英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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第53話
~オルキスタワー・34F~
「……しかしやっぱり、二人と知り合いだったか。思わせぶりなことばかり言ってたから怪しいとは思っていたが。」
階段を下りて通路に戻って来たリィンは疲れた表情で溜息を吐いて既に自分から離れたミュゼを見つめ
「ふふっ、だってリーゼアリア先輩、リィン教官とエリゼさんの話ばかりなんですもの。新姫様からも良く聞きましたし恋い焦がれても仕方ないでしょう?」
ミュゼは苦笑しながら答えた後リィンと共に通路を歩き始めた。
「まあ、それはともかく。従妹と仲良くしてくれたみたいだな?殿下やアルフィンとも仲が良いみたいだし、改めて礼を言わせてくれ。」
「……ふふっ、とんでもないです。皆さん、私の立場に関係なく本当によくしてくださって……お二人と離れることだけが女学院を辞めた時の心残りでしたね。あ、ですが”七日戦役”の件で私よりも早く女学院を辞めた姫様と第Ⅱ分校でお会いできてまた以前のようによくしてくださりましたから、第Ⅱ分校に入学して本当によかったですわ。」
「……そうか。(カイエン元公爵の姪か……多分、何か圧力を受けたんだろう。俺の実の父――――オズボーン宰相の帝国政府に。)」
ミュゼがアストライア女学院を辞めた理由についてリィンが考え込んでいるとミュゼは微笑んで再びリィンと腕を組んだ。
「って、おい……」
「ふふっ……そんな顔をしないでください。女学院にも未練はありますが、Ⅸ組の皆さんや、ユウナさんたちなど新しいお友達とも仲良くなれました。――――何よりもこうして運命の方とも出会えたんですもの♪」
「ふう、だからそういう冗談は―――」
ミュゼの言葉にリィンが呆れた表情で溜息を吐いて答えかけたその時
「……何やってんだ、アンタら。」
アッシュが二人に近づいてきた。
「アッシュ……」
「ふふ、ごきげんよう。」
「おいおい、シュバルツァー教官。相変わらず隅に置けないじゃねえか。クク……まさか教え子にまで手を出しちまうなんてなぁ?」
「いや、これは――――」
「そんな、誤解です!”まだ”プラトニックな関係で!私としては姫様達のようにいつでも全てを捧げるつもりですけど♪」
アッシュのからかいに対してリィンが答えかけたその時ミュゼは更にリィンに自分の身体を寄せて笑顔を浮かべて状況が更に悪くなるような発言をし
「はあ、悪ノリが過ぎるぞ。(頸を使うか―――)」
リィンは呆れた表情で溜息を吐いた後一瞬の動作でミュゼから離れた。
「あ、あら……?」
(……なんだ、今の動きは?)
強く腕を組んでいたにも関わらず、いつの間にか離れている事にミュゼが戸惑っている中一連の動きを見ていたアッシュは眉を顰めてリィンを見つめていた。
「―――教官?何をしているんですか?あれ、ミュゼにアッシュも?」
するとその時ユウナ達新Ⅶ組がリィン達に近づいてきた。
「……?何かあったんですか?」
「いや、たまたまさ。―――俺を呼びに来たのか?」
「はい、そろそろ時間です。」
「エフラムお義兄さん達――――メンフィルとエレボニアのVIPの人達を見送りするのよね?」
「ああ、それじゃあ二人とも各自のクラスに――――」
「!…………」
そしてリィンがミュゼとアッシュに指示をしかけたその時、”何か”を強く感じたリィンは天井を睨み、リィンが”何か”を強く感じると同時に”予知能力”によって未来が突如見えたゲルドもリィンのように真剣な表情を浮かべて天井を見つめた。
「リィン教官……?」
「ど、どうしたんですか?」
「それにゲルドさんも………お二人とも上を見ているようですが、何か気になる事があるのですか?」
(間違いない、今のは……1年半前の内戦の時に感じたことがある―――)
(なんだ、今の悪寒は……)
リィンとゲルドの様子にユウナ達が戸惑っている中リィンはある人物を思い浮かべ、アッシュが考え込んでいたその時突如タワー内に爆発音が聞こえてきた!
