僕のヒーローアカデミア〜言霊使いはヒーロー嫌い〜
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一位を狙え! 障害物競争!!
スタートの合図が鳴り響いた後、凍りついた地面に足をとられ、何人もの競技者達がコケる中、流石はA組というべきか、あらかじめこうなることも想定していたようで、易々と氷の床を突破していくクラスメイト達。
『おおっと! 流石はA組だァ!! 次々と脱落していく中でA組のヤツらがどんどんと突破し--』
「痛かっんだけど! ねえ、酷くないですか!? 謝ってよ! 轟君!」
実況するプレゼント・マイクの声が一瞬止まった。 というのも、鼻血をダラダラと垂れ流しながら、鬼のような表情を浮かべた緋奈が、ただでさえ滑る氷の床を全力疾走する姿を目にしたからだ。しかも、個性を使っていないというのに、爆破を利用する爆豪を追い抜き、轟と並走している。
『さぁ、謝って!! 怪我させてすみませんって! 君が謝るまで僕は君から離れないからね!!」
「--転んだのはお前の不注意だろ、桜兎」
大声を張り上げる緋奈に、冷静な返しをする轟。
「オイラを忘れてもらっちゃ困るぜ! 轟に、リア充ハーレム野郎!!」
と、背後から峰田が自身の頭のブドウを投げる構えをしながら叫ぶ声が聞こえた。 それに対し、
「今君に構ってるほど暇じゃないんだよ!!ブドウもぎとるよ!?」
とブチギレる緋奈が後ろを振り返った瞬間、
「グレーp・・・!?」
峰田が突然現れたロボによって吹き飛ばされた。
「ホワイッ!?」
思わず英語になってしまうほどに驚いた。
『さぁ、いきなり障害物だ!! まずは手始め・・・ 第一関門【ロボ・インフェルノ】!!」
プレゼント・マイクがハイテンションで実況する。 だが、競技者達はテンションだだ下がりだ。第一関門から0p敵は鬼畜すぎる。
「一般入試用の仮装敵ってやつか」
「んなのいいから、謝ってよ!! ねぇ!!」
競技者達が大量の0p敵に驚く中、緋奈は相変わらず轟に謝罪を求めていた。そんな彼に対し、
「そこあぶねえぞ、桜兎」
轟は忠告し、自身の個性を発動する。
「・・・え?」
忠告を受けた緋奈は、寒気を感じ右に飛んだ。途端、緋奈が先程までいた場所に0p敵の装甲で包まれた拳が振り下ろされていた。
「いたたた・・・擦りむいちゃった。クソっ、さすがの僕も怒ったぞ!」
ガバッと起き上がり、個性を発動しようとするが、それより先に轟の個性が0p敵を氷結で氷漬けにしていた。それによって生み出された細道を行こうとする他クラスの生徒達だが、
「やめとけ。 不安定な体勢ん時に凍らしたから・・・倒れるぞ」
という言葉通り、0p敵が倒れふした。そんな派手なことをすれば、観客が盛り上がるのは当たり前。
『1-A 轟!! 攻略と妨害を1度に! こいつぁシヴィー!! すげぇな!! 1抜けだ! あれだな、もうなんか・・・ズリぃな!!』
『馬鹿、よく見ろ。一抜けは緋奈だ』
『は? いやいや、一位はとどろ・・・ってマジで桜兎だァァァ!! え、何、なんでアイツ羽生えてんの? ってか速ぇぇ!!』
相澤の声に、プレゼント・マイクがカメラで捉えた光景を見て叫んだ。それは無理もない。現在の緋奈は、背中から翼を生やし、全身に風を纏っている状態だ。風の放出を調整し、加速しているのだ。
「ハッハッハ!! 轟君が謝らないってなら、一位とって土下座しろって命令してやる!!」
やけくそ気味に叫びながら、くだらないことを決意する緋奈は、ドンドンと轟達を突き放していく。 暫く飛んでいると、風の効果が消え、加速が止まる。
「・・・もう一度『風』使お」
再び個性を使用し、加速する。因みに、
『第二関門【ザ・フォール】・・!! まさかの完・全・無・視!? フライのままゴーイングなんてありかよ!? 見せ場見せてくれよ、ボーイ!!』
プレゼント・マイクがそんなことを嘆いているが、緋奈にとってはどうでもいい。 勝てればそれでいい。観客が盛り上がらないって?知りませんよ、そんな事。
