドロップさせられるなら今回は見送っても問題ないわよね」
クラインの男泣きが予想できた。
「えぇ?いや、俺も…」
「何だ?さっき言ったのは嘘だったのか?」
「そうね。でもクラインが言うなら…遠慮した方がいいのかしら」
「うぇ!?」
「クラインさん…そうですよね」
「いや、あの…」
「あーあー折角お腹一杯食べられると思ったのになぁ」
「ぐ、ぐぬぬ…」
コイツらホントにノリが良いな…クライン敗けが確定してるじゃねぇか。
そのうち虚勢はって後悔し始めるぞ…。
「おおよ!S級食材なんて幾らでも取ってこれるからな!俺のことは気にせず、鱈腹食ってくれ!」
ほらみろ…。まぁ、仕方無いよな…。
と、そんなわけでクラインを除いた皆が次々に取り分け、食べ終わる頃にはヒレ肉が二枚残るだけだった。
「最後の二枚だな…」
「…悪かったわよ。だからそんなメソメソ泣かないでよね」
「な、泣いてねぇし!」
「ほら、クラインが食べろよ。一応、クラインが取ってきた肉だからな」
「キリの字ぃ…」
案の定男泣きを披露したクラインは、手をさしのべたキリトに泣きつく。
まぁ問題は無い。
「きゅるぅ…」
「え?ピナってああ!ごめんねピナ。ピナの分忘れてた!」
「えあ!?」
「シリカ…」
これはヒドイ。残った肉を颯爽と箸で掴み、ピナへと持っていったシリカ。
皆唖然。此ばっかりはどうすることもできない。
「シリカの所業に全クラインが泣いた」
「あっ、ごめんなさいぃ!悪気はなかったんです!」
「さすが、《クライン・バッキャロー》…こう言うことも予想されていたと言うことか」
「止めてやれよ…最初に言った俺もそうなんだけど」
無言で床に手をつくクライン。
俺はゆっくりと寄り添い、肩に手をおいて振り向かせた。
「ケン…?」
「まぁ、こうなるだろうなぁとは思ってたからな…ほら、お前の分は取っておいた」
「う、うおぉ…おおおおお!ケェェェン!!」
「うわ、抱きつくな!料理おとすぞ!」
「心の友よぉ!」
「ジャイ○ン!?」
こうして蟠りを残すことなく、その日は盛り上がった。
「そう言えば…何か忘れてる気が…」
OSSについて思い出した頃には、皆解散していた。
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