「今のは……!?」
「爆発音……!?」
突然の爆発音に第Ⅱ分校の生徒達が驚いている中、トワは待機室に備え付けている端末を操作した。
「……こいつは………」
「―――屋上で何かあったみたいです……!」
「クク、サザ―ラントに続いてクロスベルでも初日で”不測の事態”が起こるとはな。」
「この調子だと今後の”特別演習”は全て初日で”不測の事態”が起こりそうで今から楽しみね♪」
「お二人とも、どうしてそんな呑気いられるのですか……」
ランディが目を細め、トワが端末を操作している中不敵な笑みを浮かべたランドロスと小悪魔な笑みを浮かべたレンの答えを聞いたセレーネは脱力し
「なんだ、何があった!?」
ミハイル少佐はトワ達に近づいて状況を訊ねた。
「―――出ました!タワーの屋上の映像です!」
「な、なんや……!?」
「あれは……昼間見た揚陸艇……!?」
「……なんだい?あの人影は……」
第Ⅱ分校の生徒達がトワが操作している端末に注目していると端末には片腕の少年とダルそうな青年の亡霊が映った!
「………ぁ…………」
「この二人は……!」
「へえ?よりにもよって次はこの二人が来るとはね。(パパ達からの情報通りね。となると明日の”要請”で後から来る援軍のメンバーは恐らく――――)」
「No.Ⅰ―――”劫炎”とNo.0―――”道化師”。」
端末に映っている二人を見たアルティナが呆け、セレーネが驚いている中レンは意味ありげな笑みを浮かべ、リィンが静かな表情で呟いた言葉を聞いて端末に映っている二人の正体を察したその場にいる全員は血相を変えた。
「そ、それって……!」
「”結社”の執行者………!」
「トワ先輩、ランディ、ランドロス教官、エリゼ、アルフィン!生徒達とVIPの安全確保を!ミハイル少佐はタワー内の警備部隊との連絡をお願いします!」
「合点承知だ!」
「エレベーターは使用不能だよ!非常階段を使って!」
「クク、この場は俺達に任せなぁ!その代わり、屋上にいる連中の撃退はお前達に任せたぜ!」
「兄様、どうかお気をつけて……!」
「御武運をお祈りしておりますわ……!」
リィンの指示にランディは頷き、トワとランドロス、エリゼとアルフィンはそれぞれ助言や応援の言葉をリィンに告げ
「了解です!セレーネ、レン教官!俺達は屋上にいる二人の撃退に向かうぞ!」
「はい!」
「仕方ないわねぇ。」
リィンはセレーネとレンに声をかけた後二人と共にその場から走り去った。
「あ……!」
「……教官……!」
走り去るリィン達を見たユウナとクルトは驚き
「Ⅶ組・Ⅷ組・Ⅸ組は集合しろ!装備を確認!36FのVIPフロアに向かう!」
「優先すべきはVIPの安全確保だ!それを絶対に忘れんなよ!」
「ええい、勝手に仕切るな!――――こちらトールズ第Ⅱ!警備管制室、応答せよ!」
ランディとランドロスがそれぞれ仕切っている中ミハイル少佐は二人に対して文句を言いつつARCUSⅡを取り出して警備部隊との連絡を開始した。するとその時互いの顔を見合わせて決意の表情をしたユウナ達Ⅶ組はその場から走り去り
「こら待て、お前ら!」
「ハッ、だったら俺が連れ戻してくてやるよ……!」
「では、私も。すぐに戻ってきますから。」
ユウナ達の行動に気づいたランディがユウナ達に制止の声をかけると、アッシュとミュゼもユウナ達の後を追い始めた。
「ハッ………なんのつもりだ?」
「ふふっ、今回ばかりはこの目で見ておきたくて。」
「ミュ、ミュゼちゃん!?」
「ど、どうして……!?」
「ああもう、何だってんだアイツらは!?」
「だぁっはっはっはっ!1度ならず2度もオレサマ達を出し抜くなんざ、やるじゃねぇか!」
走り去った二人を見たティータやトワが困惑している中ランディは疲れた表情で声を上げ、ランドロスは豪快に笑い
「シュバルツァー達に任せろ!VIPたちの保護が優先だ!」
ミハイル少佐は落ち着いた様子でその場にいる全員に指示をした。
(反応しているのか……あの”黒い炎”に……)
「この人数で”道化師”に加えてあの”劫炎”が相手をしなければならない事を考えると、”劫炎”の相手はやはりお兄様とアイドス様にお任せし、わたくしとレン教官は”道化師”の相手をすべきでしょうか……?」
