戦国異伝供書

「しかし今は」
「？どうしたのじゃ」
「腹が減りましたので」
　笑ってこう言うのだった。
「それで今より」
「飯か」
「はい、そろそろ飯の時間ですし」
「そうじゃな、では飯を食ってまたな」
「稲葉山城をどう攻めるかのお話をしますか」
「そうしようぞ。あの城を攻め落とせばな」
　まさにとだ、丹羽は木下にまた話した。
「言うまでもないな」
「美濃は完全に織田家のものとなります」
「ではな、何としても攻め取る」
「知恵でそうしていきましょう」
　こうした話をだ、木下は丹羽と話していたがその間にもだった。
　織田家は動いており多くの家臣達が新たに入ってきていた。そしてその中においてであった。
　その男のことを聞いてだ、木下は思わず言った。
「ほう、そんな御仁がおられるなら」
「是非にか」
「はい、それがし思いまする」
　今度は林に話していた、慣れぬが茶室で茶道を嗜みつつ。
「織田家に迎え入れまして」
「家臣になってもらってか」
「活躍して欲しいものです」
　こう言うのだった。
「是非共」
「お主はそう思うか」
「まさに文武両道の方ではありませぬか」
「そうした御仁が家臣にまた一人増えるとか」
「織田家にとってよいことかと」
「そうであるがな」
　林はここで木下に微妙な顔になりこうも言うのだった。
「お主の様に望みがはっきりしている者ならよいが」
「望みがですか」
「これが変に望みがない者だとな」
「この場合は欲ですな」
「それがないとな」
　どうにもと言うのだった。
「かえって怖いというからな」
「そうなのですか」
「これは平手殿が言われていたが」
　彼がというのだ。
「実際にな」
「そうした御仁こそが」
「危ういですか」
「その様だしのう」
　林は木下にこうしたことも話していた、織田家は木下が仕官してから瞬く間に巨大な勢力に成ろうとしていたがその中で一人の男のことも噂に出ていた。


第二話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１８・５・１６