「結局、結果が全て!!」
『確かにそうだけどォオ!? せっかくの体育祭なんだしよ、少しは楽しもーぜ、ボーイ!!』
なんか可哀想に思えてきてしまった。 やれやれ、と緋奈は溜息をつき、
「ここ抜けたら、降りますよ」
第二関門はそのままスルーする。そして、突破した後、地面に降りる。もちろん、翼は消していない。
「んじゃ、ここから走ろうかな」
緋奈がそう言って走り始めると、
「待ちやがれぇぇぇ! 白黒野郎!!」
「追いついたぞ、桜兎」
背後から爆豪と轟の声が聞こえた。どうやら、緋奈が飛んでいる間に、少し遅れて第二関門に挑んでいたらしい。
「待ってって言われて待つ人いないから!!って爆豪君怖いんだけど!?」
ヒィー!と悲鳴をあげながら、風を足に纏わせ、駆けていく緋奈。 その後ろを爆豪達が追いかけてくる。
「あーもう! 来ないでよ!」
と、緋奈が風を足裏から放出、空に向かって飛んだ瞬間、地面が爆発した。灰色の煙が黙々と立ち込める。その現象に、爆豪達は一瞬、驚く。 そんな彼らに説明するように、
『早くも最終関門!! かくしてその実態は--・・・一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!っていうか、まぁた空飛んだなぁ!ボーイ!!』
プレゼント・マイクが緋奈に向かって、話が違うじゃんと叫んでくる。 しかし、仕方ない。アクシデントだから、仕方がない。
「だから行かせねぇって言ってんだろうがっ! 白黒野郎!!」
「逃がすか!」
爆破を利用して緋奈の隣まで飛んできた爆豪と、真下で氷の床を作り走る轟が同時に叫んだ。
「ちょ、翼もごうとしないで!? これ、痛いんだからね!?」
「黙ってろ! 怪我なんかァ、後でリカバリーガールにでも治しといてもらえや!?」
「そういう問題じゃないんだってえの!!」
翼をむしり取ろうとする爆豪の手を引き剥がそうとする緋奈。 上空での攻防戦。両者1歩も引かない掴み合い。 それは、爆豪でも緋奈でもない第三者により終了する。 突如、女樹に落下していく二人と走る轟の上に影が差した。
「あァ?」
「へ?」
「・・・っ?」
緋奈と爆豪、轟がその影を視線で追うと、そこには、仮想敵の装甲に腹を乗せて前へと飛んでいく緑谷の姿があった。 それに即座に反応したのは、彼の幼馴染、爆豪だ。
「デクぁ!! 俺の前を行くんじゃねえ!!」
緋奈の翼から手を離し、爆破で加速し、緑谷に迫る。もちろん、緋奈と轟も緑谷をやることは同じだ。
『元・先頭の三人、足の引っ張り合いを止め、緑谷を追う!! 共通の敵が現れれば、人は争いをやめる!! 争いはなくならないがな!!』
『何言ってんだ、お前』
プレゼント・マイクがハイテンションで実況する。 それに対して、相変わらず相澤は冷静だ。
「お前にだけは前は行かせえねぇ!!」
「行かせないよ、出久君!!」
「悪ぃな、緑谷」
抜かれた三人は全速力で緑谷を追いかける。それに対し、緑谷は、
(くっそ! 抜かれる! だけど、この一瞬のチャンス!! 掴んで離すな! 追い越し無理なら--抜かれちゃダメだ!!)
そう胸中で決意し、装甲を地雷めがけて振り下ろした。刹那、大量の地雷が起動し、爆発した。 それに伴い、爆豪、轟、緋奈が衝撃に巻き込まれ、緑谷は前に吹き飛ぶ。これにより、現在一位は緑谷。数分遅れて、地雷の爆発から難を脱した緋奈はすぐに緑谷を追いかけようとするが、時すでに遅し。
『さァさァ、序盤の展開から誰が予想できた!? 今一番にスタジアムへ還ってきたその男は--緑谷出久の存在を!!』
緑谷の1位が決まってしまった。
「あぁもう!! 爆豪君と轟君のせいで!」
緋奈はイライラしながら、全力疾走して、ゴールに駆け込み、その数秒後に爆豪、轟という順にゴールにした。
そして、その後もぞろぞろと生徒達が帰ってきて、第一種目は終わりを告げた。
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