「――――いえ、恐らく向こうもここで”本気”の戦闘をするつもりはないでしょうし、屋上とはいえオルキスタワーで”本気”を出し合う戦闘は避けた方がいいでしょうから、アイドスお姉さんの助太刀もそうだけどレン達が”本気”を出すのもレン達が不味い状況に陥るまでは控えた方がいいでしょうね。」
非常階段を使って屋上に向かっているリィンが考えている中屋上にいる二人との戦闘を想定したセレーネの推測にレンは静かな表情で否定して説明をした。
「リィン様、セレーネ様、レン皇女殿下……!」
するとその時シャロンがかけつけて、リィン達と共に屋上へと向かい始めた。
「あら。」
「シャロンさん……!」
「わたくしもご一緒します……!会長のお許しを頂きましたので!」
「………助かります!」
「加勢、感謝致しますわ!」
シャロンの加勢にリィン達が感謝しつつ先へと進んでいると、リィン達の行く手を阻むように小型の人形兵器達が待ち構えており
「―――皆様!一気に参りましょう。」
「ええ、お願いします!」
そしてリィン達はそれぞれ人形兵器達に突撃すると同時にそれぞれの武装による一撃で人形兵器達を無力化した後先へと急いだ。
「戦闘音!?」
「まさか……中まで入り込んでいるのか!?」
一方その頃上の階層から聞こえてきた戦闘音を聞いたユウナ達は立ち止まって上層を見上げ
「――――来たわね。」
「結社の哨戒機……!」
「くっ……こんな時に!」
階段と、通路のそれぞれから向かってきた人形兵器を見たゲルドは静かな表情で呟き、アルティナは警戒の表情で声を上げた後それぞれユウナ達と共に武装を構えた。
「ハッ、加勢するぜ!」
するとその時それぞれ自身の得物であるヴァリアブルアクスを片手に持ったアッシュと魔導騎銃を両手に持ったミュゼがかけつけた。
「貴方達は……」
「ミュゼまで………!?」
「毎度毎度、てめぇらだけにオイシイ思いをさせてたまるかよ!」
「ふふっ、今回は私もお手伝いさせて頂きます♪」
「話は後だ……!こいつらを無力化する!」
「ああもう!気をつけてよね!?」
「ハッ、誰に物言ってやがる!」
「それでは戦闘開始、ですね!」
そしてユウナ達は人形兵器達との戦闘を開始した!
~同時刻・オルキスタワー・屋上~
一方その頃屋上に到着したリィン達は結社の執行者らしき二人と対峙していた。
「ふああっ……遅かったじゃねえか。」
「うふふ……君達が一緒に来るとはね。」
リィン達と対峙しているダルそうな亡霊はあくびをしてリィン達を見つめ、緑髪の少年は口元に笑みを浮かべた。
「その声、やはり沼地でわたくし達に幻獣をけしかけて来たのは貴方だったのですね……」
「……最悪の組み合わせ、ですわね。」
一方セレーネは少年を睨み、シャロンは重々しい様子を纏って呟いた。
「久しぶりだな、クルーガー。それに灰の小僧に聖竜の小娘、それと殲滅天使もか。面白い場所で再会したもんだぜ。」
「ふふ、お茶会などであればなお良かったのですけど。」
「そう?リタみたいな可愛い幽霊はともかく、あんな服装のセンスもイマイチなオジサンの幽霊、レンはお茶会に招待なんてしたくないわよ?」
亡霊――――執行者NOⅠ”劫炎”のマクバーンの言葉に対して静かな表情で答えたシャロンにレンは疲れた表情で指摘した。
「……アンタだとすぐわかったよ。存在自体と一体化した”力”……今ならその化物ぶりが一層わかる。」
「へえ、そういうお前さんは面白い事になっているな。”鬼”の力……一年半前より更に増しているし、聖竜の小娘と殲滅天使も灰の小僧のようにそれぞれの”力”が以前より増していて、イイ感じになっているじゃねえか。」
「「「………………」」」
マクバーンの言葉に対して何も答えなかったリィン達はそれぞれいつでも武装を抜けるようにそれぞれの武装に手を置き
「……騎神やベルフェゴール様達を呼ばれるのは様子を見た方がよいかと。下手をすれば彼をその気にさせてしまいます。」
「ええ……重々承知です。”煌魔城”の時も絡まれそうでしたから。」
シャロンの助言に頷いたリィンは警戒した様子でマクバーンを睨んだ。
「おいおい、人のことを戦闘凶みたいに言うなよ。ヴァルターや戦鬼の小娘よりは弁えてるつもりだからな。」
