空に星が輝く様に
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295部分:第二十一話 見てしまったものその十二
第二十一話 見てしまったものその十二
「女の子の目は誤魔化せないわよ」
「そうなんですか」
「そうよ。本当に奇麗な髪よね」
「確かに」
椎名は津島の今の言葉に頷いた。
「つきぴーの髪はとても奇麗」
「そしてその髪はね」
津島はまた月美の髪を見て話す。同時に陽太郎も見ている。
「こいつのものなのね」
「いいよな、本当に」
狭山も言う。
「そんな奇麗な娘が彼女でよ」
「こらっ、あんたには私がいるじゃない」
津島は怒った顔になって今の狭山に噛み付く。
「浮気したら承知しないわよ」
「何でそんな話になるんだよ」
「だから私達付き合ってるじゃない」
「何時の間にそうなったんだよ」
「前からよ」
津島の方が上手であった。
「決まってたのよ」
「ちぇっ、何か俺ボロクソだな」
狭山はお握りを食べながら口を歪める。
「ったくよお」
「男は尻に敷かれてナンボ」
また椎名の言葉が来た。
「それが甲斐性」
「随分そっちに都合のいい甲斐性だな」
「暴力振るうと最低」
椎名はこのことも話した。所謂DVである。
「これは女もだけれど」
「いや、それは論外だろ」
「そうよね」
陽太郎と津島が椎名の今の言葉に突っ込みを入れる。
「幾ら何でもな」
「暴力はね」
「けれど世の中には多いから」
椎名はポツリと事実を言う。
「そういう人間も」
「奥さんや旦那に対してだけでなく子供にもな」
「動物にもね」
二人だけでなく他の面々も考える顔になる。
「そういうどうしようもないのってな」
「やっぱりいるわよね」
「そういう手合いは嫌い」
椎名は言った。
「本当に」
「そういう奴も来るかもな」
陽太郎はふと不安を覚えた。
「文化祭にさ」
「だよな。それで何かしたらな」
狭山もそれに応えて話す。
「あれだよな。斉宮の木刀とな」
「まずは俺か」
「それと赤瀬だな」
そして彼だった。
「頼むぜ、武道家さん達な」
「うん、わかったよ」
赤瀬は狭山のその言葉に対して返事をした。
「その時はね」
「じゃあそういうことでな」
「私もいるから」
椎名もであった。
「戦うことできる」
「御前はちょっとなあ」
だが狭山はだ。彼女の申し出には難しい顔を見せるのだった。
「困ったことになるかもな」
「何で?」
「御前容赦しねえだろ」
だからだというのだ。
「それも一切」
「そんな奴には容赦しない」
実際にそうであった。他ならぬ本人の言葉だ。
「絶対に」
「絶対になのね」
「そう、絶対に」
また言う椎名だった。
「男でも女でも急所はわかってるから」
「ほらな、どうせ喉とか脳天とか狙うんだろ」
「男なら特に」
椎名はここで言いながらにやりと笑ってみせた。
「あの急所を狙うから」
「こいつだけは敵にしたくないな」
「そうだな」
陽太郎は狭山のその言葉に頷いた。少し真剣になった顔でだ。
「半端じゃねえからな」
「全くだ」
「けれど味方にしたらね」
「はい」
月美が津島のその言葉に頷く。
「愛ちゃんにはいつも助けてもらってますから」
「味方の時は任せて」
椎名は再び笑顔を見せる。
「そういうことだから」
こんな話をしてまた作業に戻ってだ。文化祭当日になるのであった。
第二十一話 完
2010・9・17
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