「アハハ……どっちもどっちだと思うけど。うふふ……僕の方も灰のお兄さん達とは久しぶりだね。いや~、それにしても驚いたよ。まさかあの”紅の戦鬼”を殺っちゃうなんてねえ。レーヴェ達の協力があったとはいえ、”執行者”の中ではトップクラスの戦闘力を持つ彼女を苦も無く討ち取るなんて、さすがは僕達”結社”を衰退させたメンフィルの新たなる英雄と言った所かな?」
「……仲間や盟主達の仇を討つ為に今クロスベルに来ているメンフィルのVIPの方々を狙うつもりか?」
マクバーンの言葉に対して少年――――執行者No.0”道化師”カンパネルラは苦笑した後呑気な様子でリィンに話しかけ、リィンはカンパネルラを警戒しながら問いかけた。
「フフ、”実験”のついでにちょっと挨拶に来ただけさ。お望みならこのタワーを丸焼きにすることもできるけど?―――彼がね。」
「って人任せかよ。」
「くっ………(実験……ハーメルでも言ってたな。)」
(ええ。そうなると………ハーメルの時のように改良された”神機”もどこかにあるかもしれませんわね……)
(それに多分、その”神機”もハーメルで戦ったのとは違うタイプでしょうね。)
カンパネルラとマクバーンの会話にリィンが唇を噛みしめている中セレーネとレンは小声で会話をし
「……………………」
「フフ、クルーガー。怖い顔をしないでおくれよ。4年ぶりじゃないか。って、シャロンって呼ぶんだっけ?」
厳しい表情で自分達を睨み続けるシャロンに対してカンパネルラは口元に笑みを浮かべて話しかけた。
「どちらでもお好きなように。4年前、貴方からの要請でサラ様を足止めした時以来ですね。」
「え………!?」
「4年前………となるとリベールのクーデター時、エレボニアで起こっていた猟兵団――――”ジェスター猟兵団”による遊撃士協会支部の襲撃の件に間接的に関わっていたようね。」
「そうそう、リベールでの”福音計画”!あれの一環で、帝国のギルドを爆破して剣聖カシウスを誘き寄せたんだけど……最年少のA級だった”紫電”には足止めを喰らってもらったんだよね。里帰りしたノーザンブリアでさ。」
シャロンの話にリィンが驚いている中レンはかつての出来事を思い返して呟き、カンパネルラは懐かしそうな様子で答えていた。
「その結果、ギルドの建て直しで剣聖のリベールへの帰国も延期……見事、教授の”福音計画”は第一段階をクリアしたってワケさ!」
「ハン……レーヴェのヤツから聞いたな。」
「……そんな事が………」
「だからサラさんはシャロンさんに対して思う所があるような態度を取っているのですか……」
「ええ……所詮、わたくしはその程度の存在。ラインフォルト家に害がなければ古巣の悪事を手伝うような外道です。」
カンパネルラとマクバーンの会話を聞いていたリィンは信じられない表情をし、セレーネは複雑そうな表情で呟き、二人の言葉に頷いたシャロンは前に出てダガーと鋼糸を構えた。
「―――ですがこのタワーにはイリーナ会長や他の方々がいます。仇なすつもりならば”死線”として貴方がたの前に立ちふさがりましょう。」
「シャロンさん………」
「フフ……変わったねぇ、君も。”木馬園”から結社入りしたばかりの頃とは大違いだ。」
「クク……12年くらい前だったか?」
「フフ、笑顔もサービスできない出来損ないの小娘でしたが……あの時、軍門に下された借り、少しはお返しいたしましょう。」
「うふふ、レンも1年半前で”仕留めそこねた”借りをちょっとでもここで返させてもらうわ♪」
「何が目的かは知らないが……俺達も同様に、守るべき人々がいる。届かせてもらうぞ―――”劫炎”に”道化師”……!」
「いずれこの時が来ることも想定し、わたくし達は常に鍛錬し続けてきました。その成果……今こそ、お見せいたしますわ……!」
冷酷な笑みを浮かべたシャロンと不敵な笑みを浮かべて大鎌を構えたレンに続くようにリィンとセレーネもそれぞれ決意の表情で武器を構え
「クク……いいだろう。」
「うーん、僕の出番は無さそうなんだけど……」
リィン達の様子にマクバーンが口元に笑みを浮かべ、カンパネルラが困った表情をしたその時!
「いた……!」
「追いつけたか……!」
何とユウナ達がその場に駆けつけてきた!
「来るな……!正真正銘の化物だぞ!」
自分達の元に駆けつけようとしたユウナ達にリィンは警告し
「結社の執行者……!」
「って、子供まで!?」
「見た目に惑わされないで……あの亡霊からもそうだけど、隣の少年からもとてつもない”邪気”が感じられるわ……」
「……そちらはともかく、あちらの彼は最悪ですね。」
リィンの警告を聞いて立ち止まったクルトとユウナはマクバーン達を見て驚き、カンパネルラの容姿に驚いているユウナにゲルドは警戒の表情でカンパネルラを睨みながら答え、アルティナは真剣な表情で二人を睨み
「ハッ……どっちもイカした面構えじゃねえか。」
「ええ―――尋常ではなさそうですね。」
不敵な笑みを浮かべたアッシュの言葉にミュゼは真剣な表情で頷いて同意した。
「くっ、アッシュにミュゼまで……」
「ハン……?そっちは黒兎だったか。」
「フフ、折角だからボクが相手をさせてもらおうかな?」
ユウナ達と戦う事を決めたカンパネルラは指を鳴らしてその場から転移してユウナ達の前に現れてユウナ達と対峙し
「なっ……!」
「幻影……!?」
突然現れたカンパネルラに驚いたユウナ達は武装を構えた。
「くっ、やらせるか……!」
「おいおい、小僧。余所見してる余裕あんのか?」
「……いったん任せましょう。彼の戦闘力はわたくし程度です。ですがこちらの彼は……気を抜けば”死”あるのみですわ。」
「ッ……!」
生徒達を助けようとしたリィンだったがシャロンの警告を聞くと唇を噛みしめてマクバーンと戦う事を決め
「シャロンお姉さん、今更聞くのもなんだけど相手は亡霊よ?魔力が付与されていないただの武器だと、物理攻撃はほとんど効かないわよ?」
「御心配には及びませんわ。いずれ”劫炎”の亡霊と対峙する事を想定し、セティ様達に魔法効果――――特に亡霊や悪魔といった”魔”の存在に対して絶大な威力を発揮する”神聖属性”が付与された武装を開発してもらいましたから、このダガーもそうですが鋼糸も全て”神聖属性”かつ悪魔や亡霊のような”魔”の存在に対して更に威力があがる追加効果が付与されていますわ。かつてレン皇女殿下がお嬢様達に授けた”匠王”が作成なされた武装よりは下回ると思いますが……少なくてもこの武装―――”聖絶”でしたら目の前の魔人の亡霊には絶大な効果を発揮してくれますわ。」
「い、一体いつの間にセティさん達に………」
レンの問いかけに対して静かな表情で答えたシャロンの説明を聞いたセレーネは冷や汗をかいて苦笑していた。
「Ⅶ組総員、ミュゼもアッシュも!2方向での迎撃行動を開始する!適宣オーダーを出す――――――死力を尽くして生き延びろ!!」
「っ……はい!」
「承知……!」
「了解しました!」
「うん……!」
「お任せを……!」
「言われるまでもねえ!」
リィンの号令にユウナ達はそれぞれ力強く答えた。
「アハハ、盛り上がってきたねぇ!」
「そんじゃあ、ちっとは愉しませてもらうぜ……!」
そしてリィン達はマクバーンと、ユウナ達はカンパネルラとの戦闘を開始した―――――
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